2015.10.29 | ニュース

腎臓の悪化による高カリウム血症を治療、パチロマーは安全にカリウムを減らせるか?

RAA系阻害薬で治療中のCKD患者243人を治療

from European journal of heart failure

腎臓の悪化による高カリウム血症を治療、パチロマーは安全にカリウムを減らせるか?の写真

慢性腎臓病で腎臓の機能が弱くなったとき、致命的な不整脈につながる高カリウム血症が問題になります。過剰なカリウムと結合して血液からカリウムを取り除く新薬、パチロマーを使って治療する研究が行われました。

◆高カリウム血症とは?

血液中のカリウムは、腎臓から尿として排出されます。正常な腎臓は、排出量を調節することで、体の中にあるカリウムの量を一定の範囲に保っています。慢性腎臓病ではこの調節機能が正常に働かなくなり、血液の中にカリウムが多すぎる高カリウム血症の状態になることがあります。

また、慢性腎臓病が高血圧をともなうことがあり、この場合の治療にACE阻害薬やARB(あわせてレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬)という種類の薬がよく使われますが、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬にはカリウムが尿に排出されるのを抑える作用があり、高カリウム血症を誘発しえます。

重度の高カリウム血症は、命に関わる不整脈を起こす、非常に危険な状態です。

これらのことから慢性腎臓病の治療では高カリウム血症を防ぐことが重要です。パチロマーは血液から余分なカリウムを取り除く薬として作られました

 

◆慢性腎臓病患者をパチロマーで治療

研究班は、慢性腎臓病の患者で、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬により治療中であり、研究開始時に軽度の高カリウム血症がある人243人を対象として、パチロマーで4週間の治療を行いました。

また、カリウムが正常範囲にまで減った場合、パチロマーを中止することで、カリウムの量が再び増えるかも調べました。

 

◆76%が正常に

次の結果が得られました。

ベースラインから4週までの血清K+の変化量の平均(±標準誤差)は-1.06±0.05mEq/l(95%信頼区間-1.16から-0.95、P<0.001)であり、76%(95%信頼区間69から84)が血清K+量3.8mEq/l以上5.1mEq/l未満を達成した。ランダム化中止相において、この期間のベースラインからの血清K+増加量の中央値はパチロマー群(27人)よりも偽薬群(22人)で大きかった(P<0.001)[...]。

軽度から中等度の便秘が最も多い有害事象であり(11%)、低K血症は3%に起こった。

パチロマーの治療開始から4週間のうちに、76%の人でカリウムの量が正常範囲にまで減りました。また、パチロマーを中止すると、カリウムが再び増えることが見られました。

副作用の可能性があることとして、軽度から中等度の便秘が11%の人に起こり、カリウムが減りすぎてしまう低カリウム血症は3%の人に起こりました。

 

腎臓の機能が悪化して高カリウム血症などが続くと、透析が必要になります。透析は非常に負担が大きい治療であり、慢性腎臓病の治療では透析が必要な状態を防ぐことが目標になります。

薬を使って高カリウム血症を安全にコントロールすることができれば、慢性腎臓病の治療の助けになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of patiromer on reducing serum potassium and preventing recurrent hyperkalaemia in patients with heart failure and chronic kidney disease on RAAS inhibitors.

Eur J Heart Fail. 2015 Oct 12 [Epub ahead of print]

[PMID: 26459796]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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