2016.02.15 | コラム

片頭痛(偏頭痛)の治療薬の効果と副作用など

片頭痛の一般的な知識とともに
片頭痛(偏頭痛)の治療薬の効果と副作用などの写真
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この記事のポイント

1. 片頭痛の特徴は?
2. 片頭痛発生時の治療薬
3. 片頭痛の予防薬
4. 慢性頭痛に対するその他の注意

片頭痛はあまりの痛みに動けなくなったり、吐き気や嘔吐を伴い日常生活に大きく支障をきたすこともあります。特に30代女性の約20%に片頭痛の症状があるとされています。ここでは片頭痛の特徴、治療薬について解説します。

 

◆ 片頭痛の特徴は?

片頭痛は、頭の片側のこめかみから眼にかけて脈打つようにズキズキ痛む(拍動性)ことが特徴です。ただし国際頭痛学会による診断基準では、頭の両側が痛んでも、拍動性がなくても、片頭痛と診断される場合があります。

痛みは通常4時間から72時間にわたって続き、吐き気や嘔吐を伴い、動くと痛みが増すことから寝込んでしまうことで、生活に支障をきたす場合もあります。また痛みだけでなく、いつもより光が眩しく感じる、音がうるさく感じるなどの症状を伴うこともあります。

 

片頭痛は「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」に大きく分かれます。

 

前兆のある片頭痛の場合、片頭痛発作が起きる前に視界にキラキラした閃光(閃輝暗点)が現れたり、移動する線が見えたり、視野の一部が見えにくくなるなどの視覚症状、手や顔にチクチクした違和感があらわれるなどの感覚症状、しゃべりにくくなる失語性言語障害があらわれることもあります。中でも視覚性前兆が最も一般的とされています。

 

片頭痛のおこる仕組みはハッキリとは解明されていませんが、神経の作用に関わる一酸化窒素、ヒスタミンセロトニン、グルタミン酸、ドパミン、オレキシン、カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの物質の関与が疑われています。

 

また、片頭痛発作は特定の状況で起こりやすいと自覚されている場合があります。日常生活のストレスや睡眠不足、アルコール、天候の変化(気圧)、女性の場合は生理周期などが、片頭痛の誘発因子となる可能性があるものです。また、ワイン、チョコレート、チーズなど、血管の収縮・拡張に影響すると考えられる飲食物が発症のきっかけになると感じている人もいます。

 

◆ 片頭痛発作時の治療薬

片頭痛治療には急性期治療と予防療法があります。ここでは急性期治療(片頭痛発作時)に使う薬に関してみていきます。

 

急性期治療では片頭痛発作や随伴症状(付随しておこる二次的合併症状)をすぐに取り除くことを目的とします。代表的な治療薬を以下に示しました。

 

  • アセトアミノフェン

  • ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs

  • エルゴタミン製剤

  • トリプタン製剤

  • 制吐薬

 

薬剤の選択に関しては、症状や治療方針などによっても異なりますが、一般的には片頭痛の重症度に応じて選択していく方法が推奨されています。

 

アセトアミノフェン(主な商品名:カロナール®、コカール® など)

安全性が高く安価(薬価が安い)で主に軽度〜中等度の片頭痛発作に効果が期待できます。

アセトアミノフェンは市販薬の成分としても使用されていて「ノーシンAc」などの主成分となっています。(同じ「ノーシン」の名称をもつ市販薬にはアセトアミノフェン以外の成分を使用した製剤があります)。

アセトアミノフェンは一般的な「痛み止め」とはやや異なる作用により痛みや熱などを和らげる薬で、主に中枢に作用するものとされ、末梢の感覚を大脳に伝える視床と大脳皮質に作用して痛みなどを抑える作用をあらわすとされています。

次に説明するNSAIDsと比較すると、一般的に抗炎症作用は劣るとされますが、胃腸障害や呼吸器系などの副作用が少ないとされ、小児から高齢者まで幅広い年齢層に対して使用できるのもメリットです。

 

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(主な商品名:ロキソニン®、セレコックス® など)

主に軽度〜中等度の片頭痛発作に効果が期待できます。体内で痛みや炎症などに関わるプロスタグランジン(PG)という物質の産生に関わる酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX)を阻害することで痛みや炎症などを抑えます。

