[医師監修・作成]脳梗塞で知っておきたいこと:予防、再発予防、隠れ脳梗塞など | MEDLEY(メドレー)
のうこうそく
脳梗塞
脳の血管が詰まって結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、脳細胞が壊死すること。運動・感覚の麻痺などを起こし、後遺症による寝たきりや死亡にもつながる
21人の医師がチェック 438回の改訂 最終更新: 2022.04.11

脳梗塞で知っておきたいこと:予防、再発予防、隠れ脳梗塞など

高血圧、糖尿病脂質異常症などが持病にある人は脳梗塞が起こりやすいことが知られています。脳梗塞の原因となる病気を予防したり改善させるには食生活に気をつける必要があります。つまり、脳梗塞の発症予防にも食事が関係しているとも考えることができます。このページでは脳梗塞予防につながる食生活や生活習慣について説明します。

1. 脳梗塞の予防のために気をつけたい病気には何があるか

脳梗塞を発症する要因となりうる病気や生活習慣として、次のものが知られています。

【脳梗塞の発症要因となる病気や生活習慣】

上記の病気は治療によって改善が可能です。病気を上手にコントロールすることが、脳梗塞の発症予防につながります。また、上記の病気の多くは食生活と密接な関係があります。

2. 脳梗塞の予防に大切な食事習慣とは:高血圧・糖尿病・脂質異常症の予防とコントロール

高血圧や、糖尿病脂質異常症は脳梗塞と関係がある病気ですが、医療機関で受けられる治療とともに食生活も重要です。主なポイントは次の通りです。

【食生活のポイント】

  • 塩分を摂り過ぎない
    • 1日の食塩摂取量を男性7.5g、女性6.5g未満に抑える
  • 糖質、カロリーを摂り過ぎない
  • トランス脂肪酸(脂肪の一種)を摂り過ぎない

それぞれについて詳しく説明していきます。

塩分を摂り過ぎない

過剰な塩分摂取は高血圧症の原因になります。目安として、1日の食塩摂取量は男性であれば7.5g未満に、女性であれば6.5g未満に抑えるようにしてください。日本高血圧学会では、高血圧症の予防のためには、血圧が正常な人であってもできるだけ6g未満を目指すことを勧めています。日本人の食生活は塩分を摂りすぎる傾向にあります。そのため、塩分を抑えるには以下のような工夫を意識的に取り入れることが大切です。

  • 漬物や梅干し、干物といった塩分が多い食品を食べ過ぎない
  • 醤油やソースなどの塩分の多い調味料を使いすぎない
  • 物足りなさは酢、レモン、かぼす、だしなどを活用して補う

参考文献
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)
日本高血圧学会減塩・栄養委員会(2022.2.10閲覧)

糖質、カロリーを摂り過ぎない

糖質やカロリーの過剰摂取は、糖尿病脂質異常症の発症につながります。糖質というと甘いものを思い浮かべがちですが、炭水化物にも糖質が入っています。炭水化物はご飯やパンに代表される主食に多い栄養です。 外食ではカロリーや炭水化物が多くなりがちなので、選び方には注意が必要です。例えばラーメン・チャーハンセットは炭水化物の重ね食で、身体に良くないことは言うまでもありません。炭水化物を重ねるのではなく、サラダや野菜をつけるなどの工夫をしてみてください。また、ご飯を少なめに注文するのも良いでしょう。

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸(脂肪の一種)を摂り過ぎない

「脂肪」と聞くと悪いイメージを持つ人が多いと思います。実は脂肪には「身体に良い脂肪」と「身体に悪い脂肪」があります。

脳梗塞は、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が血中で高い状態が続くと、起こりやすくなります。血液中の悪玉コレステロールを上げないためには、単に脂肪の摂取量を減らせばいいわけでありません。脂肪の中でも「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」の摂取量を減らさなければなりません。飽和脂肪酸は主に動物の肉に含まれ、トランス脂肪酸は、マーガリンや高熱処理された植物油に含まれます。

一方、「不飽和脂肪酸」に分類されるエイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)は、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、生活習慣病の予防に役立つと言われています。これらは魚に多く含まれています。

油の摂り方を工夫するだけで脳梗塞の危険性を下げられるかもしれません。詳しく知りたい人は医師や栄養士に相談してみてください。

3. 喫煙と脳梗塞の関係

喫煙は脳梗塞の危険性を増す要因であると考えられています。特に喫煙本数が多ければ多いほど、危険性が高まるので、禁煙が望ましいです。

何十年もタバコを吸ってきたという人の中には「いまさら禁煙しても...」と思うかもしれませんが、耳寄りな情報があります。長く喫煙していた人でも、5-10年禁煙すると脳卒中を起こす確率が下がるとした研究報告があります。ですから、「自分はもう30年もタバコを吸ってきたから、今さら禁煙しても意味がない」とあきらめないでください。なかなか自分では禁煙できないという人は、医療機関の禁煙外来を受診してみるのも一つの方法です。医療保険を使って、3割の自己負担で医師のサポートを受けながら禁煙に挑戦することができます。

