2015.11.18 | ニュース

多発性硬化症に有効な薬を比較、一長一短?

ランダム化比較試験により検証
from The New England journal of medicine
多発性硬化症に有効な薬を比較、一長一短? の写真
(C) FedotovAnatoly - Fotolia.com

多発性硬化症では、本来は外敵から体を守る免疫が自分の体を攻撃してしまうことで、神経障害が起き、運動や感覚の麻痺が現れます。今回の研究では、多発性硬化症で元々使われていた薬と別の薬の効果と副作用を比較しました。

◆ダクリズマブ治療を行う群とインターフェロン治療を行う群にランダムに振り分け

多発性硬化症は、体内の免疫系に異常をきたすことで起こる病気であると言われています。多発性硬化症に対する治療薬のひとつに、免疫系を調整するインターフェロンという薬があります。今回の研究で比較された高収率合成ダクリズマブは、インターフェロンとは別のしくみで、自分を攻撃してしまう免疫系の異常な働きを抑制する作用があると言われているものです。

今回の研究では、多発性硬化症患者1,841人をダクリズマブ治療を行う群とインターフェロン治療を行う群にランダムに分け、その効果と副作用を比較しました。

 

◆ダクリズマブは効果は高いかもしれないが、副作用も多い

以下の結果が得られました。

1年換算での再発率は、インターフェロンβ-1aよりもダクリズマブHYPでより低かった(0.22 vs 0.39、ダクリズマブHYPで45%低い、p<0.001)。

感染症は、インターフェロンβ-1aよりもダクリズマブHYPでより多く(患者のうち65% vs 57%、そのうち重篤な感染症4% vs 2%含む)、発疹湿疹のような皮膚イベント(37% vs 19%、重篤なイベントは2% vs 1%未満)、肝臓アミノトランスフェラーゼの水準が正常範囲の上限の5倍以上に上がった場合(6% vs 3%)でも同様であった。

ダクリズマブ治療により、インターフェロンよりも再発率が低かった一方、感染症、皮膚症状、肝機能への副作用が多いという結果でした。

 

この研究は、臨床の場に近い環境で行われた試験(第III相試験)であり、これまでの薬と比較することでメリット、デメリットを観察するものです。今回の研究結果により、ダクリズマブの効果が高い一方で、副作用の出現率が高かったため、最終的に薬として承認された場合には、益と害のバランスを考えて使われる必要があります。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Daclizumab HYP versus Interferon Beta-1a in Relapsing Multiple Sclerosis.

N Engl J Med. 2015 Oct 8

[PMID: 26444729]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。