 

COXには、COX-1、COX-2などのタイプがあります。

COX-1は胃粘膜や腎臓、血管内皮細胞など全身に分布していて、胃粘膜保護や腎臓の血流改善などに関わります。一方、COX-2は何らかの炎症が起きた時に誘導され、痛みや炎症などに関わるPGの産生に関わります。

 

通常、ロキソプロフェンナトリウム(主な商品名:ロキソニン® など)やアスピリン(主な商品名:バファリン®配合錠A330など)などのNSAIDsを服用するとCOX-1とCOX-2の両方が(少なからず)阻害され、痛みなどを抑える反面、胃腸障害や腎機能障害などの副作用に注意が必要となります。そのため薬の量や回数などは原則として処方医の指示に従い適切に使用することが重要です。また薬剤の種類や時期にもよりますが、妊婦中の女性が服用すると胎児に影響が出る可能性もあり注意が必要です。ほかにも非常に稀ですが、気管支喘息をもつ患者ではNSAIDs服用により喘息発作が誘発される可能性もあるため注意が必要です。

 

NSAIDsの中でもセレコキシブ(商品名:セレコックス®)はCOX-2をより選択的に阻害する薬であり、COX-1とCOX-2を共に阻害する一般的なNSAIDsに比べて、胃腸障害や腎臓への影響が少なく、また喘息患者に対しても安全性がより高いとされています。但し、COX-2の選択的阻害薬には心血管障害への注意が必要とされています。危険性は高くないとされてはいますが、過去に心筋梗塞などの既往歴がある場合にはより注意が必要となります。

 

トリプタン製剤(主な商品名:イミグラン®、ゾーミッグ®、マクサルト®、レルパックス®、アマージ®)

主に中等度〜重度の頭痛、もしくは軽度〜中度の頭痛であってもNSAIDsで効果がなかった場合などで使用します。

 

ヒトの脳血管には血管収縮に関わる平滑筋細胞があり、ここにはセロトニンが作用する5-HT1受容体があります。また三叉神経の終末や三叉神経核にも5-HT1受容体が存在します。トリプタン製剤はこのセロトニン5-HT1受容体に作用することで、脳の血管の収縮、三叉神経からの痛み物質の伝達を抑制し、片頭痛発作を抑制します。トリプタン製剤は片頭痛発作がおこる仕組みとされているセロトニン系の仕組みにも、三叉神経系の仕組みにも対応した薬理作用を持っているため、まさに片頭痛発作の治療に特化した製剤と言えます。

 

トリプタン製剤には水なしで服用できる剤形(製剤例:ゾーミッグ®RM錠2.5mg、マクサルト®RPD錠10mg)もあり、携帯することで飲料がない状況においても片頭痛の発作が起きたらすぐに服用することができます。イミグラン®は剤形に経口薬(内服薬)だけでなく、点鼻剤や注射剤(皮下注射)もあるので、嘔吐などを伴う重症発作に対しても効果が期待できるとされています。

 

アマージ®は月経時片頭痛のように頭痛の持続時間が長く再発しやすい片頭痛に対して有効とされています。他のトリプタン製剤に比べて半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間)が最も長く、約24時間効果が持続します。

 

トリプタン製剤は片頭痛発作が起きてすぐに使用することで最も高い効果が得られます。片頭痛が起きてしばらくした後の我慢できなくなってからでは薬剤の効果が十分に発揮されないので服用するタイミングが肝心です。

 

エルゴタミン製剤(主な商品名:クリアミン®)

片頭痛発作で過剰に広がった脳の血管を収縮させ痛みを抑えます。発作が起きてすぐ、もしくは「前兆のある片頭痛」の場合は前兆があった段階で服用します。トリプタン製剤を服用しても片頭痛の再燃が見られる患者さんに使用すると効果があるとされていますが、トリプタン製剤を使用した後でエルゴタミン製剤を使用する(又はその逆で、エルゴタミン製剤を使用した後でトリプタン製剤を使用)する場合は、原則として間隔を24時間以上開ける必要があるため注意が必要です。(薬剤の相互作用により血圧上昇や血管収縮の増強などがおこる可能性がある)

 

