咳喘息とは?症状・原因・治療と生活の注意
咳喘息(せきぜんそく)とは、
目次
1. 咳喘息になるとどんな症状が出るのか?
咳喘息の症状は気管支喘息の症状と似ている点もありますが少し異なります。。その症状には特徴があります。
咳喘息に特徴的な症状
咳喘息になったときに現れる症状の特徴は以下になります。
- 痰(たん)の絡まないしつこい咳(数週間から数ヶ月単位以上の期間)
喘鳴 (ぜんめい :ヒューヒュー、ゼーゼーと鳴ること)は伴わない- 息が苦しくなることは基本的に無い
咳喘息はいわゆる本格的な喘息(気管支喘息)に似た病気、あるいは気管支喘息の一歩手前の状態と考えられています。しかし、喘息のように喘鳴が出現することはありません。また、喘息のように息苦しさを覚えることもほとんどありません。
咳喘息は痰の絡まないしつこい咳が典型的ですが、多少の痰は絡むこともあります。8週間以上にわたって咳が続くことを、専門的には慢性咳嗽(まんせいがいそう)と呼びますが、慢性咳嗽のうち3割から4割ほどは咳喘息によるものと考えられています。
ほかの症状については「咳喘息の症状は咳以外にある?」をあわせてご覧ください。
参考文献
・Respirology. 2005 ; 10 : 201-7.
・Pulm Pharmacol Ther. 2007 ; 20 : 383-7.
咳喘息と似た症状の出る病気
咳喘息の唯一と言ってよい症状は、乾いた咳がしつこく出ることです。咳が出るという点においては、以下のように非常に多くの病気で似ている症状が出現します
(一部の例だけを挙げています。)
この中でもアトピー咳嗽、気管支喘息、感染後咳嗽などとは、病院にかかっても区別がつきにくいことがしばしばあります。咳喘息として治療してみて、効いたら結果的に咳喘息と診断する方法(診断的治療)もしばしば行われます。
2. 咳喘息の原因は何なのか?
正常な肺は、木の枝のように細かく分かれる気管支と、枝の先にあたる位置にある袋状の


咳喘息は、空気の通り道である気管支で繰り返し炎症が起こっている状態です。炎症が強いときには、気管支が狭くなってしまう影響で咳が出てきます。炎症がなぜ起きてしまうか、という点に関しては様々な原因があると考えられており、一口に咳喘息といっても、全てが同じ原因ではありません。
炎症が何年も続くうちに、気管支は破壊されたり分厚くなったりしていきます。これを気道リモデリングといいます。気道リモデリングが進むと、薬を使ってもなかなか気管支が広がらず、治りにくい咳喘息、あるいは本格的な気管支喘息へと進行してしまします。そのため、適切な時期に適切な治療をしていくことが大事になります。
咳喘息はアレルギーの一種である、という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、これは正確な表現ではありません。咳喘息がアレルギー反応と深い関係にあることは間違いありませんが、咳喘息を単なるアレルギーの一種であると言い切ることは難しいです。少し難しい内容なので説明を補足します。
咳喘息には様々な分類がありますが、「環境中の物質に対するアレルギー反応が検出されるアトピー型」と「非アトピー型」の2つに分けることがあります。
アトピー型では、具体的にはダニに対するアレルギーが最も多いと考えられるため、ダニの温床になりやすいカーペットの管理には注意が必要です。また、ネコやイヌ、ハムスターなどの動物やカビ類、ゴキブリ等もアトピー型の原因となりやすいことが分かっています。屋外のアレルギー物質としてはスギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉などもありますが、屋内のアレルギー物質よりは咳喘息との関連は薄いと考えられます。
一方で、非アトピー型はアレルギーの原因となる物質がはっきりとしていません。しかし、何らかのアレルギーが関与していると考えれていますが、現在のところ詳細は分かっていません。
咳喘息の原因については「咳喘息の原因は?どうやって診断するのか?」でも説明しています。
参考文献
・J Allergy Clin Immunol. 2007 ; 119 : 1043-52.
・Lancet. 1989 ; 1 : 520-4.
・一般社団法人日本アレルギー学会喘息
・N Engl J Med. 1997 ; 336 : 1356-63.
・Am J Respir Crit Care Med. 2003 ; 167 : 787-97.
3. 咳喘息と気管支喘息は違う病気なのか?
