2016.11.07 | ニュース

放射線治療が余命を縮める?肺非小細胞がんの手術後の治療

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

放射線治療が余命を縮める?肺非小細胞がんの手術後の治療の写真

がんの放射線療法はさまざまな場面で使われ、効果を現しています。しかし、肺がんの一種に対して手術後に放射線療法を行ったとき、これまでの研究データからは余命が短くなっていることが報告されました。

ここで紹介する研究は、文献を集める方法で、肺非小細胞がんに対する手術後の放射線療法の効果としてこれまでに報告されている結果を調査したものです。

非小細胞がんは肺がんの一種です。化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法が比較的効きにくく、できるだけ手術する方が治療結果が良いとされます。

 

研究班は、非小細胞がんに対して、手術と術後放射線療法で治療するか、術後放射線療法はなしで手術をするかで比較した研究報告を集めました。

解析に適した11件の研究が見つかりました。データを統合すると、次の結果が得られました。

結果はPORTによって生存率に有意に有害な影響があり、ハザード比1.18、すなわち死亡のリスクが相対的に18%増加した。これは悪化の絶対量としては2年時点の生存率5%(95%信頼区間2%-9%)に等しく、全生存率を58%から53%に減らす。

術後放射線療法をしなければ手術後2年の生存率は58%でしたが、術後放射線療法をしたときは53%に下がっていました。

この結果から、研究班は結論として「術後放射線療法は完全に切除された非小細胞肺がんの患者には有害であり、ルーティンの治療において使われるべきでない」と述べています。

 

ここで紹介した結果は、非小細胞がんの手術後に限って当てはまります。同じ非小細胞がんでも手術できない場合には当てはまりません。脳腫瘍や乳がんなど、肺がん以外のがんにも当てはまりません。

放射線療法はある種のがんには高い効果を発揮し、余命を伸ばします。また、がんが骨に転移すると激しい痛みを起こしますが、放射線療法によって痛みを抑えることもできます。しかし、放射線療法を使うべき場面は適切に選ばなければなりません。

対象を特定して治療効果を実際の結果から評価していくことで、どの治療法が適しているかをより確かに判断できるようになります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Postoperative radiotherapy for non-small cell lung cancer.

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Sep 29. [Epub ahead of print]

[PMID: 27684386]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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