2015.10.15 | ニュース

若いころから喫煙していた世代では、女性にも肺がんが増えたのか?

アメリカ1995年から11年間の追跡調査により検証

from International journal of epidemiology

若いころから喫煙していた世代では、女性にも肺がんが増えたのか?の写真

喫煙により多くの種類のがんが発症しやすくなります。その危険性は、長期間喫煙を続けるほど大きいと考えられています。今回の研究はアメリカで喫煙率が時代とともに変わっていることをふまえ、男女で喫煙による影響に違いがあるかを調査しました。

◆喫煙とがんの関連性を検証

喫煙により、肺がん(肺腺がん、肺扁平上皮がんなど)、喉頭がん、口腔がん、胃がん、大腸がんなどのがんをはじめ、心筋梗塞や脳卒中など多くの病気のリスクが大きくなることが、多くの研究から示されています。

歴史的にアメリカでは、男性より女性の喫煙開始時期が遅く、喫煙によりがんが発症する危険性は低いという背景がありました。しかし、その後女性も喫煙開始の時期が早くなり、がん発症の危険性も増している可能性があり、今回の検証が行われました。

今回の研究では、1924年から1945年に生まれ、調査時期に50歳から71歳であった男女計452,131人に対して11年間の追跡調査を行い、喫煙とがん発症の関連性を検証しました。

 

◆男性と女性で喫煙による、がん発症の危険性は同程度

以下の結果が得られました。

喫煙したことがない人と比べて、現在喫煙している人の以下のがんに対する相対リスクは男女で類似していた。

肺扁平上皮がん(女性の相対リスク121.4、95%信頼区間57.3-257.4、男性の相対リスク114.6、95%信頼区間61.2-214.4)、肺腺がん(女性の相対リスク11.7、95%信頼区間9.8-14.0、男性の相対リスク15.6、95%信頼区間12.5-19.6)、喉頭がん(女性の相対リスク37.0、95%信頼区間14.9-92.3、男性の相対リスク13.8、95%信頼区間9.3-20.2)、口腔咽頭がん(女性の相対リスク4.4、95%信頼区間3.3-6.0、男性の相対リスク3.8、95%信頼区間3.0-4.7)、食道扁平上皮がん(女性の相対リスク7.3、95%信頼区間3.5-15.5、男性の相対リスク6.2、95%信頼区間2.8-13.7)、膀胱がん(女性の相対リスク4.7、95%信頼区間3.7-5.8、男性の相対リスク4.0、95%信頼区間3.5-4.5)、結腸がん(女性の相対リスク1.3、95%信頼区間1.2-1.5、男性の相対リスク1.3、95%信頼区間1.1-1.4)であり、その他の部位も同様の寄与割合であった。

男女ともに、ほとんどの人が10代で喫煙を始めていました喫煙によってがんの発生率が増える効果の大きさは男女で似通っていて、肺がんのうち代表的なタイプの肺腺がんは喫煙により男女とも100倍以上、喉頭がんは男女とも10倍以上に増えるという結果でした。

 

がんの種類によって、女性では少ないとされているものがありますが、その違いには喫煙などの生活習慣の違いから生まれている部分もあると考えられます。全体として生活習慣が変わることで、現在女性には少ない種類のがんも将来多くなる可能性があります。 ひとりひとりにできる対策として、まずは禁煙が大切です。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Impact of changing US cigarette smoking patterns on incident cancer: risks of 20 smoking-related cancers among the women and men of the NIH-AARP cohort.

Int J Epidemiol. 2015 Sep 27

[PMID: 26411408]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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