しきゅうけいがん
子宮頸がん
子宮の入り口(子宮頚部)にできるがん。HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が主な原因
9人の医師がチェック 223回の改訂 最終更新: 2023.12.20

子宮頸がんの症状について

子宮頸がんは検診などから無症状で見つかることがありますが、一方で症状をきっかけにしてみつかることもあります。このページでは、子宮頸がんでみられる代表的な症状と、段階別に「進行したときの症状」「転移したときの症状」「末期の症状」を説明します。

1. 子宮頸がんでみられる代表的な症状

早期の子宮頸がんはしばしば無症状なことがあるので、がん検診や健康診断をきっかけにして見つかる人がいます。一方で、症状をきっかけにしてがんが見つかる人もいます。下記を参考に疑わしい症状がある人はすみやかに受診してください。

子宮頸がんの主な自覚症状は次のものです。

【子宮頸がんの代表的な症状】

月経(生理)や分娩(出産)、産褥期(出産直後)以外で起こる性器からの出血を「不正性器出血不正出血)」といいます。不正性器出血は性交後に見られることもあれば、性交に関係なく出ることもあります。また、がんには出血しやすかったり、滲出液が出やすい性質があります。子宮頸がんからの出血や滲出液は、主に膣分泌物(おりもの)の量や色、匂いの変化として自覚されます。具体的には量が増えたり、赤い色がついたりします。

子宮頸がんが周りに広がると、下腹部痛(下っ腹の痛み)を感じるようになります。下腹部痛は他の病気でも見られますが、子宮頸がんが原因の場合は長く続くことが多いです。

上で説明した3つの自覚症状は他の病気が原因になることもあります。例えば、不正性器出血は「子宮筋腫」や「萎縮性膣炎」「子宮頸管炎」「妊娠」などでもみられますし、膣分泌物の異常は「クラミジア感染症」や「淋菌感染症」でもみられます。いずれも診察や検査を行わなければ原因を特定できないので、症状がある人は医療機関で調べてもらってください。

2. 子宮頸がんが周りの臓器に広がったときの症状について

がんが子宮頸部から外に広がると、隣り合っている膀胱や直腸に入り込んでいきます。がんが組織に入り込んでいく現象を浸潤といいます。膀胱や直腸にがんが浸潤すると、血尿血便が症状として現れます。直腸や膀胱への浸潤が疑われる人には、下部消化管検査(大腸カメラ)や膀胱鏡検査が行われ、浸潤の有無やその程度が確かめられます。

3. 子宮頸がんが転移したときの症状について

がんが、できた場所から離れた所に移動して増殖することを転移といいます。転移にはリンパ節転移遠隔転移の2つがあります。リンパ節転移と遠隔転移では症状が異なることが多いので、分けて説明します。

なお、ここでは転移にともなう症状を説明していますが、定期的な検査で無症状のうちに転移が見つかることもあります。

リンパ節転移の症状

人の身体にはすみずみまでリンパ管が張り巡らされており、その中にはリンパ液が流れています。リンパ管がいくつか合流すると、リンパ節になります。リンパ節は関所のような働きをしており、リンパ管に侵入したがんや細菌が全身に広がるのを一時的に食い止めています。そのため、リンパ管にがんが侵入してもすぐには全身には広がりにくくなっています。

リンパ節でとどまったがんが増殖しても(リンパ節転移)、症状はないことがほとんどです。しかし、進行してリンパ節がかなり大きくなったり、いくつものリンパ節に転移が起こると、リンパ液の流れが悪くなった影響で足のむくみなどが現れることがあります。

遠隔転移の症状

がんができた場所から遠く離れた場所に移って増殖することを遠隔転移といいます。子宮頸がんは肺や肝臓、腹腔(お腹の臓器の隙間)などに転移しやすいことが知られており、転移した部位によって現れる症状が異なります。例えば、肝臓に転移をした場合にはお腹の張りを自覚します(お腹の張りは時間とともにあまり変化しないことが多いです)。他方、肺に転移をした場合には、咳や血液混じりの痰などが現れます。

4. 子宮頸がんが再発したときの症状について

子宮頸がんは再発することがあり、症状をきっかけにして再発が見つかることもあれば、無症状で見つかることもあります。

再発しても無症状のことがある

がんが再発しても、ある程度の大きさにならなければ症状は現れないことが多いです。定期の画像検査で、とても小さな再発が見つかった人のほとんどが無症状です。無症状であっても、再発が小さなうちに見つかると、治療を早く始められるメリットがあるので、定期的な受診は欠かさないようにしてください。

再発が現れた部位によって症状が異なる

全身のどこにでもがんは再発する可能性があり、再発した部位によって症状が異なります。例えば、肝臓に再発した場合は腹痛や腹部の張りを自覚しますし、肺に再発した場合は、呼吸しにくくなったり血液が混じった痰がでたりします。

がん治療後の症状は再発によるものなのか

がんの治療後に何らかの症状が現れたからといって、それが再発によるものとは限りません。例えば、腹痛は単なる便秘でも起こりますし、呼吸がしにくくなるのは肺炎でも起ここります。がんの治療後に症状が現れると、どうしても再発と結びつけて考えてしまいがちですが、他にもいろいろ原因が考えられるのです。気になる症状がある人はかかりつけのお医者さんを受診して原因を調べてもらってください。

5. 子宮頸がんの末期の症状について

子宮頸がんに限らず「がんの末期」には明らかな定義がありません。ですので、ここでは末期の状態を、抗がん治療(手術や抗がん剤治療放射線治療)が行えない状態として説明していきます。末期の人では身体の栄養ががん細胞に奪われたりする悪疫質(あくえきしつ)と呼ばれる状態になり、倦怠感や食欲低下が起こります。食欲の低下によって食事の量が不足すると、栄養はますます足りなくなります。栄養が不足すると、身体がむくんだり、肺やお腹に水分がたくさん溜まってしまい、身体を動かすことも難しくなります。こうした末期の症状を完全に取り除くことは簡単ではありませんが、治療によって和らげられるものもあります。苦痛に思うことは我慢するのではなく、お医者さんに伝えてください。

また、末期の患者さんは、心細さや孤独感などを感じやすくなります。患者さんが落ち着きやすい雰囲気を作って、精神的なサポートをすると、心理的な負担が軽くなります。例えば、患者さんが大切にしていたものを手元に置いたり、好きな香りで部屋を包むといったことも過ごしやすい雰囲気に繋がります。雰囲気の上手な作り方がわからない場合は、ただそばにいてあげるだけでもよいです。「自分は一人ではない」という安心を感じてもらうことが大切です。

がんの緩和治療や末期の過ごし方についての詳しい説明は「こちらのページ」も参考にしてください。

参考文献

・日本婦人科腫瘍学会/編, 「子宮頸癌治療ガイドライン2022年版」, 金原出版, 2022年
・国立がん研究センター内科レジデント/編, 「がん診療レジデントマニュアル(第7版)」, 医学書院, 2016年
・日本産婦人科学会,日本産婦人科医会/編, 「産婦人科 診療ガイドライン-婦人科外来編 2017」, 2017年