食道がんの生存率:ステージごとの生存率や余命についての解説
食道がんの生存率は
目次
1. 食道がんのステージとは?
食道がんのステージは大きくステージIからステージIVに分類されます。ステージIVはさらにIVaとIVbの2つに分類されます。
食道がんのステージは「がんの食道壁での深さ」、「
ステージの分類をするのはそれぞれで最適な治療法を決めるためです。下に表を示します。
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N0 |
N1 |
N2 |
N3 |
N4 |
M1 |
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T0、T1a |
0 |
II |
II |
III |
IVa |
IVb |
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T1b |
I |
II |
II |
III |
IVa |
IVb |
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T2 |
II |
II |
III |
III |
IVa |
IVb |
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T3 |
II |
III |
III |
III |
IVa |
IVb |
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T4a |
III |
III |
III |
III |
IVa |
IVb |
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T4b |
IVa |
IVa |
IVa |
IVa |
IVa |
IVb |
詳しくは「食道がんのステージとは?ステージの決め方や治療法についての解説」で説明しています。
2. ステージごとの生存率は?
食道がんの生存率はステージごとに統計が取られています。「がんの統計 2022」ではステージIからステージIVの4段階に分類したときの生存率が記載されています。
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ステージ |
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ステージI |
78.8 |
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ステージII |
51.3 |
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ステージIII |
26.8 |
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ステージIV |
9.2 |
この数字を参考にするときは注意点があります。まずここに示した数字は2012年から2013年の間に食道がんと診断された人の結果です。食道がんの治療は以前と比べて進歩しているのでこの数字通りの生存率が今に当てはまるとは限りません。
また、がんの状態や身体の状態は人それぞれで異なります。同じステージに分類される人でも状態はさまざまです。一見似た状態の人でも5年を超えて生存する人もいれば早く亡くなってしまう人もいます。統計は参考になりますが、一人ひとりの経過を正確に言い当てることはできません。
がんと診断されると生存率などの数字がどうしても気になる気持ちは理解できます。自分の状況を理解して1日1日に向き合っていくことが大事です。
3. 食道がんが再発したら生存率は?
食道がんの再発が見つかってからの生存率を予測するのは簡単ではありません。再発後の生存率について網羅的で信頼度の高い統計はありません。
食道がんが再発する場合は2通り考えられます。
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食道に再発する
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治療後に
リンパ節 や他の臓器の転移 が見つかる
食道の中に再発するのは、
再発したがんには以下の治療の選択肢があります。
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内視鏡治療
-
手術
再発したがんが浅くて内視鏡治療で治療が可能な場合には再び根治が狙えます。根治とはがんを身体からなくすことです。
再発した
ほかの臓器に食道がんが転移した場合は、全身にがん細胞が散らばっている可能性を考えなければなりません。このような場合の治療法は
再発や転移をした状況はそれぞれの人で異なります。いくつもの臓器に遠隔転移がある人と、リンパ節にだけ再発した人では状況が大きく異なります。再発したときの状況はそれぞれで異なるので生存率の推定は難しいと言わざるをえません。
自分の状況をしっかりと把握して、目の前の選択肢の中で自分や家族などにとって一番よいと思った治療を選んでいくことが大事です。
4. 食道がんの生存率は病院によって違う?
