2016.03.26 | コラム

副作用は胃痛、胸やけだけじゃない!? ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン® など)について

NSAIDsは咳、腎臓、イレウスなどにも注意が必要?な理由について
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鎮痛薬の中でも特に多くの人に使われているロキソプロフェンナトリウム(商品名:ロキソニンなど)。解熱・鎮痛・消炎などの効果をもち、医療用医薬品のみならず市販薬としても販売され多くの人の健康維持に貢献していますが、副作用もあります。

◆ロキソプロフェンナトリウムとはどのような薬剤なのか?

ロキソプロフェンナトリウム(ロキソプロフェンナトリウム水和物)は「ロキソニン®」などの名称で臨床現場において非常に広く使われている薬剤です。市販薬ではロキソニンS®ロキソニンSプラス®があります。内服薬だけでなく、貼り薬や塗り薬など外用薬の主な成分としても使われていることもあり、多くの人の健康維持に貢献している薬剤と言えます。

ロキソプロフェンナトリウムはいわゆる「痛み止め」に分類される薬剤ですが、どのような作用の仕組みによって効果をあらわすのでしょうか?

ロキソプロフェンナトリウムは「痛み止め」の中でも非ステロイド性抗炎症薬(通称:NSAIDs(エヌセイズ))に分類される薬剤の一つです。NSAIDsにはロキソプロフェンナトリウムの他、アスピリン(アセチルサリチル酸)、インドメタシンなど多くの薬剤があり色々な用途で使用されています。

NSAIDsは主に体内の痛みや炎症、発熱などを引き起こすプロスタグランジン(PG)という物質の生成を抑えることでその効果をあらわします。

もう少し詳しくみていくと、NSAIDsはアラキドン酸という物質をPGへ変換するために必要なシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することで、結果としてPGの生成を抑えます(図1、2)。

図1 炎症が起こるしくみ アラキドン酸がCOXの作用によりプロスタグランジンに変化することで、痛み・炎症・発熱が起こる

図1 炎症が起こるしくみ

図2 NSAIDsが炎症を抑えるしくみ NSAIDsはCOXの働きを阻害し、プロスタグランジン生成を抑えることで痛みや炎症を抑える

図2 NSAIDsが炎症を抑えるしくみ

 

これによって鎮痛・抗炎症・解熱などの作用をあらわし、NSAIDsの一つであるロキソプロフェンナトリウムは関節炎、腰痛症、歯痛、急性上気道炎による解熱・鎮痛など多くの用途で使われる薬剤となっています。

 

◆ロキソプロフェンナトリウムの注意すべき副作用とは?

NSAIDsの中でもロキソプロフェンナトリウムは一般的に鎮痛などの効果が比較的高く、適切に使用している場合では安全性もまずまず高いとされ、それが臨床上広く使われている理由の一つになっています。

しかしもちろん副作用が全くないわけではなく、使う人の体質などによっては重篤な副作用があらわれる可能性もあります。ここでは主に内服薬のロキソプロフェンナトリウムで注意すべき副作用についていくつかを例にとってみていきます。

 

◎消化器症状

「痛み止め」というと多くの人が「胃腸への負担」を想像するかもしれません。実際にロキソプロフェンナトリウムなどほとんどのNSAIDsには胃痛や腹痛、胸やけなどの消化器症状があらわれることが少なからずあるため、消化器症状が「痛み止め」の副作用の代名詞となっているのかもしれません。

飲み薬が胃に入ってから胃の粘膜などを攻撃する…というイメージが浮かぶかもしれませんが、例えばNSAIDsの坐剤(製剤例:ボルタレン®サポ など)でも消化器症状がおこる可能性があります。飲み薬ではないのに胃腸に負担がかかるのはなぜでしょうか?これには先ほどのNSAIDsの作用の仕組みが大きく関与しています。

NSAIDsは主にCOXという酵素を阻害することにより鎮痛作用などをあらわしますが、COXは胃の粘膜増強因子などの生成にも関わっています。そのため、NSAIDsの使用→COX阻害→胃粘膜増強因子抑制 といった順により消化器症状があらわれるとされています(図3)。

図3 PG生成が抑えられることによる副作用 PGは炎症以外の働きもあるので、NSAIDsによりPG生成が抑えられることでさまざまな副作用があらわれる

図3 PG生成が抑えられることによる副作用

 

実際に胃潰瘍などの消化性潰瘍の原因は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の次に多いのがNSAIDsではないか、と思えるほど、NSAIDsによる消化器症状はよく目にします。

