ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)
骨吸収(骨を壊す過程)を抑える作用などにより、悪性腫瘍(がん)による高カルシウム血症やがんの骨転移による疼痛(骨転移痛)を改善したり骨折などの骨病変を予防する薬

ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)の解説

ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)の効果と作用機序

  • 骨吸収を抑える作用などにより、悪性腫瘍がん)による高カルシウム血症やがんの骨転移による痛みなどを改善する薬
    • がんがあると骨吸収(骨が壊れる過程)が増加し骨からカルシウムが血液中に放出されることで高カルシウム血症があらわれる場合がある
    • がんの骨転移に伴う骨転移痛はADL(日常生活動作)やQOLを著しく低下させる要因となる
    • 本剤は骨吸収抑制作用をあらわし、がんによる高カルシウム血症や骨転移痛などを改善する
  • 本剤はビスホスホネート製剤(一般的には、骨粗しょう症に使われる薬)に分類される

ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)の薬理作用

悪性腫瘍(がん)があると骨吸収(破骨細胞の働きにより骨からカルシウムやコラーゲンなどが溶け出し骨が壊れる骨の代謝で、溶けたカルシウムは再度血液中に運ばれる。)が増加する場合がある。骨からカルシウムが放出されることで高カルシウム血症が起こる場合があり、多発性骨髄腫、肺がん、乳がんなどではよく認められる。

血液中のカルシウム濃度が高くなる原因は局所で破骨細胞活性化因子を含むサイトカインなどを放出する骨融解型転移悪性腫瘍によるもの、腫瘍によるPTHrP(副甲状腺関連ペプチド)と呼ばれる骨吸収を亢進させる物質の分泌によるもの、腫瘍による活性型ビタミンD(カルシトリオール)の産生によって腸管からのカルシウム吸収の増加や骨吸収増加によるもの、異所性のPTH(副甲状腺ホルモン)の産生によるものなどが考えられている。

がんの骨転移に伴う疼痛があらわれる仕組みは明確には解明されていないが、骨転移の進展による様々なホルモンやサイトカインといった体内物質の放出、骨吸収の進行、マクロファージの活性化などが考えられている。

本剤はビスホスホネート製剤(一般的には、骨粗しょう症の治療に使われる薬)に分類される薬で、主に骨吸収を抑制する作用をあらわす。

本剤は破骨細胞に取り込まれ、破骨細胞の自滅(アポトーシス)の誘導作用や機能喪失作用をあらわす。これにより、骨から血液中へのカルシウムの輸送が抑えられ、血液中のカルシウムは骨芽細胞により骨の形成に使われ、血液中のカルシウム濃度が低下する。これらの作用により本剤は高カルシウム血症の改善効果、がんが骨に転移したことで引き起こされたり多発性骨髄腫によって引き起こされる骨の痛みを減少させる効果や骨折などの骨病変を予防する効果をあらわす。

本剤の中でもゾレドロン酸水和物は既存のビスホスホネート製剤と比べて強い薬理作用をあらわすことが確認されていて、がんの骨転移による疼痛緩和に有用とされている。

ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)の主な副作用や注意点

  • 全身症状
    • 発熱、倦怠感などがあらわれる場合がある
  • 血液系症状
    • 貧血血小板減少、白血球減少などがあらわれる場合がある
  • 急性腎障害、間質性腎炎
    • 尿量が少なくなる、ほとんど尿が出ない、一時的に尿量が多くなる、発疹むくみ、体のだるさなどがみられた場合は放置せず医師や薬剤師に連絡する
  • 顎骨壊死
    • 非常に稀だが、本剤による治療中に局所への放射線治療、抜歯などの歯科処置、口腔内不衛生などの条件が重なった場合、あごの骨の炎症などがあらわれる可能性がある
    • 「口の中の痛み」「歯ぐきに白色あるいは灰色の硬いものが出てきた」「あごが腫れてきた」「歯がぐらついてきて自然に抜けた」などの症状がみられた場合は放置せず医師、歯科医師、薬剤師に連絡する

ビスホスホネート製剤(悪性腫瘍による高カルシウム血症などの治療薬)の一般的な商品とその特徴

ゾメタ

  • ゾレドロン酸水和物製剤
    • ビスホスホネート製剤の中でも強い薬理作用をあらわすとされる
    • 本剤と同成分の骨粗しょう症治療薬(リクラスト点滴静注液)がある
  • 主な使用用途
  • ゾメタ点滴静注4mg/100mlに関して
    • 薬液を希釈することなく、点滴静注することが可能なボトル製剤