かしじょうみゃくりゅう
下肢静脈瘤
ふくらはぎやスネの血管(静脈)が蛇行して、浮き出た状態
9人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2025.01.24

下肢静脈瘤について知っておきたいこと

下肢静脈瘤とは、足の血管が瘤(こぶ)のようにふくらんだり蛇行したりする病気です。命に関わるものではありませんが、見た目が気になったり、足のむくみやだるさを引き起こすことがあります。このページでは、下肢静脈瘤ができやすい人の特徴や予防する方法など、下肢静脈瘤について知っておくと良いさまざまな知識を説明しています。

1. 下肢静脈瘤ができやすい人について

下肢静脈瘤ができやすい人の特徴は、これまでの研究でいくつか報告されています。具体的には以下があげられます。

  • 高齢である
  • 家族に下肢静脈瘤の人がいる
  • 複数回の妊娠・出産をしている女性
  • 長時間の立ち仕事をしている

それぞれについて説明します。

◎高齢である

下肢静脈瘤は、男女とも年齢が上がるにつれてできやすくなると言われています。

静脈は血液が心臓に戻るための通り道であり、逆流しないように内部に「弁」が付いています。下肢静脈瘤の多くは、皮膚の近くを走る表在静脈の「弁」がうまく働かなくなることが原因で起こり(一次性静脈瘤)、心臓へ向かうはずの血液が重力に引っ張られて逆流し、足に溜まって生じます。年とともに長いあいだ静脈内の弁に負荷がかかり続けることで、弁の機能が衰えていくと考えられています。

高齢の人では特に、下肢静脈瘤が進行すると引き起こされる皮膚の症状(色素沈着湿疹など)が現れやすいともいわれています。

加齢は誰しも避けられないものですが、少しでも下肢静脈瘤が進行するのを遅らせるためにも、下記の「2.下肢静脈瘤を改善・予防するためにできること」で説明している対策を取り入れてみてください。

◎家族に下肢静脈瘤の人がいる

下肢静脈瘤ができる要因として、遺伝的な要素は大きいといわれています。家族に下肢静脈瘤の人がいる人は、いない人よりも将来下肢静脈瘤ができる可能性が高いと考えられます。とくに両親とも下肢静脈瘤の人は、その子どもも高い確率(ある報告では85%)で下肢静脈瘤ができるといわれています。当てはまる人は、将来自分にも下肢静脈瘤ができる可能性を考えて、予防のために下記の「2.下肢静脈瘤を改善・予防するためにできること」で説明しているような対策を取り入れてみてください。

◎複数回の妊娠・出産をしている女性

下肢静脈瘤は女性に多く、男性に比べて女性のほうがおよそ2-4倍多くみられるといわれています。例外として10代では男性のほうが多かったとの報告もありますが、20歳以上の成人ではどの年代においても女性の割合が高くなっています。

女性の中でも妊娠・出産の経験は、下肢静脈瘤ができる重要な要因の1つと考えられています。とくに妊娠・出産を2回以上経験した人は、回数が増えるにつれて下肢静脈瘤の発生率が高くなることが報告されています。そのため、まだ下肢静脈瘤がない人であっても、2回目以降の妊娠をしている人は、新たにできる可能性を考えて早めに対策を立てることをおすすめします。

◎長時間の立ち仕事をしている

下肢静脈瘤ができやすい特徴の1つに、長時間の立ち仕事があげられます。とくに男性にその傾向が強いといわれています。長時間の立ち仕事の中でも、調理師や美容師など、1つの場所で棒立ちの状態が続くような人は注意が必要です。

足(とくにふくらはぎ)の筋肉は、動かすことで静脈の血液を心臓のほうへ送るポンプの働きをしています。立ちっぱなしはこのポンプ機能を使っていない状態になるので、血液が足側にたまって浮腫み(むくみ)やすくなります。作業の合間にはできるだけ足踏みをしたり、足首を回したりすることが大切です。

他にも、長時間イスに座ったまま作業をする人、足に力を入れるスポーツの経験がある人、肥満の人や身長が高い人、激しい咳を繰り返すような肺疾患がある人なども下肢静脈瘤ができやすい可能性が報告されています。下肢静脈瘤は一度できてしまうと自然に治ることはなく、時間が経つとゆっくりではありますが進行していく病気です。下肢静脈瘤ができやすい特徴に当てはまった人は、少しでも静脈瘤ができる可能性を低くするために、下記の「2.下肢静脈瘤を改善・予防するためにできること」の対策を取り入れてみてください。

2. 下肢静脈瘤を改善・予防するためにできること

下肢静脈瘤は一度できると自然に治ることはなく、ゆっくりと進行していく病気です。また遺伝的な要素もあり、下肢静脈瘤ができるのを完全に予防する方法は確立されていないのが現状です。