食道がんの生存率は病院によって差があるという意見があります。特に施設間で差があると言われているのが食道がんの手術による成績です。食道がんは手術後の
日本で2011年から2013年の間の手術成績を調査した報告があります。1年間の食道がんの手術件数で施設を分けて手術に関連した死亡率(在院死亡率)の比較を行いました。在院死亡率は1年間の手術が10件より少ない施設で5.1%、30件より多い施設で1.5%と、手術件数が30件以上の施設で少ないという結果でした。合併症は手術が上手くいっても一定の確率でおきるものですが、食道がんの手術は手術自体も難しいうえにその数は多くないので十分な知識と技術を持ち合わせた医師は多いとは言えません。
また手術は執刀医一人でするものではありません。助手を務める医師や看護師とともに行うものです。執刀医に経験や技術があってもそれを最大限に発揮できる周りのスタッフも重要です。執刀医が指示を出さずとも助手が自然と最適な視野を確保し看護師がスムーズに執刀医の欲するものを渡すという環境が重要です。スムーズな手術ができる環境は数を多くこなすことによって培われるものです。つまりある程度は経験がものをいいます。手術件数が多い施設では機会も多い分だけに施設としての経験値が高くなります。手術件数の多い施設では手術後の管理も慣れているので合併症の発生に早く気づいたりすることも可能かもしれません。合併症は早期に対応することが重症化させない意味で大事なことです。
とはいえ手術件数で全てを語ることはできないのも事実です。手術件数が少なくても綿密に計画をたてて精緻な手術、適切な術後管理ができる施設もあります。仮に今、手術を受けることを提案されて主治医に信頼がおけるのであればそこが手術件数が多くはない施設だとしても無理に病院を変わることはよく考えた方がいいと思います。食道がんの手術は身体に負担がかかり手術後はつらいと感じることも多くあります。そんなときは信頼のおける医師の顔をみるだけで精神的にも楽になると思います。
食道がんの手術後の生存率は施設の手術件数によって差がある傾向にはあります。しかし症例数が全てではありません。手術件数が多い病院で手術を受けたから安全が約束されるものでは決してありません。どこで手術をうけても絶対合併症が起きない保証はできないと思います。自分や家族と考えをしっかりと話し合って手術をうける病院選びの参考にしてみてください。
参照:Br J Surg.2016;103:1880-1886
食道がんを治療する病院はどうやって選ぶ?
食道がんは決して数が多いがんではありません。例えば、隣の臓器の胃がんと比較すると、1年間に胃がんを診断される人は約13万人ですが、食道がんを診断される人は約2万人とかなり人数に違いがあります。そのため、胃がんに比べると食道がんの経験が豊富な医療機関は多くありません。
がん治療では経験も重要になるので、病院ごとの治療経験は一つの参考になります。食道がんの治療は、内視鏡、手術、化学放射線療法、抗がん剤治療と選択肢が多くあり、最適な治療法を選ぶことが重要です。治療法の選択には客観的な評価に加えて施設や担当医の経験も重要になります。
食道がんに精通した医師を探す方法としては、日本食道学会の認定する食道外科専門医や食道科認定医が参考になります。食道外科専門医や食道科認定医は食道の病気に専門的な知識や技術を持つ、学会が認定した医師です。氏名や在籍する施設は日本食道学会のウェブサイトで確認できます。食道外科専門医や食道科認定医の資格を得ていなくても専門的な知識や技術を持った医師は存在します。資格がなければ治療を行えないわけではありません。治療する病院を探していて、何を手がかりに選べばいいかわからない場合などには資格を参考にしてみるのもいいでしょう。
食道がんを治療する病院の選び方として手術件数の多さに注目することを説明しましたが、もうひとつ大切にしてほしいのは医師との相性です。治療は人と人とのコミュニケーションが大事なので相性が非常に重要です。当たり前の話かもしれませんが、有名な病院に在籍する医師が必ずしも相性がいいとは限りません。もし食道がんの診断がついて治療を勧められていて、担当医の説明に納得ができている場合には無理に病院を変わる必要はありません。
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食道がんは治療実績数が大事
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治療する病院を探している場合には食道外科専門医や食道科認定医も参考に
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施設も大事だが医師との相性も大事に
最後に、食道がんは進行するのが早いので治療する場所は速やかに決めることをお勧めします。熟慮することも大事ですが、いつまでに決めるかもあらかじめ考えておいてください。
参照:日本食道学会
5. 高齢者が食道がんになったらどうする?
