のうこうそく
脳梗塞
脳の血管の一部が詰まり、血流が足りなくなった脳細胞が壊死すること。運動・感覚の麻痺などを起こし、後遺症による寝たきりや死亡にもつながる
21人の医師がチェック 264回の改訂 最終更新: 2018.02.12

Beta 脳梗塞のQ&A

    脳梗塞と脳卒中の違いについて教えて下さい。

    脳卒中は、脳梗塞と脳出血、くも膜下出血の総称として一般的に使われている言葉で、一つの具体的な病名ではありません。いずれも、脳血管の病気である、急激に意識障害や麻痺などの症状が出現する、重い後遺症を残すことがあるなどの共通点はありますが別の病気です。脳卒中の中でも、脳の血管が詰まることによって起こる病気が脳梗塞です。

    脳梗塞が起こったとき、頭の中では何が起こっているのですか?

    脳梗塞は脳の血管の中でも、脳に酸素や栄養を運ぶ動脈が詰まったときに起こります。脳の細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなると、脳の細胞はダメージを受けて死んでしまいます。脳は部位によってそれぞれ機能が違いますが、ダメージを受けた脳の部位がどんな機能をもっていたかで症状が変わります。例えば、右手を動かす命令を出す部分の脳がダメージを受けると右手の麻痺がでますし、言葉を司っている場所(言語野)がダメージを受けると、言葉が理解できなくなったり話せなくなったりする失語症という症状が出たりします。

    脳梗塞は主にどんな症状で発症するのですか?

    脳梗塞は様々な症状で発症しますが、代表的な症状は、「体の片側の麻痺」です。原則として「体の片側」に「突然」起こることが多く、例えば以下のような症状になります。

    • 顔面のうち片方が上手く動かない
      • 両目をぎゅっと閉じようとしても片目だけしっかりつむれない
      • 眉毛を上げようとしても片眉だけしっかり上がらない
      • 口角が上がらない(「いー」という口の形が片方だけできない)
      • 舌をまっすぐ突き出せない
      • うまく飲み込めない、話せない
    • 片方の腕や手がうまく動かない
      • コップが持てない
      • ばんざいをしようとしても片腕だけ上がり方が悪い
    • 片方の脚がうまく動かない
      • しっかり歩けない

    これらの症状は同時にみられることもありますし、軽い麻痺から重い麻痺まで重症度も様々です。また運動麻痺よりも自覚しづらい症状ですが、感覚の麻痺も伴っていることが多いです(痛みや熱さなどの感じ方が左右で異なるなど)。また、脳梗塞では頭痛や失神(一時的な意識消失)を起こすことはあまりありません。

    次に、脳梗塞の発症において忘れてはならないのが、一過性脳虚血発作(TIA)という病気です。一過性脳虚血発作は脳梗塞の前兆であり、典型的には数分から30分ほどといった短い時間だけ、上記のような症状が現れます。脳の血管が完全には詰まっていない、もしくは一旦詰まった後すぐ再開通したような場合に起こります。このような症状が起こった場合は、速やかに病院へ行くことが重要です。

    脳梗塞はどのように診断するのですか?

    脳梗塞の診断に最も適した検査は頭部MRI検査です。頭部MRI検査は発症してから間もない脳梗塞も診断することができます。頭部CT検査は、脳出血の診断には適していますが、特に発症間もない脳梗塞でははっきりと画像上の異常がでにくいことがあり、MRIが撮影可能な病院であれば、頭部MRIで診断を行います。

    ただし頭部CT検査の方が速やかに検査可能で脳出血かどうかを確認できることから、頭部CT検査を最初に行う病院も多いです。

    脳梗塞で入院した後は主にどのような治療を行うのですか?

    脳梗塞での入院直後には、主に以下のような治療を行います。

    • 血栓溶解療法(rt-PA療法)

      • 発症から4.5時間以内の早期の場合には、rt-PAという血栓溶解薬を使用した治療が可能になります1)。脳梗塞を起こしても、数時間以内に血流が再開すれば、脳の細胞が完全に死んでしまう前に復活させることができます。これを目標として、詰まりの原因である血栓を溶かす薬剤を点滴するのがこの治療です。もともとは脳梗塞の発症から3時間以内の場合のみに使用されていましたが、現在では脳梗塞の発症から4.5時間以内までで使える薬剤になりました。ただし、4.5時間以内だとしても、出血をしやすい病気を持っている場合や、年齢、全身状態などを総合的に判断し使用するかを決定しますので、全ての脳梗塞患者さんに使用できるわけではありません。

