ていけっとう
低血糖
血液中の糖分(ブドウ糖)が少なくなりすぎて、意識を失ったり、手足が動かしにくくなったりする状態
14人の医師がチェック 148回の改訂 最終更新: 2020.11.16

低血糖の原因について:糖尿病治療薬の副作用や低血糖を起こす病気について

身体には血糖値を一定に保とうとするメカニズムがあるので、悪影響が出るほど血糖値が低下することは多くはありません。低血糖は健康な人に起こることは少なく、主な原因は糖尿病治療薬の副作用によるもので、まれな原因として肝臓・腎臓の病気、腫瘍などがあります。このページでは低血糖の原因を中心に説明します。

1. 簡単に低血糖にならない身体の仕組みがある

身体が機能するには血糖値はある程度以上の濃度が保たれてることが必要です。このため、身体には低血糖を起こさないような仕組みが備わっており、食事をしばらく取らなくても血糖値が下がらないようになっています。

血糖値が低下すると、グルカゴンというホルモンが分泌されて、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解してグルコースを作り出して(糖新生)血糖値を保とうとします。また、グルカゴンの働きが不十分なときにはエピネフリンという別のホルモンが分泌されて、グルカゴンの働きを補ったり、グルコースの利用を制限して血糖値を保とうとします。また、コルチゾールや成長ホルモンも血糖値を保とうとする働きがあります。 このように人間の身体にはいくつも血糖値を保つように働くホルモンが存在しており、少しの間糖分を摂らなくても低血糖にはならないようになっています。健康な人に低血糖が起こることはかなりまれと考えてください。

2. 糖尿病の薬の副作用で低血糖が起こる

低血糖の原因の多くはインスリンに代表される糖尿病治療薬の副作用です。糖尿病治療薬の目的は血糖値を下げることですが、その効果が強すぎると低血糖を起こしてしまいます。特に、次のような状況で低血糖が起こりやすいです。

糖尿病治療薬の副作用がでやすい状況】

  • 食事
    • 食事を抜くまたは量が少ない
    • 時間が大幅に遅れる
  • 薬の使用
    • 誤って大量に使ってしまう
    • 決められた時間に薬を飲まない
  • 生活習慣
    • 過量の飲酒する
    • 空腹時に運動をする
  • 体調不良
    • 発熱している
    • 嘔吐をしている
    • 下痢をしている

上の状況を上手に避けると低血糖の心配が少ない日常生活を送ることができます。しかし、避けがたいこともあるので、それぞれの状況での注意点と予防策についてあらかじめ知っておくと速やかに対応ができるようになります。

食事

糖尿病治療薬の副作用で低血糖を起こさないようにするには、食事の量や時間をきちんと守ることが大切です。

お医者さんはいつも同じくらいの食事量を同じ時間に食べることを想定して、薬を処方しています。このため、いつもより食事量が少なかったり、時間が大幅に遅れると薬の効果が強く出てしまい、低血糖が起こる可能性が高まります。とはいえ、どうしても普段通りの食事ができないときもあります。そのような状況でも低血糖にならないようにするために、かかりつけのお医者さんに対応方法をあらかじめ確認しておいてください。

薬の使用

決められた量以上の糖尿病治療薬を使ってしまうと効果が強く出てしまい、低血糖を起こすことがあります。また、薬を使う間隔が短くなりすぎても同様に低血糖が起こります。薬は必ず量と間隔を守って使うようにしてください。

生活習慣

糖尿病の人が多量の飲酒や空腹時の運動をすると、低血糖が起こりやすいことが知られています。万が一飲酒量が過ぎた場合や運動前に食事をとれなかった場合には、飴やチョコレートなどを利用して糖分を速やかに摂取し、こまめに血糖値を測るようにしてください。血糖値が低いようであれば糖分の摂取と血糖値の測定を続けてください。