咳喘息と気管支喘息は似ている病気ですが、大きく異なる点があります。
咳喘息が気管支喘息になることはある?
咳喘息はしつこい乾いた咳が出るのが唯一の症状ですが、この乾いた咳に息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーと鳴ること)を伴ったり、呼吸機能の検査をした時に異常が出てくるようであれば本格的な気管支喘息が疑われます。
最初は咳喘息でも、大人の場合30%程度が、子どもの場合50%程度が本格的な気管支喘息に進行してしまうとされています。しかし、適切な時期に適切な治療をすることで、本格的な喘息になってしまう可能性を下げることができると報告されているため、目安として3週間以上咳が出続けるような場合には、呼吸器内科を受診することをお勧めします。
参考文献
・Thorax. 2003; 58: 14-8.
・Clin Exp Allergy. 2003; 33: 1409-14.
4. 咳喘息はどうやって診断されるのか?
咳喘息の最大の特徴は、痰の絡まないしつこい咳が続き、呼吸の苦しさや喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーと鳴ること)を伴わないことです。こういった状況で咳喘息が疑われます。
そこからどうやって最終的に咳喘息と診断するかですが、実は厳密な診断基準は存在しないのが実情です。次のことに注意しながら総合的に判断されます。
- 咳喘息の治療薬(気管支拡張薬)を使ってみて咳が改善するかどうか
- どれくらいアレルギーの要素があるのか
- 夜間や明け方に咳が出やすいなど咳喘息が疑わしい症状の出方なのか
- 他の病気の可能性はないのか
咳喘息は診断が難しいため、常に正しい診断手順というものは存在しないですし、名医にかかれば一発で診断してくれるというようなこともありません。専門家によっては、行う検査も診断名も異なる場合があります。まして自己判断での診断は誤診や重大な病気の見落としにもつながりかねないためお勧めしません。
大事なのは最初から咳喘息を言い当てることよりも、治療に効果がないと見れば診断を見直す判断や、診断にかかわらず容態が悪くなればすみやかに対応できる体制があることです。結果として症状が楽になることが根本的な目標ですから、診断名に最初からこだわる必要はありません。
5. 咳喘息になるとどんな検査を受けるのか?
8週間以上にわたって咳が続くことを、専門的には慢性咳嗽と呼びますが、慢性咳嗽のうち3割から4割ほどは咳喘息が原因であるとと考えられています。したがって、医師の診察を受けて、病歴や症状から咳喘息が強く疑われる場合には、まず咳喘息としての治療をしてみることがあります。治療が効くようであれば咳喘息と診断されます(診断的治療)。
しかし、典型的な咳喘息ではなさそうな場合、他の病気との区別をしっかり検査で行っておくべきだと医師が判断した場合には、以下のような検査が行われることが多いです。
呼吸機能検査 - 呼気一酸化窒素(FeNO)検査
- 血液検査
- 画像検査(
胸部レントゲン 、胸部CT など) - 喀痰検査
これらの検査内容に関してそれぞれ詳しく解説します。
呼吸機能検査
呼吸機能検査は、
マウスピースをくわえて口呼吸をし、「吸って」「吐いて」「思いっきり吸って」「勢い良く吐いて」などの指示に従って呼吸をすることで、空気を吸う能力や吐く能力、酸素の取り込み能力などをチェックする検査です。咳喘息の場合には呼吸機能検査は正常範囲内のデータになることがポイントです。
本格的な気管支喘息の場合には、空気の通り道である気管支が炎症を起こすことによって腫れたり傷ついたりした状態となる影響を受けて、空気の通り道が狭くなりがちです。したがって、空気を吐き出す勢いが弱くなってしまい、気管支喘息の場合には呼吸機能検査で「閉塞性障害」と呼ばれるタイプの異常が見られることがあります。
呼気一酸化窒素検査
呼気一酸化窒素検査はFeNO(fraction of exhaled nitric oxide)検査とも呼ばれ、2013年に
専用の測定機器に一定の勢いで息を吹きかけ、息の中に含まれる一酸化窒素濃度を測ると、患者さんの空気の通り道(気道)においてどれくらいのアレルギーによる炎症が起きているかが推定できる検査です。一酸化窒素の濃度は息の中の割合で表現します。一酸化窒素はごく微量にしか存在しないので%(100分の1)で表すには桁が合わず、ppb(ピーピービー、10億分の1)という表記を使います。1,000万ppbが1%です。
呼気一酸化窒素検査の結果が37ppb以上であれば、咳喘息などの炎症がある可能性が高いと考えられます。逆に、咳喘息の治療薬を使用していないときに22ppb以下であれば咳喘息などの炎症がある可能性が低いと考えられます。
呼気一酸化窒素検査は簡単にできるという利点があります。今後呼気一酸化窒素検査ができる医療機関が増えていくことが期待されています。
しかし、呼気一酸化窒素検査を用いても、単独では咳喘息の診断を確定することも否定することもできません。あくまで症状・病歴やほかの検査と総合して診断します。
咳喘息の診断以外にも呼気一酸化窒素検査が用いられることがあります。検査値が低い値に抑えられているかどうかで、咳喘息の治療がうまくいっているかどうかを見る、というような使い方がされることもあります。
参考文献
・Allergol Int. 2010 ; 59 : 363-7.
