高カルシウム血症の基礎知識
POINT 高カルシウム血症とは
血液中のカルシウム濃度が高い状態のことを指します。 軽度な場合は無症状のことが多いですが、重度(カルシウム濃度が高い)な場合はだるさや疲労感、食欲不振、便秘などの症状が現れます。また身体への影響としては、不整脈の原因になり、生命に関わる場合があります。原因は副甲状腺機能亢進症やビタミンDのとりすぎ、悪性腫瘍、運動不足、薬の副作用などさまざまです。高カルシウム血症が疑われる人には血液検査や尿検査、心電図検査、画像検査(超音波検査やCT検査)が行われ、原因やその程度が調べられます。高カルシウム血症の治療は水分を補って、カルシウム濃度を下げたり、血液中のカルシウム濃度を下げる薬を使います。高カルシウム血症は内分泌内科を中心とした内科で検査や治療が行われます。
高カルシウム血症について
- 血液中のカルシウム濃度が高い状態
- 主な原因
- 血中のカルシウム濃度が高くなると
意識障害 や不整脈、腎障害などの原因となるため、緊急で治療が必要になることもある
高カルシウム血症の症状
高カルシウム血症の検査・診断
- 血液検査、尿検査:血液中や尿中のカルシウムの量、
副甲状腺ホルモン の値などを調べる - 原因となる病気について調べるために、
心電図 や頸部超音波検査 、CT などの追加の検査を行う
高カルシウム血症の治療法
- 疑わしい薬剤を使用していれば内服を中断する
ビタミンD (骨粗しょう症の治療薬)投与中に高Ca血症となった場合はまずこれを中止する
- 軽症の場合、
腎機能 が正常であれば、水分を十分とるようにする- 水分は腎臓を刺激しカルシウムを排出させる
- 症状が強い場合や重症の場合は生理食塩水の点滴を行う
- 腎機能が正常ならば、利尿薬を使用することもある
- 利尿薬に加えてビスホスホネート、カルシトニン、
ステロイド薬 、プリカマイシンなどを使用する- これらの薬剤は骨からカルシウムが流出するのを抑える
- 利尿薬に加えてビスホスホネート、カルシトニン、
- 重度の高カルシウム血症の場合で他の治療を用いても効果がない場合、
透析 を行う がん が原因の高カルシウム血症は、特に治療が困難である- がんをコントロールできないと、最善の治療を行っても再発してしまう
- ビスホスホネートという薬を用いて治療することがあるが、重症の高カルシウム血症の場合は効果に乏しいことが多い
高カルシウム血症に関連する治療薬
ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)
- 骨吸収を抑える作用などにより、悪性腫瘍(がん)による高カルシウム血症やがんの骨転移による痛みなどを改善する薬
- がんがあると骨吸収(骨が壊れる過程)が増加し骨からカルシウムが血液中に放出されることで高カルシウム血症があらわれる場合がある
- がんの骨転移に伴う骨転移痛はADL(日常生活動作)やQOLを著しく低下させる要因となる
- 本剤は骨吸収抑制作用をあらわし、がんによる高カルシウム血症や骨転移痛などを改善する
- 本剤はビスホスホネート製剤(一般的には、骨粗しょう症に使われる薬)に分類される
高カルシウム血症の経過と病院探しのポイント
高カルシウム血症が心配な方
高カルシウム血症では、意識がもうろうとしたり、吐き気が出現したりします。通常高カルシウム血症になった背景にはその原因となる何らかの別の病気がありますので、高カルシウム血症だけが突然起きるという心配はあまりありません。
高カルシウム血症の診断そのものは、内科のクリニックや病院で行います。高カルシウム血症は、血液検査の結果で診断しますので、血液検査が行える医療機関であればどこでも診断が可能です。レントゲンやCTなどの画像検査で高カルシウム血症を診断することはできません。
高カルシウム血症でお困りの方
高カルシウム血症の治療では、体内に溜まりすぎたカルシウムを薄めるために、水分を大目に摂取することになります。基本的には入院の上で、点滴で必要な量の水分をとるようにします。重症の高カルシウム血症の場合には、血液透析といって、献血のように体外に一度血液を取り出して、そこから余分なカルシウムだけをフィルターで除去し、残りの血液を体内に戻すといった処置を行います。このような特別な治療が必要になる可能性を考えると、急激な高カルシウム血症の場合は入院の上での治療が必要です。
それと同時に、高カルシウム血症の原因となった何らかの病気(副甲状腺の異常や腫瘍など)が隠れていることも多いですので、そちらの病気の治療も同時に行う必要があります。