[医師監修・作成]脳梗塞のリハビリテーションについて:歩行訓練、日常生活動作、バランス練習、装具療法など | MEDLEY(メドレー)
のうこうそく
脳梗塞
脳の血管が詰まって結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、脳細胞が壊死すること。運動・感覚の麻痺などを起こし、後遺症による寝たきりや死亡にもつながる
21人の医師がチェック 438回の改訂 最終更新: 2022.04.11

脳梗塞のリハビリテーションについて:歩行訓練、日常生活動作、バランス練習、装具療法など

脳梗塞を起こした人には後遺症が残ることがあります。その後遺症を軽くして上手く付き合っていくためにはリハビリテーションが欠かせません。このページでは脳梗塞後のリハビリテーションの内容や疑問などについて説明します。

1. 脳梗塞のリハビリテーションの目的

脳梗塞を発症すると、脳細胞が死んでしまい、その部分が担っていた役割が失われることがあります。その結果、「手足の麻痺(まひ)」「歩行障害」などの症状があらわれます。脳梗塞が起きた部分は元通りにはなりませんので、このような症状とはその後も後遺症として付き合っていくことになります。

脳梗塞のリハビリテーションは、後遺症を最小限に止めるという目的や、失われた機能を脳の他の部分で補うという目的・残された機能を生かして生活の質を向上させるという目的で行われることになるのです。

リハビリテーションはいつから始めるのか

リハビリテーションの開始時期は発症後すぐから始められることが多いです。できるだけ早期から身体を動かすことで、深部静脈血栓症褥瘡(じょくそう)、誤嚥性肺炎といった、安静によって引き起こされる合併症を防ぐ効果があります。

リハビリテーションとともに栄養摂取も大切である

脳梗塞で入院した際に栄養状態が良くない人は、その後の経過が悪くなりやすいという報告があります。そのため、栄養状態が悪い人などには通常の食事より多くのカロリーやタンパク質を補給することが勧められています。

ただし、脳卒中では飲み込み(嚥下)の障害が起こる場合があります。嚥下障害があると、食べ物が肺に入ってしまい感染のもとになる「誤嚥性肺炎」にもつながる恐れがあります。

そのため、嚥下の状態が悪く、口から食べることが危険と見られる人では、経鼻胃管(鼻から挿入するチューブ)を通すなどの方法で栄養を補給します。 誤嚥性肺炎は高齢者にとっては代表的な死因のひとつなので、栄養補給と誤嚥の予防を両立する必要があるのです。

参考文献
Yoo SH, et al. Undernutrition as a predictor of poor clinical outcomes in acute ischemic stroke patients. Arch Neurol. 2008 Jan;65(1):39-43.

2. 脳梗塞のリハビリテーションにはどんな方法があるのか

脳梗塞の症状は非常に多様なので、それに応じたリハビリテーションの方法もまた多く存在します。同じような症状であっても、専門家によって行う内容が異なることもよくあります。また、標準化されたリハビリテーション手法が少ないという現状もあります。

本ページでは、脳梗塞のリハビリテーション方法として、代表的なものをいくつか挙げていきたいと思います。基本的に紹介するリハビリテーション方法は、「脳卒中治療ガイドライン2021」に掲載されているものになります。

歩く練習

足に運動麻痺が起こると、歩行が困難になる場合があります。日常生活を円滑に送る上で、歩行能力の回復は大切になってくるので、麻痺の程度や状態にあわせて、歩く練習を行います。

歩く練習では、麻痺した機能を補うために装具を着けて行うことがあります。装具を利用することの重要性は、脳卒中治療ガイドライン2021にも記載されています。

ただし、病院によっては、「装具は麻痺した機能の回復を遅らせるため使用しない」と考えている場合もあります。装具を使わない場合には歩く量が少なくなってしまったり、変な足のつき方をして足を痛めたりする可能性もあるので、難しいと感じた場合には装具の使用を相談してみてください。

