ぱーそなりてぃしょうがい
パーソナリティ障害
認知や感情コントロール、対人関係などにおいて、社会の大多数の人と大きく違うことで、社会生活をうまく送れない状態
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最終更新: 2022.06.28
パーソナリティ障害の基礎知識
POINT パーソナリティ障害とは
社会の大多数の人と大きく違うことで、うまく社会生活が送れない状態のことです。認知や感情、対人関係に影響が現れます。パーソナリティ障害の中にはいくつも種類(下記参照)があり、問診などからどのパーソナリティ障害なのかが詳しく調べられ、タイプに応じて心理療法と薬物療法を組み合わせた治療が行われます。原因がはっきりとしていないために、効果的な予防法は確立されていません。パーソナリティ障害が心配な人やその家族は、精神科や心療内科で相談してください。
パーソナリティ障害について
- パーソナリティ障害とは、社会の大多数の人と大きく違うことでうまく社会生活が送れない状態
- 問題が現れる面の例
- 認知(ものの捉え方)
- 感情
- 感情コントロール
- 対人関係
- その人の生物学的特性や、苦しかった体験(虐待体験など)が関連していると考えられる
- いくつかのタイプがありアメリカ精神医学会の診断基準では大きく3つのタイプに、細かく10種のタイプに分類している
- A群(奇妙で風変わりなタイプ)
- 妄想性パーソナリティ障害 (周囲への不信感が強い)
- シゾイドパーソナリティ障害 (非社交的で他者への関心が乏しい)
- 統合失調型パーソナリティ障害(風変わりで、周囲に流されず感情があまり変わらないのが特徴)
- B群(感情的で移り気なタイプ)
- 境界性パーソナリティ障害(感情や対人関係が不安定で、衝動行為が特徴)
- 自己愛性パーソナリティ障害(自信過剰で自分の評価に強いこだわりを持つのが特徴)
- 反社会性パーソナリティ障害(反社会的で衝動的な行動が特徴)
- 演技性パーソナリティ障害(周りの注意を集めようと行動するのが特徴)
- C群(不安で内向的であることが特徴)
- 依存性パーソナリティ障害(他者へ依存が強いのが特徴)
- 強迫性パーソナリティ障害(物事に対するこだわりが強く、融通が効かないのが特徴)
- 回避性パーソナリティ障害(自分に対して自信がなく、生活にも影響するのが特徴)
- 患者本人は周囲との人間関係に悩んでいてもそれを理由に受診することは少ない
- パーソナリティ障害は、「性格が悪いこと」と誤解されることがあるが、全く違うものである
- いくつかの特徴に当てはまっても、著しく偏って柔軟性がなく持続的で苦痛などを引き起こしているのでなければパーソナリティ障害とは診断しない
- 文化的背景や社会的背景によって、パーソナリティ障害の特徴に当てはまるとみなされる内容は変わる
- ほかの精神疾患をともなう場合がある
- 気分障害や摂食障害、不安障害などをともなうこともある
パーソナリティ障害の症状
- 思春期や成人期の早期などの発達期から兆候が認められる
- 症状はパーソナリティ障害の種類によってさまざまである
- 主な症状
- 周囲と異なった行動をとってしまうため、周囲とうまく人間関係を築いたり、社会生活を送ることができない
- 本人に、自分の行動に対する問題がある、という感覚がない場合も多い
- 長期にわたり問題となる行動を繰り返していて、変えることができない
- 妄想性パーソナリティ障害
- 他人を信用できず、他人が自分に対して悪意を抱いていると疑う
- 冷淡で、人によそよそしい態度をとる
- シゾイドパーソナリティ障害
- 内向的で引っ込み思案で、自分の考えや感情に没頭している
- 他人と距離を置こうとし、親しくなることを恐れる
- 統合失調型パーソナリティ障害
- 社会的・感情的に孤立
- 思考や認知、会話の仕方などは統合失調症に似ている
- 妄想がみられることがある
- 境界性パーソナリティ障害
- 女性に多い
- 自己のイメージ、感情コントロールが不安定
- 見捨てられたと感じ、孤独を感じると、衝動的に性的無規律、薬物乱用、自傷行為に走ることがある
- 出来事や人間関係を、白か黒、善か悪で判断し、中間がない
- 自己愛性パーソナリティ障害
- 自己優越感が強く、人から褒められたがる
- 自分の価値を過大に評価しがち
- 人の欲求や信念に関しては無関心
- 反社会性パーソナリティ障害
- 男性に多い
- 他者の権利や感情を無神経に無視する
- 不満があると我慢できず、暴力的になったり敵意を示したりする
- 演技性パーソナリティ障害
- 人の注意、注目を集めようとし、話すことや振る舞いがわざとらしい
- 表現力豊かで生き生きしている一方で、深い友人関係などを築きづらい
- 依存性パーソナリティ障害
- 決断や判断を自分でできず人任せにする
- 自分の欲求よりも、依存している相手の欲求を優先させる
- 自分に対する自信がなく常に不安を感じる
- なかなか治らない病気などを持っている人に見つかることがある
- 強迫性パーソナリティ障害
- こだわりが強く、完璧主義であることが多い
- その一方で、柔軟性に欠け、世の中にうまく適応できないことが多い
- ほかの精神疾患を
合併 することが多い
パーソナリティ障害の検査・診断
- 病歴、思考や行動から診断される
- パーソナリティ障害があると判断された場合、類型ごとの診断基準を見ていき、どのタイプのパーソナリティ障害か診断する
- ほかの精神疾患を
合併 することが多いため、その精神疾患の背後にパーソナリティ障害がないかに注意する
パーソナリティ障害の治療法
- 支持的精神療法や
認知行動療法 、精神分析的精神療法などの心理療法と薬物療法がある - 不安や
抑うつ などの苦痛を伴う症状があればその軽減が最初の目標となる - 心理療法
- 支持的精神療法
- 認知行動療法
- 精神分析的精神療法
- 薬物療法
- 抗うつ薬
- 選択的
セロトニン 再取り込み阻害薬 (SSRI) - 抑うつにも衝動的な行動にも効果がある
- 選択的
- 抗けいれん薬
- 衝動的な怒りの爆発を抑えることができる
抗精神病薬 (少量)を使うこともある
- 抗うつ薬
- 原因がはっきりしていないため、効果的な予防法は見つかっていない
- 長期的な経過
- 患者と治療者が長期間、協力して治療にあたっていく必要がある
- パーソナリティ障害の症状の多くは、年齢とともに徐々に軽快する