こうしんへるぺす
口唇ヘルペス
成人で最もよくみられる単純ヘルペスの一種。
9人の医師がチェック 23回の改訂 最終更新: 2024.03.14

口唇ヘルペスの人が日常生活で気をつけること:うつる時期の注意点など

口唇ヘルペスになった時は周りに感染させてしまうのではないかなどと心配になると思います。また早く治したり、再発を防ぐためには何をしたら良いのかなどが気になることもあると思います。ここでは周りにうつさないためや、再発を防ぐための日常生活の注意点などについて説明します。

1. 口唇ヘルペスはうつるのか

口唇ヘルペスはうつります。口唇ヘルペスの原因である単純ヘルペスウイルス1型は感染力が強く日常生活の中で感染するウイルスです。

口唇ヘルペスの水ぶくれの部分や皮膚表面にあるウイルスが、皮膚の小さな傷や、口の中、眼、性器の粘膜などに触れると感染を起こします。明らかな水ぶくれはない正常な皮膚からも感染することがあります。また、症状が出ていなくても、単純ヘルペスウイルスに感染した人の唾液や膣分泌液の中にウイルスが含まれていることがあります。しかし、感染力が最も強いのは水ぶくれなどの症状がある場合です。

口唇ヘルペスの原因である単純ヘルペスウイルス1型は水ぶくれの内容物、皮膚、唾液を介して、主に口や顔などに感染を起こしますが、口と性器の接触を介して性器ヘルペスの原因にもなります。

口唇ヘルペスがある場合には、水ぶくれや唾液を介して感染しやすいため、食器の共用や、同じタオルを使用することは避けてください。また口と性器の接触を通しても感染するためオーラルセックスは避けてください。

2. 口唇ヘルペスかもと思ったら何科にかかれば良いのか

口唇ヘルペスは唇や口の中にできるので歯科(歯医者)などを受診しようと悩むこともあるかもしれません。もちろん歯科(歯医者)でも治療を行うことは可能ですが、口唇ヘルペスや帯状疱疹の専門的な診療を行うことができるのは皮膚科です。その他にも内科や耳鼻咽喉科でも治療が受けられます。

口唇ヘルペスの水ぶくれが潰れて、じゅくじゅくして皮膚が荒れている場合などは、軟膏の塗り方などの対応方法を聞くことができるので皮膚科への受診をお勧めします。また1週間を過ぎても症状が続いている場合には、他の病気の可能性がありますので、もう一度皮膚科を受診してみることをお勧めします。

3. 妊娠中は口唇ヘルペスができやすいか

妊娠中に特に口唇ヘルペスができやすいということはありません。しかし、妊娠による体調の変化で疲れやすくなったり、ストレスがかかったりすると考えられ、人によっては口唇ヘルペスを再発しやすくなることがあります。妊娠中の口唇ヘルペスも通常通りの治療が行われます。

口唇ヘルペスは特に問題ありませんが、単純ヘルペスウイルスが性器に感染して起こる性器ヘルペスでは特別な対応が必要になることがあります。妊娠後期で性器ヘルペスの初感染や再活性化が起きた場合には、経膣分娩により赤ちゃんに単純ヘルペスウイルスが感染することがあります。新生児の単純ヘルペスウイルス感染は重症になり後遺症などが残る可能性があるため、感染を避けるために帝王切開での分娩が必要になります。

性器ヘルペスの症状である痛みのある発疹が性器周囲にできたり、焼けるような痛みを感じたりした時には、かかりつけの産婦人科に相談してください。

4. 口唇ヘルペスの治療中に注意すること

口唇ヘルペスの治療中に注意することについて説明します。口唇ヘルペスの誘因は身体の抵抗力の低下なので、抗ウイルス薬によってウイルスの増殖を抑え込む治療を行うとともに、誘因となっている身体の抵抗力の低下を改善する必要があります。ストレスや疲れ、寝不足などを感じている場合には改善できるような生活を心がけてください。もともと持っている病気などが原因で免疫力が低下している場合には、なかなか改善することが難しいかもしれませんが、ゆっくりと身体を休めることは重要な治療の一つです。

次に、その他に注意する点について説明します。

食生活

口唇ヘルペスを早く治せる特定の食べ物はありません。サプリメントなどもありますが有効性についてはっきりしたものは現時点ではありません。何か特別なものを食べるよりは、バランスの良い食事を心がけてください。十分な栄養とバランスの良い食事をとることで身体の抵抗力を回復することが期待できます。

