2016.03.09 | ニュース

がんと戦う「免疫チェックポイント阻害薬」、2剤併用の副作用は?

非小細胞肺がん患者102人で用量を検討

from The Lancet. Oncology

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免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる種類の薬は、免疫を利用してがんを治療します。この種類にあたるデュルバルマブ、トレメリムマブという2種類の薬を併用したときの安全性が検討されました。

免疫チェックポイント阻害薬には、日本でも2014年に販売開始され、皮膚がんや肺がんの一部に対して使われているニボルマブなどがあります。注目されている薬ですが、副作用の懸念もあり、ニボルマブの副作用として間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎、1型糖尿病などが報告されています。

この研究では、肺がんの一部である非小細胞肺がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬に分類されるデュルバルマブ、トレメリムマブ(どちらも日本では未承認)を併用したときの安全性を検討しました。

進行した非小細胞肺がんがある成人患者102人が対象となりました。

対象者は2種類の薬の用量を変えて治療され、それぞれの用量に応じて副作用が疑われる出来事の頻度を比較されました。

 

次の結果が得られました。

デュルバルマブ20mg/kgを4週ごととトレメリムマブ3mg/kgの群で忍容最大用量を超過し、6人の患者のうち2人(30%)に用量制限を要する毒性が見られた(グレード3のASTとALTの上昇が1人、グレード4のリパーゼの上昇が1人)。グレード3または4の治療関連有害事象で最もよく見られたものは下痢(11人、11%)、大腸炎(9人、9%)、リパーゼ上昇(8人、8%)だった。治療関連有害事象による治療中止は102人の患者のうち29人(28%)に起こった。治療関連の深刻な有害事象は102人の患者のうち37人(36%)に起こった。22人の患者は試験期間に死亡し、3人の死亡は治療関連だった。治療関連死は、重症筋無力症(デュルバルマブ20mg/kgを4週ごととトレメリムマブ1mg/kgの群)、心嚢液貯留(デュルバルマブ20mg/kgを4週ごととトレメリムマブ3mg/kgの群)、神経筋障害(デュルバルマブ20mg/kgを4週ごととトレメリムマブ1mg/kgの群)による合併症によるものだった。

副作用が疑われることとして、下痢、大腸炎などが多く見られたほか、がん治療中に死亡した22人のうち3人では副作用が原因の可能性があると見られました。その3人では重症筋無力症、心嚢液貯留、神経筋障害が起こっていました。

 

この結果をふまえたうえで、デュルバルマブとトレメリムマブ併用の研究は続けられています。一般的な治療として使われるまでには、副作用が許容範囲であることが必要になり、ここで報告された内容は今後も安全性に注意を続けるうえで重要な情報になります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Safety and antitumour activity of durvalumab plus tremelimumab in non-small cell lung cancer: a multicentre, phase 1b study.

Lancet Oncol. 2016 Feb 5. [Epub ahead of print]

[PMID: 26858122]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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