4. 飲酒と脳卒中の関係

飲酒をする人は脳出血を起こしやすく、飲む量が多いほどその傾向は強まります。一方で脳梗塞の場合、まったく飲まない人よりも少し飲む人の方が脳梗塞を起こしにくいと言われています。ただし、大酒飲みになると脳梗塞を起こす危険性は高くなってしまいます。脳梗塞のことを考えると、たしなむ程度の飲酒が許容範囲になるようです。

5. 睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞の関係

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中にいびきをかき、一時的に呼吸が止まってしまうことを繰り返す病気です。肥満・大きな舌・小さな顎などが要因となります。睡眠時無呼吸症候群の人は、睡眠時間を十分確保できていても、睡眠中に呼吸が止まるので、睡眠の質が低くなります。その結果、日中に眠くなってしまい、身体にさまざまな影響が及びます。

さまざまな研究により、睡眠時無呼吸症候群がある人では、脳梗塞を起こしやすいということが知られています。いびきや無呼吸から睡眠時無呼吸症候群が疑われる人は、医療機関を受診して、治療も考えてみてください。

6. 隠れ脳梗塞とは何か

いわゆる隠れ脳梗塞とは、症状がほとんどない脳梗塞のことです。医学的には「無症候性脳梗塞」と呼ばれ、脳の中でも重要な機能を持たない部分に起きた小さな脳梗塞を指します。

細い血管の脳梗塞であることが多い

ラクナ梗塞というタイプの脳梗塞であることが多いです。ラクナ梗塞は穿通枝と呼ばれる細い血管が詰まった脳梗塞です。動脈硬化が発症に関わっていると考えられているので、動脈硬化の要因になる高血圧症脂質異常症糖尿病などをきちんと治療することが大事です。これは、隠れ脳梗塞を治療するという目的ではなく、新たな脳梗塞を起こさないようにするためです。

隠れ脳梗塞に治療は必要なのか

症状のある脳梗塞には抗血小板薬(血液をサラサラにする薬の一種)が再発予防に有効なのですが、隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)に対する効果ははっきりとしていません。このため、一般的に隠れ脳梗塞の予防目的で抗血小板薬を使うことは少ないです。無症候性脳梗塞で抗血小板薬を使うのは頸動脈(首に存在する血管)や脳の主幹部動脈(太く重要な血管)が狭くなっていたり閉塞していたりする場合などに限られます。

隠れ脳梗塞は危険な病気なのか

脳梗塞の症状が見られない高齢者に頭部MRI検査を行うと、約10%の人に隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)が見つかります。隠れ脳梗塞はそのくらい一般的ですし、見つかったからといって過度に心配する必要はありません。

しかし、隠れ脳梗塞が見つかった人は、ない人に比べて3倍脳梗塞を起こしやすかったという報告があります(研究論文「隠れ脳梗塞の人は脳梗塞になりやすい」(英語))。重篤な脳梗塞に発展しないように、喫煙者であれば禁煙をするなど、適切な対策や治療をしていくように考えを切り替えることが大切です。

参考文献
・Vermeer SE, et al. Silent brain infarcts and white matter lesions increase stroke risk in the general population: the Rotterdam Scan Study. Stroke. 2003 May;34(5):1126-9.

7. 脳梗塞の再発率はどのくらいなのか

脳梗塞は再発率が高い病気です。年間で2-5%程度にもなると言われています。脳梗塞を一度でも発症したことがある人は、発症していない人よりも、脳梗塞を発症する危険性がはるかに高いのです。

ただし、再発しやすさには個人差があります。脳梗塞の種類や持病にも関係するからです。高血圧、糖尿病脂質異常症合併している人や、喫煙を続けている人は、脳梗塞を再発する危険性がより高くなります。

8. 脳梗塞の種類による死亡率の違い

アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞には、死亡率(一定の期間で死亡する人の割合)にも違いがあります。

研究論文「脳梗塞の種類と死亡率について」(英語)によると、発症してから1ヶ月以内の死亡率を脳梗塞の種類別に比較すると、次のようになります。

【発症1ヶ月後の死亡率】

  • ラクナ梗塞が2%
  • アテローム血栓性脳梗塞が10%
  • 心原性脳塞栓症が23%

ラクナ梗塞の死亡率がもっとも低く、心原性脳塞栓症の死亡率がもっとも高いという結果でした。

参考文献
・de Jong G, et al. Stroke subtype and mortality. a follow-up study in 998 patients with a first cerebral infarct.