エルゴタミン製剤には血管収縮作用の他、子宮収縮作用などがあるため妊娠中や授乳中の女性は使用できません。また服用後に吐き気や腹痛などの消化器症状、めまいや不眠などの精神神経系症状などがあらわれることがあります。

 

制吐剤(主な商品名:プリンペラン®、ナウゼリン®)

片頭痛発作時、吐き気を伴う場合には制吐剤を以上の薬剤に併用します。

 

片頭痛発作時に三叉神経から脳に刺激が伝えられる過程で、脳の嘔吐中枢にも刺激が伝わり、吐き気・嘔吐などが引き起こされることがあります。神経伝達物質ドパミンの受容体は脳のCTZ(化学受容器引金帯)という場所にも存在し、CTZのドパミン受容体が刺激を受けると延髄の嘔吐中枢に刺激が伝達され吐き気などがおこることがあります。メトクロプラミド(主な商品名:プリンペラン®)やドンペリドン(主な商品名:ナウゼリン®)などの薬剤はドパミン受容体を阻害する抗ドパミン作用などにより吐き気などを抑える作用をあらわします。

 

◆ 片頭痛の予防薬

急性治療のみでは片頭痛発作が改善しない場合、発作が月に2回以上あるいは6日以上ある場合などにおいては予防治療が検討されます。予防薬の効果があったかどうかを判断するには少なくとも2ヶ月くらい期間を必要とし、多くの場合3ヶ月は服用を継続することが推奨されています。改善がみられない場合は薬の変更などが検討されます。症状の改善がみられた場合は徐々に薬を減らすことなども検討されます。代表的な片頭痛予防薬を以下に示しました。

 

  • β遮断薬

  • Ca拮抗薬

  • てんかん

  • 抗うつ薬

  • ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)

 

β遮断薬(主な商品名:インデラル® など)

元々、高血圧や狭心症などで使用されている薬ですが、頭痛ダイアリーというツールを用いた評価においては片頭痛発作を44%減少させた、という臨床試験の報告もあります。高血圧などを合併している片頭痛患者には推奨される薬剤の一つです。

 

薬剤としてはプロプラノロール塩酸塩(主な商品名:インデラル®)やメトプロロール酒石酸塩(主な商品名:セロケン®、ロプレソール®)などが片頭痛予防薬として使用されます。特にプロプラノロール塩酸塩(主な商品名:インデラル®)は片頭痛治療薬としても保険適応が承認された薬です。

 

カルシウム(Ca)拮抗薬(主な商品名:テラナス®、ミグシス®、ワソラン®)

片頭痛の発作には脳の血管収縮が関わっているため、脳血管の収縮と拡張の差を少なくすることで片頭痛発作の症状を軽減することが期待できます。血管の収縮にはカルシウム(Ca)イオンが重要な役割を担っていて、カルシウム(Ca)チャネルというCaイオンの通り道があります。このCaチャネルからCaイオンが細胞内へ流入することで血管が収縮します。Ca拮抗薬はCaチャネルを阻害し細胞内へのCaイオンの流入を防ぐことで血管を拡張する作用をあらわします。

 

一般的なCa拮抗薬は血圧降下作用などにより主に高血圧治療薬(商品例:アムロジン®、ノルバスク® など)として使われますが、ロメリジン塩酸塩(商品名:テラナス®、ミグシス®)はCa拮抗薬の中でも血圧降下などに影響する末梢血管に対する作用が少ないとされ、主に片頭痛発作予防薬として使用される薬となります。また、通常は不整脈狭心症などの治療薬として使用されているベラパミル塩酸塩(主な商品名:ワソラン®)を片頭痛の発作予防薬として使用する場合もあります。

 

これらの薬は末梢血管への作用が少なく血圧への影響が少ないとされる薬剤ですが、それでもふらつきやめまいなどには注意が必要となります。

 

抗てんかん薬(主な商品名:デパケン®、ランドセン®、リボトリール®、トピナ®)

脳内の神経細胞の興奮を鎮めることでてんかんだけでなく片頭痛の治療にも使われています。

 

バルプロ酸ナトリウム(主な商品名:デパケン® )は、脳神経の興奮を鎮めるGABA(γ-アミノ酪酸)の脳内濃度を高める作用などにより効果をあらわします。元々、てんかんなどに対する治療薬でしたが臨床での効果が評価され2010年10月に片頭痛の治療薬としても保険適応が認められました。国内外で片頭痛予防薬の第一選択薬として使用されます。

