かしじょうみゃくりゅう
下肢静脈瘤
ふくらはぎやスネの血管(静脈)が蛇行して、浮き出た状態
9人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2025.01.24

下肢静脈瘤とはどんな病気なのか:症状、検査、治療などの概要

下肢静脈瘤とは、足の血管が瘤(こぶ)のようにふくらんだり蛇行したりする病気です。病名は聞いたことがなくても、足の血管がモヤモヤと青く浮き上がっていたり、ポコポコとふくらんでいるのを見かけたことがある人もいるかもしれません。下肢静脈瘤は足の浮腫(むく)みやだるさの原因にもなります。このページでは、下肢静脈瘤とはどんな病気なのか、その症状や治療法などについて説明していきます。

1. 足の血管が瘤(こぶ)のようにふくらむ下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは、足の皮膚表面に近い場所を流れている「表在静脈」と呼ばれる血管が、ふくらんだり蛇行したりする病気です。下肢静脈瘤があると足の血管が目立つようになるため、見た目が気になる人も多い病気です。ただし、命に関わるような状況を引き起こすことはほとんどありません。

足の静脈の種類

静脈は血管の一種で、心臓から送り出されて身体のすみずみまで行き渡った血液が再び心臓に戻るための血液の通り道です。何らかの原因で、表在静脈を流れる血液が心臓の方向に進めなくなると、重力に引っ張られた血液は逆流して足側に溜まる(うっ滞)ようになります。足側にうっ滞した血液が行き場をなくした結果、表在静脈がふくらんだり蛇行したりしているのが下肢静脈瘤です。

足の静脈は、表在静脈と深部静脈の2つの大きな流れに分かれていて、それぞれの静脈を交通枝(穿通枝)と呼ばれる細い血管がつないでいます。足の表在静脈のうち主要な血管には以下の2種類があります。

  • 大伏在静脈:足の付け根〜ふとももの内側〜ふくらはぎの内側〜足首の前側を走っている血管。通常は1本だが2-3本ある人もいる。
  • 小伏在静脈:膝の裏側〜ふくらはぎの後ろ側〜足首の後ろ側を走っている血管。通常は1本ある。

下肢静脈瘤の分類

下肢静脈瘤で血管がふくらむ様子には、上記の主要な2本の血管とそこから枝分かれした細い血管をもとに以下のように形態分類されています。

【下肢静脈瘤の主な分類】

  • 伏在型静脈瘤:本幹型静脈瘤ともいって最も多いパターン。大・小伏在静脈そのものにできている静脈瘤。ふとももやふくらはぎ、足先にかけて血管が太く、瘤(こぶ)がいくつも盛り上がって見える。
  • 小静脈瘤
    • 側枝型静脈瘤:分枝静脈瘤ともいって、伏在静脈に合流する手前の細い表在静脈にある静脈瘤。伏在型静脈瘤と併せて起こることが多い。
    • 網目状静脈瘤:表在静脈のうち血管径が2-3mmの、青く網目状に拡張している静脈瘤。膝の裏側に現れやすい。
    • クモの巣状静脈瘤:表在静脈のうち血管径が1mm以下の、細くて紫紅色の静脈瘤。膝の裏側に現れやすい。

伏在型静脈瘤は太い血管である大・小伏在静脈にできるため、血液のうっ滞が強く、足のだるさや痛みなどの症状も出やすいタイプです。放置していると、症状は徐々に悪化して皮膚の障害を起こすこともあるので、気になる人は医療機関を受診するようにしてください。

伏在型以外の側枝型、網目状、クモの巣状静脈瘤の3つは、小静脈瘤とも呼ばれます。血管が目立つようになると見た目を気にする人は多いですが、小静脈瘤ではそれ以外の症状はほとんどなく、進行することもほとんどありません。ただし伏在型静脈瘤と小静脈瘤が同時に起こることもあります。足の血管が目立つほかに足がだるいなどのつらい症状がある人は、医療機関で詳しく調べてもらうことをおすすめします。

2. 下肢静脈瘤の人によく見られる症状について:足のむくみや痛みなど

下肢静脈瘤は足の静脈の血流が滞っている状況です。これによって次のような症状が引き起こされます。

  • 初期から見られる症状について
    • 足の血管がふくらむ、蛇行する、目立つ
    • 足が浮腫む(むくむ)
    • 足がだるい、痒い、痛い、疲れやすい
    • 足がつる(こむら返り
  • 進行すると現れる症状について
    • 色素沈着湿疹があらわれる
    • 皮下脂肪が硬くなる
    • 皮膚に潰瘍(かいよう)ができる

上記に示している症状の全てが現れるわけではなく、症状の強さには個人差があります。

初期でみられるような症状は、長時間立っていた後や午後から夕方にかけて出やすくなります。長時間座って作業をした後も同様に症状が強く現れることがあります。

下肢静脈瘤が進行して重症になると、上記のような皮膚の障害が現れてきます。伏在型静脈瘤がある人は、ゆっくりではありますが進行していくことが多いです。気になる人は早めに医療機関を受診してみてください。

