しきゅうけいがん
子宮頸がん
子宮の入り口(子宮頚部)にできるがん。HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が主な原因
9人の医師がチェック 223回の改訂 最終更新: 2023.12.20

子宮頸がんのステージ(病期分類)と生存率などについて

子宮頸がんのステージは診察や検査の結果を元に決められます。ステージを調べることで、最適な治療法を選ぶことができたり、その後の見通しが立ちやすくなります。ここでは、子宮頸がんのステージの内容とともに、治療法や生存率との関係についても説明します。

1. 子宮頸がんのステージについて

ステージはがんの進行度を表したものです。子宮がんのステージは4つに大別され、主にがんの広がりによって決まります。ステージを分類する基準は専門的な内容を多く含んでいるので、ここでは大まかに説明します。
なお、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)はステージⅠの手間の状態です。

CIN:子宮頸部上皮内腫瘍

CINは正常な細胞とがん細胞の間にある状態です。時間の経過とともに、正常な細胞に戻ることもあればがんに変化していくこともあります。CINは3つの段階に分かれ、がん細胞に近く上皮内がん(根が浅いがん)の成分を含んだ場合をCIN3と表現します。CIN1が最も正常な細胞に近く、その次がCIN2になります。正常な細胞に戻る確率は高い順にCIN1、CIN2、CIN3になります。

ステージI(I期)

ステージIはがんが子宮頸部に留まっている状態です。転移はなく、子宮頸部に隣り合った
子宮体部や膣への広がりもありません。

ステージII(II期)

ステージIIではがんが子宮頸部を超えて広がっていますが、子宮・膣以外の臓器や構造物へは及んでいません。専門的に言うと「骨盤壁または膣壁の下1/3に達していない状態」がステージIIです。なお、骨盤壁とは子宮頸部の周りにある構造物のことであり、「膣壁の下」は膣の入り口を下としてみた際の表現です。

ステージIII(III期)

ステージIIIは、広がりがステージIIより大きいです。専門的に言うと「骨盤壁または膣壁の下1/3に達している状態」です。また、膀胱や尿管にがんが広がり水腎症(尿の流れが滞り腎臓の一部が腫れること)が発生している状態もステージⅢに含まれます。

ステージIV(IV期)

ステージIVはがんがさらに広がった状態です。具体的には「がんが膀胱や、直腸粘膜(直腸の最も内側の層)にまで入り込んだ状態」または「がんが骨盤を飛び出してお腹の中や遠く離れた臓器に転移した状態」です。

2. 子宮頸がんのステージごとの治療法について

ステージを決める目的の1つに、最適な治療法の選択があります。ステージによって治療内容が異なるので、各ステージごとに説明します。 なお、手術や抗がん剤治療放射線治療の詳細は「こちらのページ」を参考にしてください。

CINの治療

CINのうち最も悪性度が高いCIN3は治療が必要になり、CIN1、2は経過観察をして治療のタイミングを計ることが多いです。CIN3に対しては、円錐切除術とい手術が行われます。ここでがんが取り切れていれば、治療は終了になりますが、ステージIまで進行した場合には、追加治療が必要になります。

ステージIの治療

ステージIはがんが子宮頸部にとどまった状態ですが、広がりに応じて、ステージIAとステージIBに分かれます。専門的な内容になるのですが、ステージIAはがんの深さが5㎜以下である状態を指し、ステージIBはがんの深さが5㎜を超える状態を指します。

ステージIでもIAとIBでは治療法が異なるので、個別に説明します。

■ステージIAの治療

単純子宮全摘除術もしきは準広汎子宮全摘除が行われます。単純子宮全摘術は子宮と卵巣・卵管を取り除く方法です。一方、準広汎子宮全摘術は子宮・卵巣・卵管に加えて子宮頸部の周辺にある組織も同時に取り除きます。
どちらの治療法が選ばれるかは、最初に行う円錐切除術で切り取った組織を顕微鏡で観察した結果によって決まります。少し難しい話になるのですが、脈管(血管やリンパ管)にがんが及んでいない人には単純子宮全摘除術が選ばれ、脈管にがんが及んでいる人には準広汎子宮全摘除術が選ばれることが多いです。その他では患者さんの健康状態なども判断材料となることがあります。

