日本人に肺がんの薬セリチニブは安全か?

がん細胞はさまざまな遺伝子の異常を持っています。セリチニブは、「ALK融合遺伝子」という特定の遺伝子異常を持つがんを狙った治療薬です。日本人患者を対象に、効果を調べるのに先立って安全性を確かめた結果が報告されました。
◆セリチニブの用量を変えて飲む
セリチニブは、アメリカでは2014年に承認されています。
この研究では、日本人を対象に、ALK融合遺伝子を持っている
対象者として、以前に標準的な治療を受けたにもかかわらずがんの進行があった成人患者20人が集められました。20人のうち19人はALK融合遺伝子のある非小細胞がん、1人はALK融合遺伝子のある
対象者は用量を徐々に増やしながらセリチニブの飲み薬を使い、適切な用量を検討されました。
◆最大1日750mg
次の結果が得られました。
用量制限を必要とした毒性が2件発生した。1件はグレード3のリパーゼ上昇(600mg)、1件はグレード3の薬剤誘発性肝障害(750mg)だった。最も多く見られた有害事象は胃腸のもの(吐き気:95%、下痢・嘔吐:75%)だった。
全体での応答率は55%(患者20人のうち11人)だった。
副作用が現れた結果、用量を減らすことが2件起こりました。1件ではセリチニブを1日600mg使用中に、膵臓の状態を反映するリパーゼの検査値が上昇しました。もう1件では、セリチニブを1日750mg使用中に、肝臓の障害が起こりました。吐き気は対象者の95%、下痢・嘔吐は対象者の75%に起こりました。
何らかの治療効果が、20人のうち11人で見られました。
研究班は「日本人患者において、セリチニブの最大耐用量は1日1回750mgだった」と結論しています。
セリチニブは2015年6月には日本でもALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療として承認申請されています。それにはこうした研究で検証された安全性が前提になっています。今後の治療でセリチニブが使われるようになるとすれば、ここで報告された副作用などの情報は、注意が必要な点を知るために役に立ちます。
執筆者
Phase I Study of Ceritinib (LDK378) in Japanese Patients with Advanced, Anaplastic Lymphoma Kinase-Rearranged Non-Small-Cell Lung Cancer or Other Tumors.
J Thorac Oncol. 2015 Jul.
[PMID: 26020125]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。