高齢者が食道がんになっても、高齢者ではない人と対応は変わりません。生存率はがんの状態によって決まることが予想されます。
食道がんが発生しやすいのは60-70歳代の人です。まず食道がんの確定診断のためにいくつかの検査を行います。検査で食道がんが浅ければ内視鏡治療、食道がんが深ければ手術によって食道を切除します。食道がんの手術は身体への負担が大きいので手術が適していない場合には化学照射線療法も選択肢に挙がります。化学放射線療法は
現在の高齢者の定義は年齢が65歳を超えた人で、食道がんが最も発生しやすい年齢にあたります。高齢者といっても体は非常に若々しい人が大勢いますが、次のような問題に当てはまる人は食道がんの治療中にも気を付けることが増えます。
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身体的な衰え
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認知症などの精神疾患がある
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他にも病気を抱えている
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他の病気の治療で薬を飲んでいる
身体的な問題がなく元気な人は、たとえ高齢であっても食道がんの治療が勧められます。食道がんはがんのなかでも治療が難しいがんです。
高齢者ががんを治療する際には、どんな治療の方法を選んでも注意する点が多くあります。医療者の立場からも、高齢者の入院中は特に注意します。しかし、年齢という数字だけの問題で治療に対して消極的になることはもったいないという考え方もできます。高齢者でも根治を目指す治療を行うことは可能です。同時に緩和治療も受けられます。対して、はじめから無理をしない方針とすることもできます。何がいいかは最終的にはご自身や家族の価値観によって決まります。主治医から必要な情報を十分聞いたうえで、よく相談して治療方針を決めてください。
6. 食道がんで余命を告知されたら何をすればいい?
食道がんが見つかったとき治療によって効果を期待できる状況であれば、余命をはっきりと伝えられることは多くないと思います。治療がうまくいくかどうかによってその後の見通し(
余命を告知されるのは、診断時に転移があるもしくは治療後に遠隔転移として再発が確認された場合が多いでしょう。遠隔転移とは領域リンパ節以外の転移です。遠隔転移があれば根治(がんを身体からなくすこと)が難しいと考えられる状況です。
余命の告知は必ずしも正確ではないことに気を付けてください。特にステージを元にした余命予測の多くは参考にはなるものの正確ではありません。なぜならば、その人その人で顔が異なるように、がんになっても大勢の人で状況が全く同じことなどはありえないからです。
余命を告知されたときに考えてほしいことは、月並な言い方になりますが、1日1日を大事に生きることです。まずはご自分の病気の状態をよく知ることが大事です。確かに簡単にできることではありません。臨床医としての経験からも、食道がんを冷静に受け止めることの難しさは実感します。少しずつでもいいので、病気について知り、どのように過ごせばいいのか、どのような治療があるのか主治医に質問してください。同じことを繰り返し尋ねることになっても遠慮する必要はありません。あらかじめ質問を紙に書いておくと答えやすいかもしれません。ほかの医師の意見(セカンドオピニオン)を聞きたいときも、まず主治医に希望を伝えてください。
がんと診断されるとつらい状況に陥ります。それは皆同じです。がんに対して魔法のような治療はないのです。がんと向き合うことは簡単ではありませんが、前向きにできることは何かを考えていくことが重要なことです。痛みなどの症状を軽くする緩和ケアも、抗がん剤などと同時に考えるべき大切な治療です。
自分で情報を調べるとどんどん怖い情報が出てくると思います。怖い情報の中には、がんとは戦うなという意見もあります。確かに、全身の消耗が激しいときに強力な抗がん剤治療を無理に行うことなどは勧められません。しかし、治療の選択肢が残っているうちからあまりに早く消極的になるのはもったいないと感じます。
まずは主治医からご自分の状況についてしっかりと話を聞き、家族と情報を共有し気持ちをしっかりと整えることをお勧めします。一人で闘うわけではありません。家族や医療者のようにあなたを支えてくれる人は大勢います。怖がらずにまず知ることから始めてみるのがいいと思います。