ねっちゅうしょう
熱中症
高温環境にいることで身体に様々な変調をきたした状態
10人の医師がチェック 106回の改訂 最終更新: 2023.11.06

熱中症の基礎知識

POINT 熱中症とは

体温の上昇で身体にさまざまな症状が現れる状態です。熱中症は熱失神や熱けいれん、熱疲労など様々なパターンがあります(それぞれのパターンで現れる症状は下記を参考にしてください)。軽症の人はめまいや筋肉痛などが現れ、重症の人は呼びかけに応じなくなったり、けいれんを起こすこともあります。熱中症の診断は発症の状況や体温によって行われ、水分の補給と身体の冷却によって治療が行われます。熱中症が疑わしい人がいる場合は、救急外来や内科を受診してください。熱中症の人全員が医療機関を受診する必要があるわけではなく、水分補給や涼しい場所での安静で様子をみることができます。しかし、判断に迷う場合には受診をお勧めします。

熱中症について

  • 周囲の気温の上昇や過度の運動により、体温が上昇して発生する健康障害のこと
    • 脱水症が起こったり電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスが崩れたりすることで発症する
  • 青少年と中高年に多い
    • 青少年では運動が原因になりやすい
    • 中高年では労働環境や生活環境の問題から起こるケースが目立つ
    • 女性より男性に多い
  • 熱中症は以下の4つに分類される
    • 失神:めまい、一時的に失神する、顔面が真っ青になる(顔面蒼白)
    • 熱けいれん:筋肉痛、手足がつる、筋肉が痙攣する
    • 熱疲労:全身が重だるい(倦怠感)、頭痛、寒気、嘔吐、集中力や判断力が低下する
    • 熱射病:発熱、意識障害(呼びかけや刺激に対して反応が鈍い)、言動が不自然、ふらつく
  • 運動中などに熱中症が発生したら?
    • 「冷却」と「水分補給」が何よりも重要
      • 運動を中止し、涼しいところへ移動する。(風通しの良い日陰、クーラーの効いている室内で安静に過ごす。足を高くして寝かせる)
      • 衣服をゆるめ体を冷やす
      • 塩分を含んだ水分の摂取を促す。水分補給のため「経口補水液(OS-1など)」や「スポーツ飲料に食塩を少量加えたもの(1Lに対して食塩小さじ1/2程度)」を摂取させる
      • 回復した後もすぐに運動は再開しない
  • 救急車は呼んだ方がいいのか?
    • 軽い熱中症であれば「冷却」、「水分補給」で回復することが多い 
    • 救急車を要請するべきなのは以下の場合
      • 「冷却」と「水分補給」をしても軽快しない場合
      • 熱射病の症状が出ている場合
      • 救急車の到着を待つ間も、積極的に水や濡れタオルなどで体を冷やす
詳細な情報を見る

熱中症の症状

  • 症状は、その重さに生じて3種類に分けられる
    • I度(軽度)
    • II度(中等度)
      • 頭痛
      • 気分の不快(吐き気、嘔吐)
      • 全身のだるさ
    • III度(重症)
      • 意識障害
      • 全身のけいれん
      • 活動性の低下
      • 高体温
症状の詳細

熱中症の検査・診断

  • 体温測定:熱がないかを調べる
  • 血液検査
    • 大量の発汗でミネラルバランスが狂っていないかを調べる
    • 脱水で腎臓の機能が悪くなっていないかを調べる
検査・診断の詳細

熱中症の治療法

  • I度の治療
    • ナトリウム含有液の経口摂取(口から摂取する方法)
    • 手軽に手に入るものとしては、市販のスポーツドリンクなど
  • II度の治療
    • 経口摂取あるいは輸液(点滴)による塩分と水分の補給
    • 血液検査の異常を伴う場合は入院治療を行う
  • III度の治療
    • 原則として入院した上で、点滴治療
      • 重症の場合には、集中治療室で治療を行う
    • 輸液による水分・塩分補正
    • 冷却により体温をより早く40℃以下にする
    • 重度の熱射病では集中治療(人工呼吸器や血液透析など)を行う
  • 予防、再発予防方法
    • 高温高湿度での運動や労働を避ける
    • 水分を十分に補給する
    • 水分だけでなく塩分も補給する
    • 通気性のよい涼しい格好にし、直射日光があたる場合は帽子を着用する
    • 体を冷やす場合には、首や脇、足の付け根など動脈が近い場所を冷やすと良い
    • 室内で過ごす際にも空調機を使って部屋の温度を下げ適温を保つようにする
治療法の詳細

熱中症の経過と病院探しのポイント

熱中症が心配な方

熱中症では、筋肉がつったり、頭がぼーっとしたり、あるいは嘔吐やだるさといったような症状が出ます。暑い環境で作業や運動をしていた後からこのような症状が出現した場合には熱中症を第一に考えて対応します。

「この症状が出ていれば熱中症」というように断定できる特徴的な症状はなかなかありません。汗を沢山かいて足がつる、というのは典型的な場合ですが、そうならない熱中症も多くあるためです。「もしかしたら熱中症かも」と疑われるような状況では、熱中症として応急処置、初期対応を開始することが勧められます。

救急車を呼ぶまではいかないが、症状が強い、もしくは初期対応を行っても改善しないといったような理由で病院を受診する際には、内科、もしくは救急科の受診をお勧めします。重症の熱中症以外は安静にして水分補給を行う(口から飲むか点滴をする)ことで改善しますので、必ずしも総合病院でなくとも、クリニックなどで点滴が可能であれば対応してもらうことができます。

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熱中症でお困りの方

熱中症の応急処置には以下の様なものがあります。

それ以上の悪化を避ける:熱中症の応急処置の第一歩は、まずは運動や仕事を中断し、涼しい場所へ移動することです。直射日光を避け、風通しの良い場所もしくは冷房の効いた室内へ移動します。エアコンが入っていないところであっても、室内で風通しが良い部屋に入るだけで気温は大幅に下がります。もちろん、冷房や扇風機があれば越したことはありません。

体の冷却:太い血管がある場所(首、脇の下、足の付け根)を冷やすことで、体の表面だけでなく体全体を効率良く冷やすことができます。血管の部位でなく体全体を冷やす場合には、冷たすぎる水をかけるのは避けたほうが良いと言われています。これは一見直感に反するようですが、体の表面だけを冷やすとかえって汗が出なくなり、また血管が縮こまってしまうために熱が体内にこもってしまうためです。常温からぬるま湯程度、触っても冷たくない程度の水が好ましいと言えます。おでこや首筋などを局所的に冷やすだけであれば、冷水でも問題ありません。また扇風機は、冷たい風を送るだけでなく、汗を蒸発させる際に体の熱を空気中に放出してくれるため有効です。

救急車を呼ぶかどうかの判断:意識がない、反応がにぶく会話が十分にできないなどの症状があれば、現場での応急処置をあれこれ工夫するよりも前に、速やかに病院を受診するか救急車を呼ぶことが肝心です。
ふらついたり、元気が出なかったりというだけの軽度の熱中症であれば、現場で応急処置をするだけで改善することも多いです。ただし、一度熱中症の症状があったら、少なくともその日のうちは作業や運動を中断し、安静に努めましょう。

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