    • 抗凝固療法

      • 抗凝固療法は血液を固まりにくくする治療です。アテローム血栓性脳梗塞の場合は、発症してから48時間以内であれば、アルガトロバン(選択的トロンビン阻害薬)を使用します2)。アテローム性血栓性脳梗塞以外の場合に関しては、抗凝固療法を発症初期から行うべきかどうか、まだ明確な治療方針はでていません。

    • 抗血小板療法

      • 抗血小板療法は血液をさらさらにする治療です。脳梗塞の発症早期にはアスピリンという抗血小板薬を用います3)。その他にもクロピドグレルという薬剤や、オザグレルナトリウムという薬剤(点滴)を初期に使用する場合があります。

    • 脳保護薬

      • 脳のダメージの広がりを抑える薬としてエダラボンという脳保護薬を用います4)

    その他に、脳梗塞の範囲が大きい場合には脳のむくみ(脳浮腫)を抑える治療薬(グリセオール、マンニトール)を使用する事があります。

    脳梗塞の原因について教えて下さい。

    脳梗塞の原因は大きくわけて3つあり、原因によって脳梗塞の中でも分類されています。それぞれに名前がついているので、紹介します。

    • アテローム血栓性脳梗塞

      • これは主に動脈硬化が原因で起こる脳梗塞です。

      • 動脈硬化が起こると、脳の中で比較的太い血管や首の血管にどろどろとしたゴミのようなもの(アテローム)が溜まっていきます。アテロームが溜まると血管が狭くなって詰まったり、はがれたアテロームが流れてその先の脳の血管を詰まらせてしまうことがあります。

      • 原因としては、動脈硬化を進めてしまう病気や生活習慣があり、高血圧1)、脂質異常症2)、糖尿病、喫煙3)などが関与しています。

    • 心原性脳塞栓症

      • これは主に、心房細動4)という不整脈が原因となる脳梗塞です。

      • 心房細動は不整脈の一種で、心臓が一定のリズムで血液を送り出さなくなってしまう病気です。心房細動があると、リズミカルに心臓の中を血液が流れず、左心房という心臓の部屋で血液が淀む(よどむ)ことがあります。血液は、一定以上のスピードで流れていないと固まる性質(凝固と呼びます)があり、血液が淀むと血液の固まり(血栓)ができます。それが脳まで流れて動脈に詰まってしまうと、脳梗塞が起こります。

      • 心房細動は高齢になればなるほど発症率が高くなることが知られている不整脈です。また、心房細動の中でも発作性心房細動という、「一時的な」心房細動もあり、この場合は健診などで心電図を検査しても発見されず、脳梗塞を起こして検査して初めて見つかる場合があります。

    • ラクナ梗塞

      • 主に加齢と高血圧1)が原因で起こる脳梗塞です。

      • 脳の中でも元々細い血管が、さらに細くなって詰まってしまった状態です。日本人には最も多いタイプの脳梗塞と言われています。血管が細くなる主な原因として高血圧が知られています。脳の細い血管が詰まるので脳梗塞を起こる部分もの小さいですが、場所によっては無症状の場合(脳ドックなどで偶然発見されることがあります)から、重い麻痺が出る場合まで様々です。

    脳梗塞で起こる、麻痺以外の症状についても教えて下さい。

    脳梗塞は上述の通り「体の片側の麻痺(運動麻痺、感覚麻痺)」で起こることが多いですが、脳の障害された部分の機能により、以下のような症状が出ることもあります。

    • 言葉が上手く話せない、理解できない(失語)
      • 言語野という部分が障害されると失語が起こります。
      • 多くの場合、言語や左側の脳にあります
    • 視野の片側が見づらい(半盲)
      • 右目で見ても左目で見ても、視野の同じ側が見えづらくなる状態です
      • 後頭部にある視覚野という部分が障害されると起こります
    • めまい
      • 脳の中でも小脳という部分が障害されると、突然の激しいめまいが起こります
      • ふわふわするめまい(動揺性めまい)やぐるぐるするようなめまい(回転性めまい)など、様々な形で起こります

    脳梗塞は脳が障害された部位により多様な症状が起こりうります。

     

    また、脳梗塞の範囲が広い場合や、生命維持に重要な「脳幹」に梗塞がおこった場合、意識障害や呼吸障害などの症状が現れる場合もあります。

    脳梗塞ではその他にどのような検査が重要ですか?