体調不良

糖尿病の人が発熱や下痢、嘔吐などで食事がいつもと同じようにとれない状況を、シックデイ(sick day)といいます。

シックデイでは普段通りに薬を使うと低血糖になる可能性があるので、薬の調整が必要です。シックデイの対応については、あらかじめお医者さんと相談しておいてください。また、薬を使うべきかどうかの判断に迷う場合は、低血糖を起こさないようにするためにも、一度かかりつけのお医者さんに相談してください。

3. 糖尿病でない人の主な低血糖の原因

多くはありませんが、「糖尿病治療薬の副作用」以外にも低血糖の原因になるものがあります。

糖尿病でない人の主な低血糖の原因】

糖尿病ではない人に低血糖が起きた場合はさまざまな原因が考えられるので、原因を見分ける(鑑別する)必要があります。原因について個別に説明します。

なお、低血糖の症状については「こちらのページ」を参考にしてください。

インスリノーマ:インスリンを過剰に出す腫瘍

インスリンは血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島という組織の中にあるβ(ベータ)細胞から分泌されます。このβ細胞が腫瘍化したものをインスリノーマと言います。インスリノーマから過剰にインスリンが分泌されると、低血糖を起こします。

より詳しい説明は「インスリノーマの基礎知識」を参考にしてください。

胃切除後症候群:胃の手術の後遺症

胃がん膵臓がんなどの手術で胃を切除することがあります。胃切除の影響はさまざまなですが、そのうちの1つが低血糖です。胃を切除すると、食べ物の消化が不十分になりがちです胃での消化が不十分なまま食べ物が腸に流れ込むと、インスリンが過剰に分泌されてしまい低血糖が起こります。

より詳しい説明は「胃切除後症候群の基礎知識」を参考にしてください。

肝硬変

肝臓が線維化して固くなり、機能が低下することを肝硬変と言います。

肝臓にはグリコーゲンという物質が蓄えられています。グリコーゲンは糖の1種類であるグルコース(ブドウ糖)がつながってできたものです。血糖値が低下したときには、蓄えてあるグリコーゲンを分解してグルコースを作り出し、血糖値を上げます。肝硬変ではグリコーゲンの貯蔵量が減少しているので、血糖値の低下が起こったときに、グルコースを十分に作れないことがあります。このため、肝硬変の人には低血糖が起こりやすいです。

より詳しい説明は「肝硬変の基礎知識」を参考にしてください。

腎不全

腎臓の機能が低下した状態を腎不全といいます。腎臓にはインスリンを分解して、尿の一部にして身体の外に出す機能があります。しかし、腎不全の人ではインスリンの分解や排泄機能が低下するために、身体の中に溜まりやすくなっています。身体の中で過剰になったインスリンの影響で低血糖が起こりやすくなっています。より詳しい説明は「腎不全の基礎知識」を参考にしてください。

薬の副作用

低血糖の多くは糖尿病治療薬の副作用によるものですが、糖尿病治療薬以外でも低血糖を起こす薬があります。
代表的な薬は次のものです。

糖尿病治療薬以外の低血糖を起こす主な薬】

  • 不整脈薬(脈のリズムや回数を整える薬)
  • 解熱鎮痛剤(痛み止めや熱冷ましの薬)
  • 子宮収縮薬
  • 降圧薬(血圧を下げる薬)
  • 抗菌薬細菌を殺したり増えるのを抑える薬)

上のものは代表的なものですが、副作用として低血糖が起こりうる薬は他にも数多くあります。詳しくはこちらのサイトを参考にしてください。薬の副作用で低血糖が起こった場合は、薬の量や種類を調整します。

【参考文献】

「ハリソン内科学 第5版」(福井次矢、 黒川 清 /監修)、MEDSi、2017
「ワシントンマニュアル 第13版」(髙久史麿、和田 攻/監訳)、MEDSi、2015
重症副作用疾患別対応マニュアル 低血糖