装具の適用は重症度などによりますが、少なくともつま先を上に持ち上げることができない人は、まずは装具を着けて歩く練習をすることをおすすめします。

また、麻痺が軽めの人は、歩く距離や量を確保することも大事です。連続してどのくらい歩けるか、安全に歩けるかといった視点でリハビリテーションは進みます。自宅に戻ってから自分の足で歩いて生活できると見込みが高い人では、屋内だけでなく屋外を歩く練習も必要になってきます。屋外の道は思いのほかデコボコとしているため、屋内よりも注意しなければなりません。その分、よりしっかりとした訓練や注意力を磨くことが望まれます。例えば、脳梗塞を発症する前には気づかなかったような小さい段差などには注意する必要があります。

基本動作の練習

脳梗塞のリハビリテーションでは、基本動作の練習を行うこともあります。基本動作とは、寝返る・起き上がる・座る・立ち上がる・立ち続けるといった動作のことを指します。基本的な動作はすぐにでもできそうなものだと感じるかもしれませんが、脳梗塞の発症により麻痺した手足や体幹を上手に使えないと、起き上がったり、立ったりといった基本的な動作さえ難しくなるのです。

基本動作の練習では、障害されている側の動作の練習を反復して行います。動作自体ができていても、その動きの滑らかさが不十分なほうでは、より上手にできるように練習をすることになります。

日常生活動作の練習

脳梗塞のリハビリテーションで大事な練習のひとつに、日常生活動作の練習があります。日常生活動作とは、トイレ・入浴・階段の昇降・食事など日常的に欠かせない動作のことを指します。

運動麻痺や感覚麻痺、注意障害などの症状があると、日常生活動作を円滑に行うことが難しくなります。そのため、苦手な動作を反復して行うことに加えて、「自助具」と呼ばれる動作を補助してくれる器具や、手すりを使いながら、練習を続けます。

また、退院後に自宅での生活がしやすくなるように、家屋の改修を検討することがあります。スロープや手すりの設置、段差の解消などです。このような場合は、改修後の家での生活を想定した練習を行います。

その他にも、調理の練習や公共交通機関を使う練習などその人の必要性にあった訓練を行います。

話す、聞く、摂食・嚥下のリハビリテーション(言語聴覚療法)

話す・聞く・注意を向けるといった機能の改善を目的としたリハビリテーションもあります。これを担当するのは言語聴覚士です。また、食べ物や飲み物を飲み込むという機能(嚥下機能)のリハビリテーションを行う場合も、言語聴覚士が担うことが多いです。

言語聴覚療法では、脳梗塞の発症後に言葉をうまく話せるように練習したり、コミュニケーションをとる練習をします。嚥下障害に対しては、食べ物を細かく切ったり、飲み物にはトロミをつけるといった工夫をしながら、食べたり飲んだりの練習をします。

バランス練習

脳梗塞を発症すると、手足・体幹の運動麻痺や感覚麻痺やバランス機能の障害により、動作時にバランスを崩しやすくなります。

そのような症状に対して行うリハビリテーションとして、バランス練習があります。例えば、座っている状態から横に手を伸ばしても倒れないように保っている練習や、床に置いてある物を屈んでとる練習などがあります。

以上が基本的なリハビリテーション方法です。さらに、これらを補う形で有効であることが示されているリハビリテーション方法があるので、続けて説明します。

自転車エルゴメーター

運動麻痺や筋力の低下に有効であると考えられているリハビリテーションとして、自転車こぎがあります。自転車エルゴメーターとも呼ばれていて、その場でペダルを回すけれども移動はしない自転車です。スポーツクラブによく置いてあります。

自転車エルゴメーターのメリットは、麻痺した側の足、麻痺してない側の足のどちらも鍛えられるということです。また、自転車をこぐ時の筋肉の活動が、歩く時の筋肉の活動と似ているという報告があり、そのことから歩行にもつながる練習方法として注目されています。もちろん、スポーツクラブで使われているように、持久力を高める練習としても行われます。

トレッドミル

こちらも、スポーツクラブに置いてあるランニングマシーンを想像してもらえると良いと思います。脳梗塞を発症した後のリハビリテーションとして、トレッドミルの上を歩く練習方法が効果的な場合があります。

