抗インターロイキン療法とは
自己免疫疾患では免疫系細胞が間違って自分の体の成分を攻撃します。このような混乱を鎮めることのできる治療法が続々と登場しています。
免疫系細胞がだす、自分の体の成分を攻撃しろという信号(インターロイキン:IL)の伝達をブロックする、薬が多数開発され、製薬会社は激しい競争を展開しています。特に、今世紀に入って発見された細胞(Th17)とそれが出すIL-17は注目をあつめています。
乾癬患者1800人以上を対象に分析
この研究では、中等度~重度の1800人以上の患者を対象とし、IL-17の信号をブロックする新薬であるブロダルマブの効果・安全性を、既存薬ウステキヌマブ(商品名ステラーラ、別のILをブロック)および偽薬と比較する試験を行ないました。
ブロダルマブは有効
12週の試験期間後PASI 100という乾癬の重症度を示す値がブロダルマブで36.7%、ウステキヌマブ18.5%、偽薬で0.3%と、ブロダルマブの有効性が示されました。
副作用としては、白血球減少はどちらの薬でも偽薬より多く見られ、ブロダルマブで感染症の発生が多少みられました。このように、総体的にブロダルマブの有益性が示されましたが、試験中に自殺念慮が強まった患者がでました。
IL-17A抗体薬はすでにセクキヌマブ(商品名コセンティクス)が承認されています。2014年、ホスホジエステラーゼ4(PDE-4)阻害薬アプレミラスト(商品名オテズラ)がアメリカで承認されており、他の酵素阻害剤であるトファシチニブ(経口ヤヌスキナーゼ阻害薬、商品名ゼルヤンツ)の有効性も最近発表されています。
欧米で患者が多いこともあり(日本は乾癬患者数が欧米より一桁少ない)、この分野は新薬開発ラッシュ状態で選択肢は増えており、近い将来それぞれの薬を実際に使ったときの効果や副作用がはっきりしてくることが期待できます。
2016/9/28編集部追記
ブロダルマブを有効成分とする製剤のルミセフは、日本で9月30日に世界に先駆けて発売される予定です。
追記にあわせて、本文中に現れる薬剤名について商品名を追記しました。
執筆者
Phase 3 Studies Comparing Brodalumab with Ustekinumab in Psoriasis.
N Engl J Med. 2015 Oct
[PMID: 26422722]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。