■ステージIBの治療

ステージIBの人には「広汎子宮全摘除術」もしくは「化学放射線療法(抗がん剤治療を併用した放射線治療)」が行われます。ステージIBの人ではこの2つの方法でほとんど同等の効果が期待できるので、どちらにするかは患者さんの考えなどをもとにして選択されます。なお、広汎子宮全摘除術は、子宮だけではなく子宮頸部の周りにある組織ごと摘出する方法のことです。自分にあった治療を選ぶには、それぞれの特徴を踏まえることがポイントになります。「こちらのページ」で詳しく説明しているので、参考にしてください。

ステージIIの治療

ステージIIの人にはステージIBと同様に、「広汎子宮全摘除術」もしくは「化学放射線療法」が行われます。治療は同じですが、ステージIBの人に比べて再発が多いと考えられており、広汎子宮全摘除術の後には必要に応じて、抗がん剤治療法が行われます。

ステージIIIの治療

ステージIIIの人には「広汎子宮全摘除術」が行われることはほとんどなく、主に「化学放射線療法」が行われます。

ステージIVの治療

ステージIVはIVAとIVBに分かれ、それぞれの状態で治療内容が異なります。

■ステージIVA

ステージIVAは子宮頚がんが膀胱や直腸の中に入り込んで最も内側の粘膜まで達した状態です。ステージIVAの人には「広汎子宮全摘除術」が行われることはほとんどなく、主に「化学放射線療法」が行われます。

■ステージIVB

ステージIVBはがんが子宮から離れた場所に転移を起こしている状態です。ステージIVBの人には主に抗がん剤治療が中心に行われます。また、他のステージの人に比べてがんによる症状が強く出ていることが多いので、緩和治療の比重が大きくなります。

3. 子宮頸がんのステージと生存率について

がんの統計'23」をもとにしたステージごとの生存率を表に示します。

【子宮頸がんのステージごとの5年実測生存率(2013年-2014年診断)】

ステージ 5年生存率(%)
ステージI 93.6
ステージII 75.3
ステージIII 62.0
ステージIV 24.8

まず、ここには載っていないCIN(子宮頸部上皮内腫瘍)について説明をします。CINはステージIよりも前段階で、もっとも早期の状態であり、子宮頸がんの約半数を占めます。多くを占めるCINですが、「がんの統計」では5年生存率が集計されてはいません。ですが、CINはステージIより早期であることを踏まえると、5年生存率はステージIの生存率を上回る可能性が高いと考えられます。

がんと診断を受けて自分の当てはまるステージが分かると、生存率がどうしても気にかかるものです。しかし生存率はあくまでも過去の治療の結果なので、今の治療でも同様の結果を示すとは限りません。また、生存率は、一人ひとりの身体の違いが加味されてはいないので、自分にそのままの数字が当てはまるわけではありません。

生存率は気になる数字ですが、とらわれすぎないようにしてください。生存率を知ったことによって起こる不安や疑問はお医者さんに相談して解決し、「治療に前向きに取り組むこと」や「日常生活を充実させること」に目を向けてください。

参考文献

・公益財団法人がん研究振興財団, 「がんの統計’23
・日本婦人科腫瘍学会/編, 「子宮頸癌治療ガイドライン2022年版」, 金原出版, 2022年
・国立がん研究センター内科レジデント/編, 「がん診療レジデントマニュアル(第7版)」, 医学書院, 2016年
・日本産婦人科学会,日本産婦人科医会/編, 「産婦人科 診療ガイドライン-婦人科外来編 2017」, 2017年