血液検査
咳喘息の診断をするうえで血液検査は必須ではありません。ただし、次の目的で血液検査を行われることがあります。
- 咳喘息以外の病気が隠れていないかをチェックする目的
- 咳喘息の治療薬を決定する目的
- どのような物質にアレルギーがあるかを調べる目的
血液検査では様々な項目を調べます。しばしば調べられる重要なものの例を挙げて説明します。
- 血液中好酸球数
- 血清総IgE
抗体 特異的 IgE抗体
血液中好酸球数はアレルギーによる炎症がどの程度あるかの参考になります。ただし、血液中好酸球数が低いから咳喘息ではないあるいは軽症であるということは言えず、逆に高いから重症ということもありません。また、血液中好酸球数があまりにも高い場合には、好酸球性白血病、好酸球性肺炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、薬剤アレルギー、寄生虫感染などの他の病気ではないかを考えることもあります。
血清総IgE(アイジーイー)抗体もアレルギーによる炎症がどの程度あるかの参考になります。ただし、これも低いから咳喘息ではないあるいは軽症であるということは言えず、逆に高いから重症ということもありません。
特異的IgE抗体は例えばダニだとか、スギ花粉といったそれぞれの物質に対するアレルギー反応がどの程度あるかの参考になる検査です。特異的IgE抗体を用いて診断することは難しいですが、結果を手がかりにアレルギーの原因物質を調べて、その物質との接触や吸入をなるべく避けるなどしていくことになります。
画像検査
咳喘息の診断や治療を進めていくうえで、胸部レントゲン検査や
喀痰検査
咳喘息に対して痰の検査というのはあまり聞き慣れないかもしれません。咳喘息の場合には痰の中にある自分の細胞を調べることがあります。好酸球という細胞が手がかりになります。
好酸球は
痰が多いわけでもないのに痰を出せと言われても難しいですので、なかなか痰が出ない場合には食塩水を霧状にして吸い込むことによって痰が出やすくすることがあります。
痰の中に好酸球が多く見つかれば咳喘息が疑わしくなります。また、咳喘息の治療中に痰の検査をして、好酸球が多いか少ないかをみることで治療が上手くいっているかどうかの参考にすることがあります。
6. 咳喘息の治療法
咳喘息は、空気の通り道である気管支がしつこい炎症が起こっている状態です。炎症が強いときには気管支が狭くなってしまうことにより咳が出ます。したがって、気管支を広げる薬である気管支拡張薬や炎症を抑える薬である吸入
患者の中には多少の咳があってもそれほど困っていない、病院に通う時間が無い、面倒だという理由で、本当にひどい
リモデリングとは?
