【アトピー咳嗽の診断基準・治療】痰がからまない咳が続く症状が特徴

この記事のポイント
2. アトピー咳嗽の診断基準とは?
3. アトピー咳嗽の治療法を解説
アトピー咳嗽(がいそう)とは、アトピーが原因で咳が起きるとされている疾患の概念です。あまり知られていないこのアトピー咳嗽について、症状や診断基準、治療法などについて解説します。
◆アトピー咳嗽とは?
アトピー咳嗽は、簡単に言うと「アトピーが関係していると考えられる咳嗽(がいそう、咳のことです)」のことを指し、これは日本人・藤村政樹が1989年に提唱した概念になります。これまでまたは今の時点で
◆アトピー咳嗽の診断基準とは?
アトピー咳嗽の診断基準としては、以下の項目の全てを満たすことが定められています(引用・一部改変:咳嗽に関する
喘鳴 や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が3週間以上持続- 気管支拡張薬が無効
- アトピー素因を示唆する
所見 ※または誘発喀痰中好酸球増加の1つ以上を認めるヒスタミン H1 受容体拮抗薬または/およびステロ イド薬にて咳嗽発作 が消失※アトピー素因を示唆する所見 1)喘息以外のアレルギー疾患の既往あるいは
合併 2)末梢血好酸球増加 3)血清総IgE値の上昇 4)特異的 IgE抗体 陽性 5)アレルゲン 皮内テスト陽性
これは、アトピー咳嗽の簡易的な診断基準として知られています(より厳しい診断基準もありますが、研究時に用いられるものであり、臨床現場ではこちらの診断基準が用いられます)。簡単に内容を説明しますと、
- 痰のない乾いた咳が3週間以上続いている
- 気管支拡張薬が効かない
- 前述したようなアトピー要因がないか好酸球が痰の中に見られる
- ヒスタミン(アレルギーに大きく関わる物質)の働きを阻害する薬や
ステロイド薬 で咳が改善する
といったことになります。また、診断が下ってから治療を開始するといったような進め方ではなく、アトピー咳嗽と類似した特徴を持つ咳喘息との区別を治療しながら行うことで、診断することもあります。これは、気管支拡張薬が効くのは咳喘息であるということを考え、数週間の気管支拡張薬を用いた治療期間を設け、その効果を判定し、もし効かないということであれば、アトピー咳嗽と仮定し治療を切り替えます。その後、アトピー咳嗽への治療によって軽快すれば、アトピー咳嗽と診断することになります。
◆アトピー咳嗽の治療法を解説
最後にアトピー咳嗽の治療法について解説します。
アトピー咳嗽の治療法は、基本的には薬を用いた治療になります。前述しましたが、その主な薬はヒスタミン受容体拮抗薬とステロイド薬です。具体的には以下の薬になります。
- ヒスタミン受容体拮抗薬
- 塩酸アゼラスチン:アレルギーの症状を抑える薬です。
- カルボシステイン:鼻水を出しやすくしたり、痰の切れをよくするための薬です。
- ステロイド薬
- プロピオン酸フルチカゾン:
炎症 を抑える吸入薬で、喘息治療にも使われるものです。 - プレドニゾロン:炎症やアレルギー症状を抑える薬です。
- プロピオン酸フルチカゾン:
など
また、アトピー咳嗽の場合は喘息に移行することがほとんどないため、薬治療によって咳が改善すれば、薬の量を減らしたり、終了にします。アトピー咳嗽は再発することも多いですが、基本的にはこのような治療を繰り返して行うことになります。
今回は、アトピーが原因で起こる咳、アトピー咳嗽について解説しました。あまりよく知られていないため、「この病気かもしれない」という選択肢の中にも入っていないことがありますので、このような疾患もあるということは覚えておいても良いかもしれません。その重症度などにより使う薬も異なります。アトピーがある人に咳が続いて、もしアトピー咳嗽かもしれないと思った場合は、お近くの医療機関を受診することをおすすめします。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。