    脳梗塞であるとわかった後も、原因を探るために様々な検査を行います。主に以下のような検査になります。

    • 心電図
      • 心原性脳塞栓症の原因となる心房細動がないかどうかを確認します。短時間の心電図ですぐに見つかることもあれば、発作性心房細動の場合は、入院後に長時間の心電図(ホルター心電図)などを行って初めて見つかることもあります。
    • 頚部超音波検査
      • 首の動脈が動脈硬化によって細くなっている状態(頚動脈狭窄症)が脳梗塞の原因になることがあるため、超音波で首の動脈の状態を調べます。
    • 血液検査
      • 糖尿病がないか、脂質異常症がないか、その他治療を進める上で注意しなければいけない病気がないかなどを検査します。脳梗塞の治療では基本的に血液をさらさらにしたり固まりにくくする薬剤を使用しますが、それらの薬剤を使っても問題ないかといったようなことなどを、あらかじめ調べます。

    脳梗塞の治療で手術を行うことはあるのですか?あるとすればどのような手術を行うのですか?

    脳梗塞の治療に対して手術を行うことは多くはありませんが、患者さんの状態によって以下のような手術を行うこともあります。

    • 開頭減圧療法

      • 脳梗塞を起こした脳の部分は1-2日程度たつと腫れてしまいます(脳浮腫といいます)。大きく重症な脳梗塞が起きると脳浮腫も強くなりますが、頭蓋骨の内側の容積は決まっているので、頭蓋骨の中の圧力(頭蓋内圧)が高くなって脳が圧迫されてしまいます。この状況がひどくなると脳ヘルニアという状態になり、命に関わる状態になります。そのため、重症な脳梗塞の場合、頭蓋骨を一時的にはずし、脳が腫れても圧力の逃げ場があるようにする手術を行うことがあります。これが開頭減圧療法です。どのような人に手術を行うかは、ガイドラインで年齢(18-60歳)、重症度、脳梗塞の大きさ、発症からの時間(48時間以内)など様々な条件が設定されています1)

    • 血管内再開通療法

      • カテーテルと言われる細い管を、脳の血管の詰まっているところまで進め、血栓を溶かす薬(ウロキナーゼ)を流す治療です。但しこの治療は、発症から6時間以内に行える場合のみに推奨されており、4.5時間以内ではrt-PA療法が可能なことから、頻繁に行われる治療法ではありません。

    その他に、頚動脈内膜剥離術、頚部頚動脈血行再建術(ステント留置術)、バイパス術といった手術方法もありますが、その治療効果は未だ強くは立証されていません(これらの手術法の詳細については後述します)。

    脳梗塞の再発予防のための生活習慣病の治療について教えて下さい。

    生活習慣病の改善は脳梗塞の再発予防のために必須です。

    高血圧は脳梗塞にとって最大の危険因子であり、血圧160mmHg以上の場合、脳梗塞の発症リスクは約3.5倍にもなる1)と言われています。目指すべき血圧は、ガイドラインでは少なくとも140/90mmHg以下を目標とすることが推奨されています。

    糖尿病に関しては、ガイドライン上ではっきりと血糖コントロールをしなければいけないとの明示はされていません。ただし、糖尿病は脳梗塞だけではなく様々な病気の原因となりますので、基本的にその治療も行うことになります。

    脂質異常症に関しては、高用量のスタチン製剤を使用すること、または低容量のスタチン製剤とエイコサペンタエン酸(EPA)を使用することが推奨されています2)。LDLコレステロールの目安としては、120mg/dl以下に抑えることを目指すことが多いです。

    脳梗塞は遺伝する病気ですか?

    脳梗塞は遺伝性の病気ではありません。ただし、脳梗塞になりやすい体質(高血圧や糖尿病、脂質異常症など)が引き継がれる場合があります。従って、親族(特に両親)が脳梗塞を発症した方は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの病気になりやすい可能性があるので、定期的な検査などが勧められます。

    脳梗塞の再発予防のための、生活習慣病治療以外の治療について教えて下さい。

    生活習慣病の治療に加えて重要なのが、抗血小板療法と抗凝固療法です。

    • アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の再発予防には、抗血小板薬(シロスタゾール、クロピドグレル、アスピリン)を使用します。
    • 心原性脳塞栓症の再発予防には抗凝固薬(ダビガトラン1)、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ワーファリン)を使用します。

    また再発予防に手術を行うこともあります。

    • 重度の頚動脈狭窄症があり、抗血小板療法だけでは不十分と判断された患者さんの場合、頚動脈内膜剥離術(CEA)や頚動脈ステント留置術(CAS)を行うことがあります。
    • また、脳の大きな動脈が細くなったり詰まったりしている場合には、頭表面の動脈を別の動脈につなぐ手術(EC-ICバイパス術)を行うことがあります。

    これらの手術は熟達した術者と施設で行われることが推奨されています。

    家族の認知症が、実は脳梗塞なのではないか心配です。見分ける方法はありますか?