また「NSAIDsによるCOXの阻害」は消化器症状だけでなく、他の注意すべき副作用にも関わっています。

 

◎呼吸器症状

アスピリン喘息」という言葉があります。これはNSAIDsの一つであるアスピリンによって引き起こされる喘息のことを示した言葉です。アスピリンだけに限ったことではなく、NSAIDsに分類される多くの薬剤によって喘息などの気管支症状が引き起こされる可能性があるとされています。

NSAIDsはアラキドン酸から変換されるPGの生成を抑え、鎮痛・抗炎症・解熱作用などをあらわします。しかしアラキドン酸はPGを生成するだけでなく他の体内伝達物質を生成する材料にもなります。NSAIDsによりPGの生成が抑えられると、本来PGへと変換されるはずのアラキドン酸が余るため「他の体内伝達物質」が余計に生成されることになるのです。この「他の体内伝達物質」の中にロイコトリエン(LT)という物質があり、これが気管支収縮作用などをあらわします。

つまり、NSAIDsの使用→ロイコトリエンの生成促進→気管支収縮 ということがおこり、気道が狭まり喘息などの気管支症状が引き起こされる可能性が生じます(図4)。

図4 ロイコトリエンの生成が促されることによる副作用 PG生成が抑えられるとLTの生成が促され、さまざまな副作用があらわれる

図4 ロイコトリエンの生成が促されることによる副作用

 

ロキソニンなどのNSAIDsの使用により喘息発作が引き起こされることは非常に稀とされていますが、元々持病で何らかの慢性的な呼吸器疾患をもつ場合は特に注意が必要となります。アスピリン喘息の既往歴をもつ場合は原則としてロキソプロフェンナトリウムは使用禁忌(禁止)となっています。

 

◎腎機能症状

NSAIDsの使用は腎機能へ影響を与える可能性もあります。NSAIDsは主にPGの生成を抑えることで作用をあらわしますが、PGは血液の流れなどにも関わっている体内物質になります。PGの中でも特にPGE2は腎機能において腎血流量や糸球体濾過(血液中の老廃物などをこしとる)、物質の出入りなどに影響を与える物質です。このためNSAIDsの使用により、腎血流量、糸球体濾過率低下、浮腫むくみ)など腎機能への障害やそれに伴う症状が引き起こされる可能性が生じます。

具体的にはNSAIDsの使用により急性腎障害急性腎不全)、高カリウム血症、間質性腎炎、ネフローゼ症候群などといった問題があらわれる可能性があります。

薬剤を適切に使用している場合ではこれらの症状があらわれることは非常に稀とされていますが、元々腎機能が低下している場合などでは特に注意が必要とされています。

 

今回はロキソプロフェンナトリウムを例としてNSAIDsの注意すべき副作用についていくつかの例を挙げてみていきました。

この他にも過敏症、うっ血性心不全肝機能障害など頻度は非常に稀とされていますが注意すべきことは少なくありません。最近(平成28年3月22日)では注意すべき副作用(医療用医薬品の添付文書における重大な副作用)に新たに「小腸・大腸の狭窄・閉塞」が追記になりました。これは直近3年度の国内副作用症例の集積状況からロキソプロフェンナトリウムの経口剤を使用した中で小腸・大腸の狭窄・閉塞関連症例6例が報告され、そのうち因果関係が否定できない症例が5例あったことによる改訂です。

もちろんロキソプロフェンナトリウムは医療用医薬品、一般用医薬品として広くまた多くの人に使用されている薬剤であり、有用性が非常に優れた薬剤の一つと言えます。

但し、薬剤である以上は副作用がゼロということはありませんし、頻度は稀ではありますが特に注意すべき重大な副作用も存在します。

また副作用の度合いや出現の有無などは使う人によっても大きく異なる場合があります。持病が何もない人に比べれば、元々胃が弱く胃炎になりやすい、持病で喘息をもっている…などの人はロキソプロフェンナトリウムを使用するにあたって特に注意が必要となります。

もちろんNSAIDsの中には消化器へ負担のかかりにくい薬剤や呼吸器へ負担がかかりにくい薬剤もあり、場合によってはこれらの薬剤を選択することも可能です。必要に応じて医師や薬剤師などに相談し、副作用に注意しつつ自身に合う薬剤を適切に使うことが大切です。

 

参考情報:文中で登場した薬については、こちらのページに詳しい情報を掲載しています。

執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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