下肢静脈瘤の症状については、こちらのページに詳しい説明があるので参考にしてください。

3. 下肢静脈瘤は原因別に2つのパターンに分けられる:一次性静脈瘤と二次性静脈瘤について

下肢静脈瘤には一次性原発性)静脈瘤と、二次性続発性)静脈瘤があります。一次性静脈瘤は、足の表在静脈そのものに問題があってできる静脈瘤のことです。一方、二次性静脈瘤とは表在静脈以外の問題が引き金となってできた静脈瘤のことを指します。

それぞれの静脈瘤ができる原因について以下で説明します。

一次性(原発性)静脈瘤ができる原因について

一次性静脈瘤は、静脈の内側の壁についている逆流防止弁が働かなくなったこと(機能不全)が原因で起きるものを指します。

静脈は血液を身体の末梢から心臓の方向へ流すための血管で、心臓より下にある血管では血液を重力に逆らった方向に運ぶ必要があります。そこで静脈の内側の壁には通常、血液の逆流を防ぐための弁が備わっています。この弁が機能しなくなると血液は重力に引っ張られて逆流し、足側に血液がうっ滞して瘤(こぶ)ができていきます。

逆流防止弁が働かなくなってしまう詳しいメカニズムについてはまだ分かっていません。この逆流防止弁は一度壊れてしまうと元に戻ることはなく、静脈瘤が自然に治ることはまずありません。

二次性(続発性)静脈瘤ができる原因について

二次性静脈瘤は、足の表在静脈以外の要因が引き金となって表在静脈の中で血液がうっ滞するものを指します。具体的に挙げられる要因は以下のとおりです。

上記に示すような状態があると、深部静脈の血液の流れが妨げられます。そのために行き場のなくなった血液が逆流して表在静脈へ流れ込んできます。深部静脈は、正常であれば足を流れる静脈血の8-9割が通る大事な血管です。この深部静脈を流れるはずの大量の血液が表在静脈へ流れ込み、処理しきれずにうっ滞することで静脈瘤ができてしまいます。

二次性静脈瘤の人に対しては、静脈瘤ができた原因を除去するための治療と圧迫療法が同時に行われます。二次性静脈瘤の人に対して静脈瘤の手術が行われることは基本的にありません。

4. 下肢静脈瘤の検査について:身体診察や画像検査など

下肢静脈瘤の診察や検査では、静脈瘤ができている範囲やその原因などを調べることを目的として行われます。主に以下の検査が行われます。

  • 問診:身体診察の前に行われる状況確認
  • 身体診察:視診、聴診、触診など
  • 血液検査
  • 画像検査
    • 下肢静脈造影検査
    • 下肢造影CT検査
    • 下肢カラードプラエコー検査
    • 下肢MRI静脈撮影
    • 下肢静脈脈波検査
  • ABI(下肢圧/上肢圧比):足と腕の血圧値の比較

下肢静脈瘤は一般外科や心臓血管外科、循環器内科などで精密検査をすることが多いです。検査についての詳しい説明については、こちらのページを参照してください。

5. 下肢静脈瘤の治療について:圧迫療法や手術について

下肢静脈瘤の治療法には、手術を行わない保存的治療(圧迫療法)と、手術療法の大きく2つがあります。治療の具体的な方法を以下に挙げます。

  • 保存的治療:圧迫療法
    • 弾性包帯
    • 弾性ストッキング
    • サポートストッキング
  • 手術による治療
    • 足の静脈を抜き取る:抜去切除術(ストリッピング法)
    • 足の付け根で静脈をしばる:高位結紮術
    • 瘤に薬を注射してかためる:硬化療法
    • 血管内を焼いて塞ぐ:血管内焼灼術(レーザー治療、ラジオ波治療)
    • 内視鏡を使って血管を切り離す:内視鏡下下肢静脈瘤不全穿通枝切離

下肢静脈瘤はそれ自体が命に関わるような病気ではなく、全ての人に積極的な治療がすすめられるわけではありません。しかし、静脈瘤が自然に治ることはなく、ゆっくりではありますが進行していく病気です。重症になると皮膚に障害が現れたり炎症が起きたりして、日常生活で不便が生じてくることがあります。

下肢静脈瘤がある人は、まずは詳しい検査が行われたうえでそれぞれにあった治療がすすめられます。気になる人は、医療機関へ相談してみてください。

下肢静脈瘤の詳しい治療内容については、こちらのページを参考にしてください。

6. 下肢静脈瘤について知っておきたいこと:血栓症との関連や予防について

静脈瘤と聞くと血栓症との関わりが気になる人も多いと思います。ここでは、血栓症と下肢静脈瘤の予防法などについて説明します。なお、以下で説明していることを含めてさらに詳しい解説については、「下肢静脈瘤について知っておきたいこと」のページを参照してください。

