乾癬の薬がベーチェット病を改善
ベーチェット病の主要症状のひとつに「口腔内潰瘍(口内炎)」があります。ベーチェット病の治療にはコルヒチンなどの炎症を抑える薬が使用されますが、薬剤が効きにくいこともあります。そのような場合に利用できる治療法として新たに検討されたのが「アプレミラスト」です。実際の患者に使ってみた結果、効果があったという報告が出ました。
◆アプレミラストとは?
アプレミラストは、
◆ランダム化試験でベーチェット病患者へ投与
著者は次の方法でアプレミラストの効能と安全性を検証しました。
2個以上の口腔内潰瘍 が見つかったベーチェット病患者111名に対して、アプレミラスト30mgを1 日2回投与するアプレミラスト群とプラセボ群に分け、12週間にわたる治療を行った。
アプレミラスト群は全部で55名、プラセボ群は56名。対象者はどちらかの薬を12週間飲み続けました。治療する医師も、治療を受ける患者も、ランダムに割り当てられた薬がアプレミラストか偽薬なのかを知りませんでした。
アプレミラストが有効に作用しているかどうかについては、12週終了時点での口腔内潰瘍の数をはじめ、口腔内潰瘍の痛みの程度(100mmビジュアルアナログスケールで測定)などによって判断しました。
◆潰瘍の数と痛みを軽減
試験の結果は以下のとおりでした。
治療開始後、12週終了時点での平均(±標準偏差)口腔内潰瘍数については、アプレミラスト群では0.5±1.0ケ所であり、プラセボ群(2.1±2.6ケ所)と比べ
有意 に少なかった(P<0.001)。治療開始時から12週目までの口腔内潰瘍の痛みの軽減度合いの平均は、アプレミラスト群(-44.7±24.3 mm)がプラセボ群(-16.0±32.5 mm)よりも有意に高かった(P<0.001)。
このように、アプレミラストを使うグループでは、口腔内に出来る潰瘍の数が少なく、痛みも軽くなっていたという結果でした。
薬剤を投与していると心配なのが、やはり副作用の問題です。「吐き気、嘔吐、下痢については、アプレミラスト群のほうが多かった」こと、また「アプレミラストの治療を受け、深刻な副作用が出た患者が2人いた」ことが報告されています。
この研究では、「アプレミラストはベーチェット病の主要な徴候である口腔内潰瘍の治療に有効である」という立場をとりつつも、「この研究よりも大規模な集団で長期的な臨床試験を行わなければ、アプレミラストの長期的な有効性、ベーチェット病のその他の
さらに既存の治療法と比較するなどの臨床試験を通じて、アプレミラストの有効性が認められれば、新しい治療法として使われることになるかもしれません。ベーチェット病の治療戦略がより充実したものになるかどうか、期待がかかります。
執筆者
Apremilast for Behçet's syndrome--a phase 2, placebo-controlled study.
N Engl J Med. 2015 Apr 16
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。