アルコール摂取・飲酒

口唇ヘルペスの治療中のアルコール摂取は禁止ではありませんがお勧めはしません。なぜならアルコール摂取により血管が拡張するため、口唇ヘルペスの痛みが増す可能性があるからです。また飲酒は眠りを浅くするため、効果的な睡眠をとるためにも過量の飲酒は避けた方が良いです。

5. 口唇ヘルペスをまわりにうつさないための対処方法

口唇ヘルペスは水ぶくれの内容物や周りの皮膚、唾液などを介して周りの人にうつります。初感染時は無症状の人が9割であるため、多くの人は子どもの頃に気がつかない間に感染していて抗体を持っています。しかし、まだ感染の経験がなく抗体を持っていない可能性が高い小さな子どもには、うつさないようにすることが大切です。特に口唇ヘルペスが出ている人が小さな子どもと一緒に暮らしている場合には注意が必要です。小さな子どもの初感染時はヘルペス性歯肉口内炎などの重症な症状を起こしやすいためです。ここでは、口唇ヘルペスの人が周りにうつさないためには、どのようなことに注意すれば良いのか説明します。

食器やタオルの共有を避ける

口唇ヘルペスで最も感染力が強い時は皮膚の症状が出ているときで、水ぶくれの内容物や周囲の皮膚に触れることで感染を起こします。唾液などにもウイルスが含まれるため、単純ヘルペスウイルスに感染していない人が感染している人の食器を使うとうつります。そのため食器の共有は避けます。

同様にタオルにも水ぶくれの内容物などが付着する可能性があり、感染が広がる原因になりますので、タオルの共有は避けてください。

口唇ヘルペスが治った後でも体内にはウイルスが持続感染しており、唾液にウイルスが排出されているため感染を起こすことがあります。基本的には食器やタオルは共有しない方が感染のリスクを減らすことができます。

性的接触を避ける

口唇ヘルペスができている時は、水ぶくれの内容物にも周囲の皮膚にもヘルペスウイルスがいます。皮膚から皮膚へ感染を起こしますし、皮膚から粘膜へも感染を起こします。口唇ヘルペスができている時にキスをすればうつる可能性があります。またオーラルセックスなどで相手に単純ヘルペスウイルスが感染すると性器ヘルペスを起こす可能性があります。特に口唇ヘルペスの症状が出ているときは感染力が強いので、周りへの感染を防ぐため性的接触を避けてください。

6. 口唇ヘルペスの再発予防のために気をつけること

口唇ヘルペスは身体の抵抗力が低下した時に再燃します。抵抗力が弱まりやすいことを避けることが再発予防につながります。どのようなことに注意すれば良いのか説明します。

ストレス・疲労を避ける

ストレスや疲労により抵抗力が低下します。ストレスには精神的なものも、身体的なものも含まれます。ストレスや疲労自体も口唇ヘルペスの再発を引き起こしますし、疲労によって風邪をひくとそれも再発のきっかけになります。なかなかストレスを避けるのは難しいかもしれませんが、息抜きを見つけて適宜行うなど工夫してみてください。

強い紫外線を避ける

紫外線を受けると皮膚の炎症を起こすため、ヘルペスの再発が起こりやすくなります。日焼け止めを使用するなどしてみてください。唇には日焼け止め成分の入ったリップクリームなどを使用すると良いです。

バランスの良い食事をとる

口唇ヘルペスの再発を防ぐ効果的な食べ物は現時点ではありません。何か特別なものを食べるよりは、バランスの良い食事を心がけてください。

7. 口唇ヘルペスを放置した場合の経過

口唇ヘルペスを放置した場合でも、通常は1週間程度で改善します。薬を使用すると治癒の期間が短縮したり、痛みが軽くすんだりしますが、何もしなくてもほとんどが1週間、長くても2週間で改善します。

口唇ヘルペスができてから治癒までの流れは、前駆症状として皮膚のピリピリした違和感やかゆみが起きて、その1-2日後に皮膚の赤みがおき、水ぶくれができます。水ぶくれは中身が水からに変化した後に、皮膚がじゅくじゅくしてただれたようになり、その後かさぶたになって治ります。

8. 口唇ヘルペスは完治するのか

口唇ヘルペスに完治はありません。なぜなら、単純ヘルペスウイルスは感染した人の体内に生涯を通じて留まり続けるからです。体内からヘルペスウイルスを駆逐することは難しく、人によっては何度も口唇ヘルペスが再発することがあります。完治はありませんが、再発の回数を減らすために抵抗力を下げないような生活を心がけることが重要です。