2015.04.26 | ニュース

サイコパスの脳活動をMRIで計測

脳の特定部位に異常、研究には倫理上の問題も

from The lancet. Psychiatry

サイコパスの脳活動をMRIで計測の写真

サイコパス(精神病質者)は、共感や他者を思いやる感情が乏しく、報酬や罰にも興味を抱かないことが知られています。今回の研究では、MRIを用いて、サイコパスを伴った暴力犯罪者とサイコパスを伴わない暴力犯罪者、健常者を比べて、脳のどのような部位に違いがあるかを調べました。

◆サイコパス傾向のある者は報酬や罰の考えをあまり理解できない

多くの犯罪者は、何か自分に脅威となることが起きる場合、例えば罰を与えられる場合には、その脅威に対して攻撃的になることが知られています。しかし、反社会性パーソナリティ障害を持ち、サイコパス傾向の犯罪者は脅威に対してあまり興味を示しません。イギリスの研究チームは、その原因のひとつとして脳活動に異常があるのではないかと考えました。

今回は、MRIを用いて、サイコパスを伴う暴力犯罪者、サイコパスを伴わない暴力犯罪者、健常者の脳活動を比べました。脳活動を計測している間は、「報酬を与えたときに適切に行動を変化できるか」「罰を与えたときに適切に行動を変化できるか」という能力を見るためのゲームをしてもらいました。

 

◆罰を与えても行動を変化させることができない

調査の結果、サイコパスを伴う暴力犯罪者は、罰に応じて行動を回避したり、行動をとらないといった“行動の変化”を起こすことをしないことがわかりました。脳活動としても、報酬に関係する脳の部位や罪悪感を感じる脳の部位に異常があることが判明しました。

この理由として、サイコパスを伴う暴力犯罪者は、自分が罰の対象とならないと思って行動しており、それが犯罪に繋がっているのではないかと、研究チームは解釈しています。

 

こうした研究は非常に興味深い結果を提示してくれる反面、ある人間にサイコパス傾向があるというだけで、社会的に犯罪者のような扱いがなされてしまう可能性もあり、さまざまな倫理上の議論が必要となりそうです。

 

2019年10月7日にメドレー編集部が一部加筆修正しました。

執筆者

MT

参考文献

Punishment and psychopathy: a case-control functional MRI investigation of reinforcement learning in violent antisocial personality disordered men.

Lancet Phychiatry. 2015 Feb

[PMID: 26359751 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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