    もし、ある日を境に急に認知症が進んだのであれば、脳梗塞などの脳卒中の可能性はあるかもしれません。

    逆に、数ヶ月や半年以上かけて徐々に進んでくる認知症については、脳卒中の可能性が低いと考えられます。ただし、徐々に進行するものであっても、脳腫瘍や水頭症などが認知症の原因となることもあるため、認知症の治療について相談する意味も兼ねて、心配があれば一度病院を受診するという選択肢は、悪くないかもしれません。

    脳ドックで、古い脳梗塞の跡があると言われました。どういうことでしょうか?

    脳梗塞の起こった場所が、脳の中でも大事な働きをしていない場所であるときや、梗塞が小さい場合には、脳梗塞であっても何の自覚症状も出ないことがあります。

    それらが脳ドックの際にたまたま見つかると、「古い脳梗塞の跡」と言われることがあります。急ぐ必要はありませんが、一度脳梗塞を起こしているということは、他の部位に新しく脳梗塞が起こり得るということでもあるので、程度によっては脳ドックに引き続き、精査のための病院受診を勧められることがあります。

    ただし、小さな脳梗塞の跡は、加齢に伴ってかなりの割合の人にある程度見られるものです。医師と相談の上で、すぐに精査や治療を行う必要性が低いということであれば、不必要に心配しすぎることもありません。

    脳梗塞によって起こった麻痺などの症状は回復するのですか?

    脳梗塞が発症した時点で麻痺などの症状がある場合には、後遺症が残すことが多いです。これは、治療をしても一度障害を受けて死んでしまった脳細胞が回復することがないためです。

    ただしリハビリテーションを継続することで、脳の他の部分の細胞が、死んでしまった細胞の機能を一部補うなどの変化が起こり、症状の改善が見込めます。従って脳梗塞の治療としては、再発を防ぐ最善の努力を行いながら、後遺症に対してリハビリテーションを継続することを目指すこととなります。

    軽症の場合には、リハビリも奏効して発症前とほとんど同じように、不自由なく生活に戻れる場合もあります。

    脳梗塞で入院しましたが、リハビリ以外の治療はないと言われました。本当にそのようなことがあるのでしょうか?

    「治療」という言葉が、脳梗塞による麻痺などの症状を「治す」という意味の場合には、そのような言い方になることもあるのかもしれません。脳梗塞によって出てしまった神経症状を、元通りに完治させる薬や手術法は現時点ではないからです。

    しかし脳梗塞の再発を予防するために、点滴や内服薬を使用することも、広い意味では治療に含まれますし、こちらも大切なことです。

    脳梗塞による入院期間はどのくらいですか?

    症状がない、もしくは軽い場合には、脳梗塞の原因を探る検査や、飲み薬の開始などを目的とした数日間のみの入院のこともあります。

    重症の場合には長期のリハビリが必要となることが多く、1-2ヶ月の入院となるかもしれません。

    また、病院には大きく分けて急性期型の病院と療養型の病院があります。どちらが優れているというものではなく、病気の時期に応じてそれぞれを利用し分けることが想定されています。例えば脳梗塞を起こしてすぐの段階で入院するのは急性期型の病院ですが、その後に長期的なリハビリテーションを行うのは療養型の病院です。入院の途中のタイミングで、急性期型病院から療養型病院へ転院して、更に入院を続けることも珍しくありません。

    脳梗塞が命に関わることはありますか?

    脳梗塞の範囲が大きい場合には、発症してから数日間で脳が腫れてきて、脳ヘルニアとなり命を落とすことがあり得ます。それを防ぐために手術で頭蓋骨に穴を空ける(開頭術)ことがあります。

    また、脳梗塞で障害を受けた脳の部位に、新たな脳出血が生じてしまうこともあり、こちらが元で亡くなってしまう場合もあります。

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