気管支炎の治療について:対症療法など
気管支炎とは、空気の通り道である
1. 鎮咳薬(咳止め)、去痰薬(痰切り)
急性気管支炎は喉かぜや鼻かぜを起こすようなウイルスによる炎症が、気管支まで波及することによって発症することが多いです。炎症で気管支が刺激されるため、強い咳が出ることが特徴的です。痰はほとんど出ない人から多く出る人まで様々ですが、黄色いドロっとした痰が出る人は肺炎や、
鎮咳薬(ちんがいやく)は咳の程度を軽くする効果が、去痰薬(きょたんやく)は痰の量を減らす・粘度を下げてくれるなどの効果が期待できます。しかし、気管支炎そのものを早く治す効果はありません。したがって、鎮咳薬や去痰薬の使用は必須ではありません。つらい咳や痰があるだけでもそれなりに体力を消費しますから、
- 鎮咳薬(非麻薬性):メジコン®(一般名:デキストロメトルファン) など
- 鎮咳薬(コデイン類含有製剤):フスコデ®、カフコデ®N など
- 鎮咳・去痰薬:アスベリン®(一般名:チペピジンヒベンズ) など
- 去痰薬:ムコダイン®(一般名:カルボシステイン) など
近年は医療機関で処方されるものと同様の鎮咳薬・去痰薬も多く市販されています。そのため、これらをもらうために医療機関を受診する必要は必ずしもありません。ただし、上述したように肺炎や細菌性気管支炎が考慮されるような痰が出る人は、医療機関を受診してください。
2. 解熱薬
気管支炎は主にウイルスが気管支に炎症を起こした状態であり、その他の
熱を下げると治りが悪くなるというような説もありますが、十分に証明されたものではなく、希望に応じて解熱薬を使用してよいものと思われます。
なお、38℃以上の発熱が何日も続くような人では、一般的なウイルス性の気管支炎よりも肺炎や細菌性の気管支炎の可能性が高まります。肺炎や細菌性の気管支炎に対しては抗菌薬を用いるなど治療方針も変わってくるので、市販の解熱薬で様子を見ないで医療機関を受診すべきです。
3. 抗ウイルス薬
抗ウイルス薬は特定のウイルス自体を標的として作用する薬であり、気管支炎そのものの治りを早くしてくれることが期待されます。しかし、気管支炎の人は全員が使用すればよい、というような薬ではありません。副作用や高額な薬価が懸念されるためです。
急性気管支炎の多くは、原因となっているウイルスが特定されないまま自然
4. 抗菌薬(抗生物質)
かぜや急性気管支炎の原因の多くはウイルス感染によるものです。抗菌薬は名前の通り、菌に対する効果はありますが、ウイルスに対する効果は全くありません。むしろ、鎮咳薬や解熱薬と比較すると
急性気管支炎においては、マイコプラズマや百日咳などの菌に対しては抗菌薬が有効ですが、ウイルスによる急性気管支炎では抗菌薬を使うべきではありません。
ウイルスによる気管支炎か、細菌性の気管支炎や肺炎かを見極めるのはお医者さんの腕の見せ所です。たとえ
患者さんの立場から抗菌薬の必要性を判断することはほぼ不可能ですが、抗菌薬にはメリット・デメリットが両方あることをよく理解して、お医者さんに必要以上に抗菌薬を求めないことが賢い医療機関のかかり方と言えます。
5. 気管支拡張薬
気管支拡張薬は、気管支を広げることによって空気の通りを良くしてくれる薬です。通常は急性気管支炎の治療には使われず、COPDなどの病気で月単位〜年単位以上のしつこい気管支炎を起こしている人に使用されます。また、喘息の治療薬としても使われます。
主に子どもでは、ホクナリン®テープ(ツロブテロールテープ)など、身体に貼るタイプの気管支拡張薬が気管支炎に対して使われることがあります。これは子どもでは喘息の
しかし、こうした気管支拡張薬は気管支を物理的に広げてくれるものの、決して「咳止め」ではなく、貼り薬では即効性もありません。
参考文献:
日本呼吸器学会呼吸器感染症に関する