咳喘息の治療を考えるうえで理解しておきたいのが、気管支の「リモデリング」です。咳喘息では主にアレルギーを原因として、空気の通り道である気管支が炎症が起こります。気管支に炎症を起こりと、気管支の壁は分厚くなり、空気の通り道は狭くなります。こうして咳が出てくるわけです。
咳喘息の初期にはこの炎症が自然に治まることも多いですが、炎症を繰り返した気管支では壁が分厚いままになり、元の厚さには戻らなくなっていきます。これを気管支の「リモデリング」といいます。リモデリングが進むと、咳喘息も自然には治まりにくくなっていきます。つまり、咳喘息症状を放置すると、咳喘息は次第に治りにくくなってしまう、あるいは本格的な気管支喘息になりやすいと考えられます。
咳喘息治療の考え方
では気管支の炎症を抑えて、リモデリングを予防するためにはどうしたら良いのでしょうか?ここで中心的な役割を果たすのが吸入ステロイド薬です。
しかし、吸入ステロイドは薬剤を吸い込むことで直接肺にステロイドを届けるので、全身に与える影響は非常に少ないです。一方で、効果の面で優れている安心な薬です。吸入ステロイドの副作用を敢えて挙げると、声がれしやすいこと、口の中に
ただし、子どもが使用する場合には、使用開始後1年間で1cmから2cmほど身長が伸びにくくなる可能性が高いとされています。このような話を聞くと使いたくないと思う人も多いと思いますが、この身長が伸びにくくなるという現象はずっと続くわけではなく、大人になってからの最終身長はさほど変わらないとも報告されています。
このように咳喘息の治療においては、吸入ステロイドを軸にして症状に応じて他の薬剤を追加したり、本当に安定していれば吸入ステロイドを休薬したり、というように治療していきます。
副作用が気になるのは正しいことです。しかし、吸入ステロイドの副作用は限られています。吸入ステロイドには、気管支のリモデリングを食い止め、咳喘息が治りにくくなることを防ぐ役割があります。不安なことがあれば医師に質問して、納得できるまで相談してください。
咳喘息の治療に使う薬などについて、「咳喘息の治療について」で詳しく説明しています。
7. 咳喘息の人はこんなことに要注意
咳喘息の治療中の生活で気になる点について説明します。「咳喘息の人が気をつけるべきことは?」とあわせてご覧ください。
咳喘息はうつるのか?
咳喘息は
もちろん、咳喘息の患者が風邪をひいたりすることもあるでしょうから、その場合には咳から風邪がうつることはあるでしょう。咳喘息の人が「元気」でも咳には風邪のウイルスが紛れていて、周りに体力が落ち気味の方がいて風邪がうつってしまう…といったことは考えられます。咳にはそうしたリスクがあるので、咳喘息の患者で頻繁に咳が出てしまう場合には、人前では咳エチケットとしてマスクを着用することをお勧めします。
また、治療をしていてもしつこく咳が続いてしまう場合には、治療薬を替えると楽になることや、他の病気が隠れていることもあるので、咳が続いて困っていることを担当医に伝えて相談してみましょう。
タバコは吸ってよいのか?
喫煙が咳喘息の原因になりうると考えられます。また、咳喘息の患者が喫煙することで咳発作を起こしてしまう原因にもなると考えられます。また、親が喫煙しているかどうかは子どもの気管支喘息
それでもタバコをやめられないのはなぜでしょうか。喫煙習慣にはニコチン依存症という薬物依存症の側面があります。自分の強い意志で禁煙できる人は素晴らしいですが、タバコを吸ってしまうということは薬物依存症という病気のひとつと考えて、医療機関を受診して、医療者と一緒に禁煙に取り組むこともできます。禁煙補助薬を使って治療することで、禁煙がうまくいきやすくなります。
参考文献
・Allergy. 2012 ; 67 : 653-60.
・Am Rev Respir Dis. 1992 ; 145 : 1136-41.
エアコンは原因になるのか?
喘息発作と気象の変化(曇天、台風、気温の変化など)との間には因果関係があることが知られています。日本国内の研究で、前日と比較して3℃以上気温が下がると喘息発作が起きやすくなったという報告があり、季節の変わり目などは喘息患者さんにとって要注意の時期です。
咳喘息についても同じであると考えられ、気温の急激な変化や空気の乾燥は、空気の通り道である気管支を刺激して咳喘息の咳発作を誘発すると考えられます。エアコンのせいで新規に咳喘息になってしまうことは考えにくいですが、咳喘息と診断されている人がエアコンを使う場合には、外気との温度差をあまり大きくしないこと、部屋を乾燥させすぎないことなどに気をつけてください。
参考文献
・石崎 達, 他, 気管支喘息発作と気象要因の解析, アレルギー. 1974 : 23 ; 753-9.
アルコールは原因になるのか?
飲酒が咳喘息を発症する原因になるかどうかは分かっていません。
しかし、一部の喘息患者さんでは、飲酒により喘息症状が悪化することが分かっています。咳喘息においても同様であると考えられます。日本人はアルコールを分解する
参考文献
・渡辺 尚, アルコール (飲酒) 誘発喘息の発症機序に関する研究 : 特にアセトアルデヒドとの関係について, アレルギー. 1991 ; 40 : 1210-7.