ここで紹介するのは、下肢静脈瘤の症状を少しでも軽くしたり、進行を遅らせたりするためにできることです。まだ下肢静脈瘤ができていない人にとっては、予防にもつながると考えられますので、参考にしてみてください。

具体的な対策は以下のようになります。

【下肢静脈瘤の対策法】

  • 足の運動・体操をする
  • 足のマッサージをする、足を高くして寝る
  • 弾性ストッキング(サポートストッキング)を履く
  • 締め付けの強い下着や衣服は避ける

静脈瘤の症状には、足の浮腫み(むくみ)やだるさ、かゆみ、痛みなどがあります。これらの症状はすべて、足に血液が溜まることが原因で起こります。したがって足側に溜まっている血液をできるだけ心臓のほうへ返すことで、これらの症状を和らげることができます。

それぞれの対策法について以下で詳しく説明します。

◎足の運動・体操をする

足側に溜まっている血液を心臓のほうへ流すには、できるだけ足を動かすのが効果的です。足の筋肉には、膨らんだり縮んだりして静脈の血流を心臓に向かって送り出すポンプ作用があり、足を動かすことで機能します。足踏みをしたり、足首を回したりしてふくらはぎを中心に足の筋肉を定期的に動かすように意識してください。

◎足のマッサージをする、足を高くして休む

足のマッサージや足を高くして休むのも、足側に溜まっている血液を心臓のほうへ戻すことが目的です。仕事や作業を中断できるのであれば、定期的に足のマッサージをしたり、足を椅子の上に乗せるなどして高くあげたりしてみてください。また、夜寝るときは、足の下にも枕を敷いて、寝床から10cmほど高くするだけでも効果があります。

◎弾性ストッキング(サポートストッキング)を履く

弾性ストッキングを履くのは、いわゆる圧迫療法を行うことと同じです。圧迫療法は下肢静脈瘤の最も重要な治療で、症状を和らげ進行を遅らせることにつながります。(圧迫療法の詳細については「下肢静脈瘤の治療について」のページを参考にしてください。)

弾性ストッキングは医療用のストッキングなので、医療機関での診察を受けて、お医者さんや看護師さんから装着方法などを指導してもらう必要があります。

まだ医療機関にかかるほどではないけれども、下肢静脈瘤の進行を遅らせたいと考えている人もいると思います。サポートストッキングとは、市販の圧着ストッキングのことを指していて、こちらは診断書がなくてもお店で簡単に手に入ります。サポートストッキングは、医療用の弾性ストッキングに比べると締め付けは弱いものになりますが、効果がないわけではありません。とくに気になる人は、サポートストッキングを重ね履きする方法もあります。ただし、長時間の着用は皮膚の負担にもなりますので、寝るときは必ず外すなどしてつけっぱなしにならないように注意してください。

◎締め付けの強い下着や衣服は避ける

お腹の締め付けが強い下着(ガードルや骨盤矯正下着など)や衣服は避けたほうがよいといわれています。下肢静脈瘤の人は、本来は心臓のほうへ戻るべき血液が戻れずに足側に溜まっている状態にあります。お腹が締め付けられる影響で足の静脈の圧が高まりさらに足側の血液が滞りやすい状況を引き起こします。足側に溜まった血液が少しでもスムーズに流れるように、あまり締め付けすぎないものを着用するほうがいいです。

上記は自宅でも取り組みやすい方法について説明しました。足がだるい、浮腫む(むくむ)などの症状がなかなか改善しない時には、他の病気が隠れていることもありますので医療機関を受診するようにしてください。

3. 下肢静脈瘤が進行したときに起こる症状とやるべき対策について

下肢静脈瘤は急激に進行する病気ではありませんが、自然に治ることはありません。下肢静脈瘤の中でも伏在型静脈瘤といわれるタイプの人はゆっくりではありますが進行していくといわれています。進行した時に現れる症状には注意が必要なものがあります。以下で詳しく解説していますので、参考にしてください。

皮膚障害(色素沈着や潰瘍など)が現れた人

下肢静脈瘤の症状が進行すると、皮膚障害として色素沈着や湿疹潰瘍(かいよう)などが現れることがあります。

下肢静脈瘤があるところでは、たとえ小さな傷であっても潰瘍(かいよう)ができるきっかけになり得ます。一度潰瘍(かいよう)ができてしまうと治りが悪く、長引くことが多いです。このような時には、自宅で様子を見ずに早めに医療機関を受診してください。

