2017.09.19 | ニュース

子宮頸がんを起こすHPVの予防接種に米医学賞

ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞とその反響

子宮頸がんを起こすHPVの予防接種に米医学賞の写真

ヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン開発に関わった研究者2人が、国際的な医学賞に選ばれました。有名医学誌は相次いで関連記事を掲載しています。

HPVワクチンの歴史と今後

アメリカ国立がん研究所に所属する研究者のダグラス・ルイとジョン・シラーが、2017年のラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞に選ばれました。HPVワクチンの開発を可能にした技術的進歩が理由とされています。両氏は受賞にあたって自ら医学誌『JAMA』に寄稿し、背景などを説明しています。

 

HPVの感染を防ぐワクチンの登場

HPVの感染は子宮頸がんにつながるとされ、子宮頸がん予防の目的でHPVに対するワクチンが使われています。
HPVワクチンの実現を目指す動きは、ルイ、シラー両氏が関わったいくつかの研究によって1990年代に大きく進歩しました。

ワクチンが実現し、人間で効果を試した試験では、HPV16型を標的としたワクチンによって、ワクチンを打たなかった765人のうち41人が研究期間にHPV16に感染しましたが、ワクチンを打ったグループでは768人のうち1人もHPV16に感染した人がいませんでした。

 

新しいワクチンと用量の検討

その後、HPV16型だけでなく18型も標的とする2価ワクチン、さらに6型と11型を狙う4価ワクチン、加えて5種類の型も標的とする9価ワクチンが相次いで開発され、普及に至りました。

HPVワクチンは従来、6か月間に3回の注射として使用することとされています。しかし、最近の研究では2回の注射でも体に抗体を作らせることができるといった結果が出ています。ルイ、シラー両氏は寄稿の中で、1回の注射でも予防効果が現れる可能性に言及しています。

 

世界の反響

ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞は、通称「ラスカー賞」と呼ばれるアルバート・ラスカー医学研究賞の一部門です。ラスカー賞受賞者がのちにノーベル賞を受賞した例も多く、世界的に権威ある賞とみなされています。

『JAMA』とともに世界で広く支持されている医学誌『Lancet』も、ラスカー賞の関連記事を掲載し、HPVワクチンの研究にも触れています。

日本ではHPVワクチンは「子宮頸がん予防ワクチン」として定期接種に加えられましたが、2017年9月時点では「積極的な接種勧奨の差し控え」という扱いとされ、対象年齢の大多数に届くには至っていません。今後の情報と議論によって方針が変わることも考えられます。

HPVワクチンは医学の歴史の中で大きな成果と考えられています。子宮頸がんの予防として世界をどのように変えることができるのか、注射回数を減らす可能性などを含め、今後も注目され続けていくでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Preventing Cancer and Other Diseases Caused by Human Papillomavirus Infection: 2017 Lasker-DeBakey Clinical Research Award.

JAMA. 2017 Sep 12.

[PMID: 28876435]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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