べーちぇっとびょう
ベーチェット病
主症状として口内炎、陰部の潰瘍、目の見えにくさ、発疹のほか、副症状として関節、腸、神経、血管、副睾丸が障害されうる病気。
13人の医師がチェック 236回の改訂 最終更新: 2023.06.20

ベーチェット病の難病手続きや日常生活の注意点

ベーチェット病を持っている人は日本に19,000人程度います。ベーチェット病は国の指定難病です。ここでは難病の手続きの話や日常生活での注意点に関して説明しています。

1. ベーチェット病の人はどのくらいいる?

ベーチェット病患者は日本に19,000人程度いると推定されています。男女差はほとんどなく20-40歳前後に多いとされています。

2. ベーチェット病は難病指定されているのか? 重症度基準によって医療費助成があるというのは本当か?

ベーチェット病は難病に指定されています。国が指定する重症度基準のStage 2以上の方が医療費助成の対象となります。ここでは医療費助成の申請方法に関しても説明しています。

難病指定とは?

厚生労働省は原因が十分にわかっておらず治療法が確立されていない疾患を指定難病(難病)と分類しています。難病患者の負担を軽減するため、一定の重症度を超える場合に医療費の助成があります。ベーチェット病も難病のひとつです。ベーチェット病の場合、重症度基準のStage 2以上の人が医療費の助成を受けることができます。

重症度基準

難病の医療費助成の申請

難病の医療費助成の申請は大まかに以下の手順です。自治体ごとに準備する書類が異なりますので、詳しくは住んでいる都道府県の保健所にお問い合わせください。

  • 医療費助成に必要な以下の書類を準備します。(カッコ内は入手可能な場所)
    • 臨床調査個人票(厚生労働省のホームページ、福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
    • 特定医療費支給認定申請書(福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
    • 個人番号に関わる調書(市区町村の窓口)
    • 住民票(市区町村の住民票窓口)
    • 市区町村税課税証明書(市区町村の住民税窓口)
    • 健康保険証の写し
    • その他必要なもの
  • 臨床調査個人票の記入を医師(※)に依頼します。臨床調査票は難病であることの証明(診断書)でもあるので、医師による記入が必要になります。
  • 上記の書類を揃えて、住んでいる市区町村窓口で申請します。指定難病として認定されると、医療券が発行されます。要件が満たされないと判断された場合には不認定通知が発行されます。認定の決定は、指定難病審査会で行われ、結果が出るまでには3ヶ月程度の時間がかかります。

※臨床個人調査票は難病の臨床調査個人票の記入を都道府県知事から認定された医師しか作成できません。この都道府県知事から認定された医師を指定医と呼びます。主治医が指定医であるかは主治医に直接問い合わせてください。各自治体の福祉保健局のホームページなどにある一覧などでも確認できます。

3. ベーチェット病になったらどこの病院にかかれば良い?

厚生労働省のベーチェット病研究班のホームページにおいて、ベーチェット病の診療医が紹介されています。

参考ページ:日本ベーチェット病学会「診療医一覧」(2022.3.3閲覧)

4. ベーチェット病は遺伝するのか?

ベーチェット病では病気のリスクとなる遺伝子がいくつか報告されています。しかしながら、これらの遺伝子はベーチェット病になるかを決定づけるほどのものではなく、ベーチェット病が家族内で遺伝することも多くないと考えられています。例えば、ベーチェット病との関連がよく知られる遺伝子にHLA-B51という遺伝子がありますが、この遺伝子を持っている人のどれくらいの人がベーチェット病になるかというと、1,500人に1人程度とされています。つまりHLA-B51遺伝子を持っていてもベーチェット病にならない人が大多数です。また自分や親族がベーチェット病と診断されても、子孫がベーチェット病になる恐れは大きくはありません。

5. ベーチェット病は口腔ケアが大事?

ベーチェット病では口の中を清潔に保つことが非常に大事です。口の中が不潔な状態だとベーチェット病による口内炎や口の中の潰瘍の悪化の原因になります。加えて口の中が不衛生だと口の中だけでなく、皮膚症状など他の場所のベーチェット病の症状が悪くなると言われています。そのため、ベーチェット病の人は口の中を清潔な状態に保っておく必要があります。具体的には、口の中のブラッシング(歯磨き)の徹底や虫歯がある場合は虫歯をしっかり治療すること、などが挙げられます。

6. 症状が治まっている時の心構え

ベーチェット病は症状が悪くなったり良くなったりを繰り返すことが一つの特徴とされています。今の症状が落ち着いていても、また悪くなるのではないか、と不安になることもあるかもしれません。ここでは、ベーチェット病の症状が落ち着いている時にどのような点に注意して日常生活を送ったら良いかについて説明します。

服薬をきちんと守る

冒頭で「ベーチェット病は症状が悪くなったり良くなったりを繰り返す」と書きましたが、実は新しい治療薬の登場もあり、症状がない状態を維持できるような時代になってきています。症状がない状態が続いていると「この薬は必要なのか」と疑問に思うこともあるかもしれません。しかし、ベーチェット病の治療薬は予防のために処方されることもあります。そのため、症状がない時でも処方された薬はしっかりと飲む(点眼・自己注射する)ように心がけてください。

体調の変化に注意する

ベーチェット病は悪くなる時は急激に症状が悪化することが多いです。そのため、症状が治っている時にも体調の変化に注意する必要があります。また、すでに治療中の方に関しては体調の悪化が薬の副作用などで起こっている可能性があります。そのため、体調が悪いと感じた時は、自己判断せず主治医の先生と対応を相談することをお勧めします。

7. ベーチェット病になったら将来はどうなる?

病気の見通しのことを医学用語で「予後」と呼びます。予後には大きく二つの考え方があり、ひとつは生命予後、もうひとつは機能的予後です。生命予後は言い換えれば「寿命」のことを指し、機能的予後は「後遺症を残すかどうか」ということを指します。

ベーチェット病の予後は生命予後という観点では、適切に治療をされていれば一般の方とさほど変わらないと考えられています。

一方で機能的予後に関してはベーチェット病で障害される臓器によって変わります。具体的には眼、腸管、神経、血管が障害された場合は機能的予後はあまり良くなく、後遺症を残しやすいと考えられています。ただし、生物学的製剤などの新しい薬も登場してきており、機能的予後も改善していくことが期待されています。

参考文献
・難病情報センターホームページ「ベーチェット病」(2022.3.3閲覧)