また、皮膚障害ができるだけ起きないようにするためにも、下肢静脈瘤が徐々に進行してきている人は、日常的に圧迫療法を行い、できるだけ足の怪我をしないように気をつけることが大事です。弾性包帯や弾性ストッキングは初めのうちは履くのが難しいと感じられますが、毎日続けていればすぐに慣れますし、静脈瘤の人にとっては重要な治療法です。ただし、圧迫療法は静脈瘤の根本的な治療にはなりません。症状が少し軽くなったからといって自己判断で中止するのではなく、かかりつけのお医者さんに相談するようにしてください。

悪化する前に早めに手術による治療を受けるのも、進行する下肢静脈瘤に対する解決法の1つです。

血栓性静脈炎(血の塊ができて起きた炎症)がある人

血栓性静脈炎とは、足や腕の皮膚の表面を走る静脈(表在静脈)の中に、血の塊(血栓)ができて炎症が起きた状態のことをいいます。、下肢静脈瘤の人では、血液が滞っている足の表在静脈に血栓性静脈炎が起きることがあります。

血栓性静脈炎の症状には以下があげられます。

  • 静脈に沿って硬いしこりができる
  • しこりに痛みがある
  • 静脈に沿って赤く腫れる

血栓性静脈炎は同じ静脈に繰り返すこともあり、次第に炎症を起こした血管が硬く板のようになる人もいます。血栓性静脈炎は命に関わるような重篤な状態になることはなく、自然に治ることが多いです。炎症を抑える薬や痛み止めを使って様子をみることになります。

血栓性静脈炎は、静脈瘤に合併して起こることが多いですが、以下のようなきっかけや病気で起こることもあります。

他にも腎炎、肝疾患、妊娠、経口避妊薬などが原因で血栓ができやすくなる人もいます。病気が隠れている可能性もありますので、繰り返す人は医療機関を受診するようにしてください。

また、非常にまれではありますが、血栓性静脈炎が次の深部静脈血栓症を引き起こすこともあります。

深部静脈血栓症が起きた人

深部静脈血栓症は、DVT(Deep vein thrombosis)と呼ばれることもある病気で、足の深部静脈に血の塊(血栓)ができている状態を指します。足の静脈には、足の表面を走っている表在静脈と、足の深い部分を走っている深部静脈の大きく2つの流れに分かれます。さらに表在静脈と深部静脈をつなぐ交通枝(穿通枝)という細い血管が存在します。血栓性静脈炎は、主に表在静脈にできた血栓の病気を意味していて、深部静脈に血栓ができる深部静脈血栓症とは区別されています。

下肢静脈瘤の中でも表在静脈そのものに問題がある一次性静脈瘤の人では、比較的まれではありますが、合併症として深部静脈血栓症を起こすことがあります。報告によりますと、深部静脈血栓症を起こす確率は、0.5-5.3%といわれています。

静脈瘤は表在静脈にできるものなので、深部静脈に血栓ができることを疑問に思う人がいるかもしれません。実は、交通枝の近くの表在静脈に血栓ができてしまうと、その血栓が交通枝を通って深部静脈に流れこむことがまれにあります。これは、下肢静脈瘤の治療法の一つである血管内焼灼術を行った後に起きやすいともいわれています。

深部静脈血栓症の症状には以下があげられます。

  • 足全体が赤く腫れる
  • 足に強い痛みがでる
  • ふくらはぎを掴むと痛みがある
  • 発熱や寒気など全身の症状があらわれる

深部静脈血栓症は、血栓性静脈炎に比べて足全体に強い症状が現れることが多いです。

深部静脈の中に血栓があると、そこからさらに血栓が肺動脈へ飛んで肺塞栓症を起こす可能性が高まります。肺塞栓症エコノミークラス症候群ともよばれる病気で、命に関わる重篤な状態に陥ることがあるので注意が必要です。そのため、深部静脈血栓症であることがわかった人には、すぐに血栓を溶かすための治療が行われます。上記の症状がある人は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

【参考文献】

・日本皮膚科学会 創傷・熱傷褥瘡ガイドライン委員会, 創傷・褥瘡熱傷ガイドライン―5:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン, 日皮会誌:127(10),2239-2259,2017.・「イヤーノート2018」、(岡庭 豊 /編)、メディックメディア、2017
・「ハリソン内科学第5版」(福井次矢, 黒川 清 /監)、MEDSi、2017
・「NEW外科学改訂第3版」(出月康夫, 古瀬彰, 杉町圭蔵/編)、南江堂、2012
・広川雅之ほか 下肢静脈疾患における外科治療ー根治性と低侵襲性を目指したアプローチー 脈管学 2003, 43(4): 111-116
・佐戸川弘之、横山斉:下肢静脈瘤の病因と病態. 日本臨床 75(5):514-518, 2017
・下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン2019、 日本静脈学会. 日本静脈学会ガイドライン委員会
・清水康廣、杉山悟:疫学・病因. Vascular Lab 2008 Vol.5 no.3 : 206-208