2015.07.01 | ニュース

手術ができない肺がんの新たな治療法を目指して、非小細胞がんの重粒子線治療

東大チームの第I/II相試験
from Cancer
手術ができない肺がんの新たな治療法を目指して、非小細胞がんの重粒子線治療の写真
(C) sakkmesterke - Fotolia.com

非小細胞がんという種類の肺がんの治療には、手術のほか化学療法や放射線療法がありますが、全身の状態によってこれらが使えないこともあります。それに代わる候補のひとつに、特殊な放射線を使う重粒子線治療があります。東京大学の研究班が非小細胞がん患者に重粒子線治療を試み、がんの進行度がある範囲にあった人に対しては2年間の生存率が7割近いなどの結果を得ました。

◆重粒子線治療とは

普通の放射線療法で使われるX線やガンマ線とは違う性質の放射線である「重粒子線」を使った治療法です。普通の放射線療法よりも狙った場所に集中して働き、強い効果でがん細胞を壊すことを期待されています。日本で数か所の施設でだけ行われています(2015年6月時点)。

 

◆非小細胞がん患者に対する用量漸増試験

研究班は次のように重粒子線治療を行いました。

ステージIIAからIIIA(UICC第7版による)の局所進展非小細胞肺がんの患者が、連続する第I相および第II相の試験に登録された。第I相の用量漸増試験において、照射総量は4GyEずつ2段階、69GyEから72GyEへ、また76GyEへ、4週間に16分割で追加された。

この研究は「第I相」と呼ばれる段階と、「第II相」と呼ばれる段階の2段階を続けて行われました。対象者はどちらも非小細胞がんの患者で、第I相の対象となった人は、重粒子線の照射量を少しずつ増やして、副作用が現れないかを調査されました。

 

◆第II相で2年全生存率69.3%

第I相試験から次の結果が得られ、続けて第II相試験が行われました。

第I相試験において治療された36人の患者のうち、76GyE群でグレード3の有害事象が2人(放射線肺臓炎と気管食道)に見られた。それを受けて、第II相試験においては、次の26人は72GyEで治療され、結果としてグレード3から5の有害性は見られなかった。

第I相試験で用量を大きくしたときに、副作用と見られる放射線肺臓炎、気管食道瘻という有害な結果があったので、効果を確かめる第II相試験ではそれより少ない用量が使われました。

第II相試験から次の結果が得られました。

特に、cT3からcT4でN0の患者は、2年全生存率が69.3%、2年局所制御率が100%と、優れた予後を得た。

がんの大きさが7cmを超える、または隣り合う臓器にまで広がっているなどの場合にあたる「cT3」および「cT4」であって、周りのリンパ節にがん細胞がない「N0」という場合に当てはまった人では、治療開始から2年間の生存率が69.3%でした

 

結果が示されたcT3N0またはcT4N0の非小細胞がんに対して、従来の治療では2年間の生存率が5割から7割程度と言われています。正確に評価するには別の試験の結果を見る必要があります。重粒子線治療はほかにもさまざまな種類のがんに対して効果を試されつつあり、今後広く使われることになるかどうか、期待を受けています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

A prospective nonrandomized phase I/II study of carbon ion radiotherapy in a favorable subset of locally advanced non-small cell lung cancer (NSCLC).

Cancer. 2015 Apr 15

 

[PMID: 25641119]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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