 

バルプロ酸ナトリウムの副作用としては眠気、吐き気などの消化器症状、肝機能障害などがあります。片頭痛予防薬として使用する場合は、てんかん治療などに比べて低用量で使用されることが多く、副作用があらわれることは稀とされていますが注意は必要です。またバルプロ酸ナトリウムには催奇形性と胎児の認知機能低下の報告もあるので、妊娠を希望している女性は医師へ相談が必要です。

 

クロナゼパム(商品名:ランドセン®、リボトリール®)はベンゾジアゼピン(BZD)系と呼ばれる種類の薬です。脳内にあるベンゾジアゼピン受容体に作用することで抑制系の作用が働き脳の興奮を沈めます。錠剤の規格で対応が難しい低用量の使用に関しては細粒剤が使用される場合もあります。

 

トピラマート(商品名:トピナ®)は脳内で興奮性のシグナルとなるナトリウムイオンやカルシウムイオンの通り道であるナトリウムチャネルやカルシウムチャネルに対する抑制作用、興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体への抑制作用、抑制性の伝達物質であるGABAの受容体増強作用などをあらわす新しいタイプの抗てんかん薬の一つです。海外では片頭痛の治療薬としても評価が高い薬ですが、現在(2016年2月)国内においては片頭痛治療薬としての保険適応はありません。(海外では青少年の片頭痛予防薬として適応承認を受けている国もあります)

 

抗うつ薬(主な商品名:トリプタノール® など)

抗うつ薬はその名前の通り、うつ病などに効果をあらわす薬ですが、片頭痛予防薬としても効果が期待できる薬剤もあります。

 

特にアミトリプチリン塩酸塩(主な商品名:トリプタノール®)は片頭痛に深く関わるセロトニンの代謝改善作用により、片頭痛予防薬として効果が期待できる薬剤です。トリプタノールは主に「うつ」「夜尿症」などで使用されていた薬ですが、神経性疼痛などにも効果が確認されていて、片頭痛に関しては2012年に厚生労働省から適応外使用が認められました。

 

口渇、便秘、眠気、尿閉などの副作用には注意が必要です。また稀に眼圧に影響を与える場合もあるため、原則として緑内障を合併する場合には使用できません。

 

ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)

高血圧治療で広く使われているACE阻害薬やARBも片頭痛予防薬として使用する場合があります。ARBのカンデサルタンシレキセチル(主な商品名:ブロプレス®)やACE阻害薬のエナラプリルマレイン酸塩(主な商品名:レニベース®)などは片頭痛と高血圧を合併する場合に推奨される薬剤の一つです。

 

その他の予防薬

その他、片頭痛の治療薬として帯状疱疹などに使用する抗ウイルス薬が効果をあらわす場合もあります。片頭痛発作の初期に目の周囲、頭皮、腕などに違和感を感じるようなアロディニア(異痛症)を伴う片頭痛には帯状疱疹ウイルスの関与があるとされています。この場合、バラシクロビル塩酸塩(主な商品名:バルトレックス®)などの抗ウイルス薬を使うことで改善効果が期待できます。また、片頭痛の予防としてマグネシウムやビタミンB2などが使われる場合もあります。

 

◆ 慢性頭痛に対するその他の注意

最近では痛み止めを飲んでいるのに毎日頭痛がすると訴える人もいます。その場合、薬剤使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)である可能性も考えられます。現在では治療の選択肢の広がりなどもあり、早期の治療や正しい服薬などにより片頭痛による日常生活への支障を減らすことが可能となっています。我慢せずに早めの受診が重要です。また「頭痛ダイアリー(医療機関で配布している場合や日本頭痛学会のホームページなどから入手可能)」というツールを使うと頭痛の種類や頻度も記録でき、医師が診察する際の有効な手がかりにもなるので、頭痛がある方は活用してみてはいかがでしょうか。

 

参考:慢性頭痛の診療ガイドライン

注:この記事は2016年2月15日に公開されましたが、2018年2月15日に編集部(大脇)が更新しました。

執筆者

菊地友佳子

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。


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