血栓症と下肢静脈瘤について

血栓症とは、血管の中に血の塊(血栓)ができることを指しています。

足の静脈には、足の表面を走っている表在静脈と、足の深い部分を走っている深部静脈の大きく2つの流れに分かれ、両者は交通枝(穿通枝)という細い血管で繋がっています。同じ足の静脈ではありますが、血栓ができた時には病状も治療法も異なるので区別することが重要です。表在静脈にできる血栓症を血栓性静脈炎、深部静脈にできる血栓症を深部静脈血栓症といいます。それぞれについて以下で説明します。

血栓性静脈炎について

血栓性静脈炎とは、足や腕の皮膚の表面を走る静脈(表在静脈)の中に、血の塊(血栓)ができて炎症が起きた状態のことをいいます。足の表在静脈に血栓性静脈炎が起きた人のほとんどは、静脈瘤による血液のうっ滞が原因といわれています。

血栓性静脈炎の症状には以下があげられます。

  • 足の表在静脈に沿って硬いしこりができる
  • しこりに痛みがある
  • 静脈に沿って赤く腫れる

血栓性静脈炎は同じ静脈に繰り返しできることもあり、次第に炎症を起こした血管が硬く板のようになる人もいます。血栓性静脈炎は命に関わるような重篤な状態になることはなく、自然に治ることが多いです。炎症を抑える薬や痛み止めを使って様子をみることになります。ただし、非常にまれではありますが、血栓性静脈炎が次に説明する深部静脈血栓症を引き起こすこともあります。

深部静脈血栓症について

深部静脈血栓症は、DVT(Deep vein thrombosis)と呼ばれることもある病気で、足の深部静脈に血の塊(血栓)ができている状態を指します。深部静脈の中に血栓ができると、そこからさらに血栓が肺動脈へ飛んで肺塞栓症を起こす可能性が高まります。肺塞栓症エコノミークラス症候群ともよばれる病気で、命に関わる重篤な状態に陥ることがあるので注意が必要です。

下肢静脈瘤において、深部静脈血栓症が関わる状態には二通りあります。

一つは、下肢静脈瘤が引き金となって深部静脈血栓症が後から生じる場合です。静脈瘤である人の多くは、表在静脈そのものに問題がある一次性静脈瘤です。一次性静脈瘤の人はその合併症として比較的まれですが深部静脈血栓症を起こすことがあります。報告によりますと、深部静脈血栓症を起こす確率は、0.5-5.3%とされています。

もう一つは、下肢静脈瘤を起こしている原因が深部静脈血栓症である場合です。この静脈瘤は二次性静脈瘤と呼ばれ、治療は基本的に静脈瘤の手術は行われません。深部静脈血栓に対する治療が行われ、同時に弾性包帯や弾性ストッキングを使って足を圧迫する圧迫療法が行われます。

下肢静脈瘤を予防・改善するためにできること

下肢静脈瘤は一度できると自然に治ることはなく、ゆっくりと進行していく病気です。また遺伝的な要素もあり、下肢静脈瘤ができるのを完全に予防する方法も確立されていないのが現状です。 ここで紹介するのは、下肢静脈瘤の症状を少しでも軽くしたり、進行を遅らせたりするためにできることです。まだ下肢静脈瘤ができていない人にとっては、予防にもつながると考えられますので、参考にしてみてください。 具体的な対策は以下のようになります。

  • 足の運動・体操をする
  • 足のマッサージをする、足を高くして寝る
  • 弾性ストッキング(サポートストッキング)を履く
  • 締め付けの強い下着や衣服は避ける

これらは足側に溜まっている血液をできるだけ心臓のほうへ返すのに有効な方法です。少しでも普段の生活に取り入れるように意識してみてください。詳しい説明はこちらのページにありますので参照してください。

【参考文献】

・日本皮膚科学会 創傷・熱傷褥瘡ガイドライン委員会, 創傷・褥瘡熱傷ガイドライン―5:下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン, 日皮会誌:127(10),2239-2259,2017.
・「イヤーノート2018」(岡庭 豊 /編), メディックメディア, 2017
・「ハリソン内科学第5版」(福井次矢, 黒川 清 /監), MEDSi, 2017
・「NEW外科学改訂第3版」(出月康夫, 古瀬彰, 杉町圭蔵/編)、南江堂、2012
・広川雅之ほか 下肢静脈疾患における外科治療ー根治性と低侵襲性を目指したアプローチー 脈管学 2003, 43(4): 111-116
・佐戸川弘之、横山斉:下肢静脈瘤の病因と病態. 日本臨床 75(5):514-518, 2017
・下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン2019、 日本静脈学会. 日本静脈学会ガイドライン委員会
・清水康廣、杉山悟:疫学・病因. Vascular Lab 2008 Vol.5 no.3 : 206-208