ただし、うまく歩けない人にとって、勝手に床が動くトレッドミルの上を歩くのは怖いと思いますし、転倒の恐れなどを考えると危険です。そこで、ハーネスと呼ばれる安全装置のようなものを装着して、転ばないように練習することができます。ハーネスを装着すると、体重をの負荷を減らすこともでき、その状態で歩くと、歩行能力も改善することが報告されています。

電気刺激療法

歩く練習や立ち上がる練習、手・腕・肩を使った動作(例えば、机の上のものをとるような動作)を行うリハビリテーションの際に、電気刺激を補助的に行うと動作の改善が図れるという報告があります。電気刺激療法では手足の皮膚に電極を貼って筋肉や皮膚を刺激します。また、脳梗塞を発症した後に手足が硬くなってしまう痙縮(けいしゅく)という状態に対して、電気刺激を行うとその硬さが改善するということも言われています。

このような電気刺激の方法とは別に、頭に電気刺激を行う「経頭蓋直流電気刺激」という方法もあります。非常に微弱な電流を頭皮に流して、脳の活動を変化させるというものです。また似た方法として、「経頭蓋磁気刺激」という方法があります。こちらは電気ではなく時期を用いて頭皮上から刺激を行います。いずれも、現在研究が進んでいるリハビリテーション方法です。

経頭蓋磁気刺激を実践している病院は比較的多いのですが、経頭蓋直流電気刺激は専用の機械を有していない病院も多いことから、その病院によって行えるかどうかは変わります。

装具療法

歩く練習のところで簡単に説明した装具を用いた療法が「装具療法」です。脳梗塞のリハビリテーションではよく行われます。リハビリテーションを行っている病院であれば院内に装具が準備されているので、どこでも受けられるリハビリテーションと考えてもらって良いです。退院後も装具を使う場合は、専門の装具屋さんが病院を訪問して、一人ひとりにあった装具を作ります。

脳梗塞で使用する足の装具は大きく分けて2種類です。ひとつは、足首を安定させる短下肢装具というものです。もうひとつは、長下肢装具というもので、足首から膝までしっかり安定させられる装具です。はじめは長下肢装具を使って、のちに短下肢装具にすることも可能です。重症度や症状によって使い分けることが大事です。

装具を作るという話が出ると、嫌な思いをされる人も多いと思います。しかし、何も装着しないでバランスがとれず練習にならないよりも、まずは装具を使ってみて、ある程度症状を見ながら、使い続けるかどうかの最終的な検討をするのが良いでしょう。

リハビリテーションのバリエーションについて

ここまでで紹介した以外にもさまざまなリハビリテーションの方法があります。しかし、根拠に乏しい方法も多く、スタッフが経験のみで選択している手法もありますので、自分にあったリハビリテーションをするには、どのような効果が見られるのかよく聞き、納得するようにしてください。

また、上記に紹介した方法であっても、脳梗塞が起きた部位や重症度によって選択肢が異なります。例えば、小脳梗塞や脳幹梗塞といった種類の脳梗塞では、バランスの問題が起きたり、失調と言って思うように手足を滑らかに動かせない症状が特徴的に見られます。そのような症状に対しては、バランスの練習を重点的に行うなど、臨機応変に選択されることがほとんどです。

3. 脳幹梗塞と小脳梗塞のリハビリテーション

脳幹梗塞や小脳梗塞の後遺症はリハビリテーションで改善する可能性があります

【脳梗塞の主なリハビリテーション】

  • 歩く練習
  • 基本動作の練習
    • 寝返る
    • 起き上がる
    • 座る
    • 立つ
  • 日常生活動作の練習
    • トイレ
    • 入浴
    • 階段の昇り降り
    • 食事
  • 話す、聞く、飲み込むことのリハビリ(言語聴覚療法)
  • バランス練習

特に、小脳梗塞のリハビリとして次のものを行います。

【小脳梗塞で重点的に行われるリハビリテーション】

  • 目的とする動作の反復訓練
  • 患部の安定を確保
  • 体幹トレーニング
  • 治療的電気刺激

詳しくはコラム「めまい、頭痛、吐き気・・・小脳梗塞の症状とリハビリについて解説」をご覧ください。