まんせいしんふぜん
慢性心不全
心臓の働き緩やかに低下している状態。ゆっくりと進行して腎臓やその他全身に影響が及ぶことがある
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最終更新: 2021.05.17
慢性心不全の基礎知識
POINT 慢性心不全とは
慢性心不全は一時的でなく恒常的に心臓の機能が落ちている状態です。その原因には心筋梗塞・弁膜症・高血圧症・慢性呼吸不全などの多くの病気が挙げられます。主な症状は労作時の息切れ・体重増加・尿量低下・むくみなどがあり、病状が進行すると安静にしていても息が切れてきます。 症状や身体診察に加えて、画像検査・心臓エコー検査・血液検査を用いて診断します。薬(利尿薬・血管拡張薬など)を用いて治療しますが、手術で治療可能な原因疾患がある場合は手術を行うことがあります。また、心臓リハビリテーションを行って症状が悪化しないように努めることも大切です。慢性心不全が心配な人や治療したい人は、循環器内科を受診して下さい。
慢性心不全について
- 全身に血液を送る心臓の働きが弱くなっている状態のこと
- 慢性心不全の主な原因
- 高齢者に起こることが多い
- 慢性心不全は徐々に進行する病気で、気づいたときには強い息切れによって動けなくなることがあるため、診断された人は症状を感じなくてもきちんと治療していくことが大切である
慢性心不全の症状
- 主な症状
- 坂道や階段での息切れ(労作時呼吸困難)
- 重症になると平地での歩行や少しの作業でも息切れが出現
- 息苦しさ
- 身体のむくみ
- 特に足の甲やすねのむくみ
- 指で押すとその形に凹んですぐには元に戻らない
- 体重増加
- 尿量減少
- 坂道や階段での息切れ(労作時呼吸困難)
慢性心不全の検査・診断
- 血液検査
- BNPという心不全の程度を表す物質の量などを調べる
- 慢性心不全に連れて悪化しうる、腎機能や肝機能を調べる
- 心臓の動きや大きさなどを調べる
- 心電図検査
- 胸部レントゲン検査
- 心臓超音波検査(エコー検査)
- 必要に応じて心臓カテーテル検査で心臓の動きや血液の流れをより詳しく調べることができる検査を行う
慢性心不全の治療法
- 薬物療法
- 利尿薬:尿を出しやすくすることで血液量を減らし、心臓の負担を軽くする
- 血管拡張薬:全身の血管を拡張し、心臓の負担を減らす
- β遮断薬:心臓の働きを緩やかにして負担を減らす
- 強心薬:心臓の働きが不足している場合にそれを改善する
- 強心薬を長期的に使用するとかえって心臓を疲れさせてしまうことになるので注意が必要である
- 手術
- 心不全を起こしている病気があれば、心臓の状態によっては手術を行うことがある
- リハビリテーション
- 目的
- QOL(生活の質)の向上
- 自律神経異常の回復
- 血管内皮機能の維持
- 再入院率の低下
- 種目
- 運動療法
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング(レジスタンス運動)
- 日常生活の動作訓練
- 日常生活で行う動作の反復
- 運動療法
- 目的
- 生活習慣を改善し、悪化を防ぐ
- 塩分や脂質などを抑える
- 肥満にならないように気をつける
- 慢性心不全になった時点で、定期的に検査を受けて心臓の状態を長期的に見守っていくことが重要
慢性心不全に関連する治療薬
ループ利尿薬
- 尿による水分排泄を増やすことで体内の過剰な水分などを排泄し、むくみ(浮腫)などを改善する薬
- 腎臓の尿細管では尿(原尿)に含まれる水分などを血液中へ戻す再吸収が行われている
- 本剤は主に尿細管のヘンレループという部位での再吸収を抑えることで尿としての水分排出を増やす作用をあらわす
- 本剤により体内の過剰な水分が排泄されるため、むくみの改善や血圧を下げる効果などが期待できる
- 薬剤によっては高血圧症や心不全などに使われる場合もある
カリウム保持性利尿薬
- 尿として体内の過剰な水分などを排泄し、むくみ(浮腫)や血圧などを改善する薬
- 腎臓の尿細管では尿(原尿)に含まれる水分などを血液中へ戻す再吸収が行われている
- 副腎皮質ホルモンのひとつアルドステロンは尿細管(主に遠位尿細管)での再吸収を促す
- 本剤はアルドステロンの働きを抑える作用などにより尿細管での再吸収を抑え尿量を増やすことで、むくみや血圧などを改善する
- 本剤は体カリウムイオンの排泄を抑える作用もあらわす
- 他の種類の利尿薬(ループ利尿薬など)と併用される場合もある
- 他の利尿薬によるカリウム排泄を低減させることで、こむら返りなどを抑える効果も期待できる
- 心性浮腫や腎性浮腫などのほか、薬剤によっては栄養失調性の浮腫に使用する場合もある
選択的アルドステロン拮抗薬(エプレレノン、エサキセレノン)
- 血圧上昇や心臓の肥大などに関わる体内物質アルドステロンの働きを阻害し降圧作用などをあらわす薬
- 体内物質アルドステロンは血圧上昇や心臓の肥大化などに関わる
- アルドステロンは腎臓の尿細管で水分などを血管内へ吸収(再吸収)させ血液量を増やすことなどにより血圧を上げる
- 本剤はアルドステロンが作用する受容体に対して拮抗して作用することで抗アルドステロン作用をあらわす
- アルドステロンは腎臓以外にも心臓、血管などにも関わり血圧を上げる要因となるとされる
- 高血圧症のほか、慢性心不全などの治療に使われる場合もある
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