2017.11.17 | ニュース

子宮頸部・外陰部・腟の高度病変を9価HPVワクチンで防げるか?

4価HPVワクチンと比較した長期の結果
from Lancet (London, England)
子宮頸部・外陰部・腟の高度病変を9価HPVワクチンで防げるか?の写真
(c) miya227 - iStock

子宮頸がんの原因となるウイルス(HPV)には有効なワクチンがあります。HPVワクチンの中でも4価ワクチンと9価ワクチンを比較した研究から、対象者を長期追跡した結果が報告されました。

9価HPVワクチンとは?

子宮頸がんの原因のひとつがヒトパピローマウイルスHPVです。HPVは性行為などで感染します。HPVに感染した組織は、ある確率で上皮内異形成(CIN)などと呼ばれる異常な状態に変化します。上皮内異形成はがんの手前の状態です。上皮内異形成などの異常は、大部分は自然に正常状態に戻ります。しかし、一部の場合はさらに進行して子宮頸がん(浸潤)になります。

HPVワクチンはHPVの感染を防ぐことで子宮頸がん予防を狙うワクチンです。すでに感染したHPVを排除する効果はありません。

HPVは細かい型に分けられます。16型、18型などが子宮頸がんを発生させやすいとされるほか、100種類以上の型が知られています。HPVワクチンには、2種類の型のウイルスに対応した2価ワクチン、4種類の型のウイルスに対応した4価ワクチン、さらに日本では未承認ですが9価ワクチンがあります。9価ワクチンは、4価ワクチンが対応する型に加えて5種類の型にも対応することで、より高い予防効果を狙っています。

 

9価HPVワクチン接種後長期の結果

9価HPVワクチンの評価のため世界18か国で行われた研究の結果が、医学誌『Lancet』に報告されました。

この研究の短期的な結果は以前に報告されています。9価HPVワクチンだけがカバーする5種類の型のウイルスによる高度病変の発生率が低くなり、9価HPVワクチンの効果が示されたという結果でした。

関連記事:子宮頸がん9価ワクチンは4価ワクチンより効くのか?

ここでは前の報告以後も対象者を追跡調査し、より長い期間の経過を調べた結果が報告されています。

 

16歳から26歳の健康な女性14,215人が対象となり、ランダムに2グループに分けられました。

  • 9価HPVワクチンを打つグループ(7,106人)
  • 4価HPVワクチンを打つグループ(7,109人)

ワクチンの効果を評価するため、追跡期間に以下の「高度病変」の発生の有無が記録されました。

  • 高度子宮頸部上皮内異形成(CIN2/3)
  • 子宮頸部上皮内腺癌(AIS)
  • 子宮頸部浸潤癌
  • 外陰部上皮内異形成(VIN2/3)
  • 外陰部癌
  • 高度膣上皮内異形成(VaIN2/3)
  • 腟癌

研究班は、評価の主な基準として2点をあらかじめ決めました。

9価HPVワクチンだけがカバーしている5種類の型のウイルスについては、高度病変の数で比較することと決めました。

また、4価HPVワクチンがカバーしている4種類の型のウイルスについては、抗体(ワクチンの効果で体の中に作られる物質)の量を比較することと決めました。

3回打つ注射のうち最初の1回を打ってから最長6年まで対象者を追跡した結果が比較されました。

 

有効率97.4%

データの解析から次の結果が得られました。

per-protocol集団において、HPV31・33・45・52・58に関連する子宮頸部・外陰部・腟の高グレード疾患の発症率は、9価HPVワクチン群で10,000人年あたり0.5例であり、4価HPVワクチン群では10,000人年あたり19.0例で、その有効率は97.4%(95%信頼区間85.0-99.9)となった。HPV6・11・16・18の幾何平均抗体価は、接種後1か月から3年の間に4価HPVワクチン群に比べて9価HPVワクチン群で非劣性だった。

あらかじめ設定した2点の評価項目について、9価HPVワクチンだけがカバーしている5種類の型のウイルスによる高度病変は、9価HPVワクチンのグループのほうが97.4%少なくなりました

4価HPVワクチンがカバーしている4種類の型のウイルスに対する抗体の量は、どの種類についても9価HPVワクチンが劣らない範囲になっていました。

 

副作用について、入院が必要な程度以上の重症や、長期にわたる機能障害、先天異常、発がんなどを「深刻な有害事象」と定義して集計されました。有害事象とは副作用によるものもそうでないものも含めて、望ましくない出来事が起こったことを指します。

深刻な有害事象は9価HPVワクチンのグループで3.3%、4価HPVワクチンのグループで2.6%の人に現れました。

深刻な有害事象のうち件数が多かったものに以下がありました。

ワクチンの種類

9価

4価

妊娠・産褥期・周産期の問題

57件(0.8%)    

47件(0.7%)

外科的または内科的手技

73件(1.0%)

53件(0.7%)

感染または寄生虫の寄生

31件(0.4%)

31件(0.4%)

この中にはワクチンが原因ではないものも含まれていると考えられます。

 

研究班はこの結果をもとに「9価HPVワクチンは潜在的により広い範囲をカバーし、世界で子宮頸がんの90%を防ぐ可能性がある」と結論しています。

 

子宮頸がん予防のために9価HPVワクチンを広めるべきか?

9価HPVワクチンの研究の長期結果を紹介しました。前の報告に続いて同様に、高度病変に対する予防効果が示されていました。

HPVワクチンは、日本では副作用が疑われたことにより、定期接種の積極的推奨を差し控えるという扱いになっています。9価HPVワクチンは日本では未承認です。その間も海外では広く予防接種が行われ、世界保健機関(WHO)ワクチンの安全性に関する専門委員会からは日本の状況に対して批判的な文書が出されています。この文書の中には「委員会は、以前の検討以来変わらず、HPVワクチンと複合局所疼痛症候群、体位性頻脈症候群、その他痛みや運動機能障害などの多様な症状との因果関係を示唆する証拠は存在しないと結論した」という記載があります。

 

HPVワクチンの効果についても副作用についても、さまざまな主体による研究データが積み重ねられています。社会の意思決定のために、こうした事実を参照して判断材料とすることができます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years: a randomised, double-blind trial.

Lancet. 2017 Sep 5. [Epub ahead of print]

[PMID: 28886907]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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