クローン病の人の日常生活の注意点
クローン病は指定難病に該当し、医療費助成を得られる場合があります。ここでは医療費助成の申請法についても説明しています。また、クローン病の活動性がある時には、脂肪分の少ない食事が望ましいと考えられています。
目次
1. クローン病は難病?医療費助成はあるのか?
クローン病は難病に指定されています。国が指定する重症度基準で2点以上にあたる方と、高額な医療を継続することが必要な方が医療費助成の対象となります。ここでは医療費助成の申請方法に関しても説明しています。
指定難病とは?
厚生労働省は原因が十分にわかっておらず治療法が確立されていない疾患を指定難病(難病)と分類しています。難病では治療期間が長くなることが多く、難病患者の負担を軽減するため、医療費助成制度があります。現在300を超える病気が難病に指定されており、クローン病も難病のひとつです。クローン病の場合、以下の人が医療費の助成を受けることができます。
- 重症度分類で2点以上の人(以下のそれぞれの項目を1点と数える)
- 重症度分類が該当しない場合も高額な医療を継続することが必要な人
重症度分類は以下のような基準で判断されます。
<重症度分類>
(1)腹痛がある
(2)1日6回以上の下痢あるいは粘
(3)肛門部
(4)
(5)ぶどう膜炎、口内炎、関節炎、皮膚
(6)腹部に腫瘤が触れる
(7)体重減少がある
(8)38℃以上の発熱がある
(9)腹部に圧痛がある
(10)
※瘻孔(ろうこう)とは腸に穴があき、腸の他の部分とつながってしまうことをいいます
難病の医療費助成の申請
難病の医療費助成の申請は大まかに以下の手順で行います。自治体ごとに準備する書類が異なりますので、詳しくは住んでいる都道府県の保健所にお問い合わせください。
- 医療費助成に必要な以下の書類を準備します。(カッコ内は入手可能な場所)
- 臨床調査個人票(厚生労働省のホームページ、福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
- 特定医療費支給認定申請書(福祉保健局のホームページ、市区町村の窓口)
- 個人番号に関わる調書(市区町村の窓口)
- 住民票(市区町村の住民票窓口)
- 市区町村税課税証明書(市区町村の住民税窓口)
- 健康保険証の写し
- その他必要なもの
- 臨床調査個人票の記入を医師(※)に依頼します。臨床調査票は難病であることの証明(診断書)でもあるので、医師による記入が必要になります。
- 上記の書類を揃えて、住んでいる市区町村窓口で申請します。指定難病として認定されると、医療券が発行されます。要件が満たされないと判断された場合には不認定通知が発行されます。認定の決定は、指定難病審査会で行われ、結果が出るまでには3ヶ月程度の時間がかかります。
※臨床個人調査票は難病の臨床調査個人票の記入を都道府県知事から認定された医師しか作成できません。この都道府県知事から認定された医師を指定医と呼びます。主治医が指定医であるかは主治医に直接問い合わせてください。各自治体の福祉保健局のホームページなどにある一覧などでも確認できます。
2. クローン病の人はがんに注意が必要?
クローン病の人は健康な人に比べ、
このように書くと、心配になる方もいらっしゃると思いますが、クローン病があっても必ずがんになるわけではありません。クローン病がある人にもない人にもいくらかの率でがんが発生しますが、率を計算して比較すると、クローン病がある人のほうがいくらか高いということです。
特にクローン病の経過が長い人、これまでなかった体重減少や食欲不振などが現れた場合などは注意が必要です。気になる方は担当の医師とも相談してみてください。
3. クローン病は完治するのか?
クローン病は完治することが難しい病気です。一生涯付き合う必要がある病気と言えるかもしれません。しかし、最近では新しい治療薬の登場もあり、薬を継続することで、症状がない状態を維持できるようになりました。この状態を「寛解(かんかい)」と呼びます。寛解に至れば、病気を患っていない方々と同じように生活を送ることができます。
4. クローン病は再発するのか?
新しい治療薬の登場もあり、多くのクローン病の方で寛解に至ることができるようになりました。最初の症状が良くなって以降、一生涯寛解を維持できることもあります。しかし、残念ながら一生涯寛解を維持できるのは全員ではなく、再び症状が悪くなることも珍しくありません。
このように書くと、今の症状が落ち着いていても、また悪くなるのではないか、と不安になることもあるかもしれません。しかし、クローン病の治療は以前に比べると大きく進歩しています。新しい治療薬も登場し、症状が悪くなった時の治療の選択肢も増えています。再発に対して不安があったり、以前の症状がまた出て来ていると感じれば、担当の医師とも相談してみてください。
5. クローン病の人が妊娠・出産するときの注意点
クローン病になっても一般の方と同様に妊娠することはできます。ただし、妊娠にあたってはいくつかの注意点があります。ここではその注意点に関して説明したいと思います。
妊娠するための条件
妊娠が可能となるためにはクローン病の症状が落ち着いている必要があります。これには二つの理由があります。
一つ目の理由は赤ちゃんの発育への影響です。赤ちゃんはお母さんから栄養をもらって成長していきます。しかし、お母さんのクローン病が悪い状態で妊娠するとお腹の中の赤ちゃんへ届けられる栄養は通常より少なくなります。その結果、お腹の中の赤ちゃんの発育が遅れてしまいます。赤ちゃんが元気にお腹の中で育つという意味において、クローン病の症状が落ち着いて妊娠することが望ましいと言えます。
二つ目は妊娠中のクローン病の治療は妊娠していない時より難しくなるからです。妊娠中は治療薬が赤ちゃんに移行するリスクを考えなければなりません。また、クローン病の状態が悪く手術が必要と判断された場合も、妊娠中は手術を受けることが難しくなります。このように、妊娠中はクローン病の治療の選択肢が狭まってしまいます。そのため、妊娠中のクローン病の治療が難しくならないよう、妊娠時にはクローン病の症状が落ち着いていることが望ましいと言えます。
赤ちゃんに対する治療薬の影響
薬の効果と副作用は、医学研究として実際の患者さんに使用してもらうことで確認されています。しかし、妊婦や赤ちゃんを対象にした研究を実施するのは難しいため、赤ちゃんに対して治療薬がどのような影響を与えるのか、ということは非常に難しい問題になります。
では赤ちゃんのことを考えると妊娠中はクローン病の治療を中断した方が良いのでしょうか。最近では、妊娠中であってもクローン病の治療が必要な場合は、治療を継続すべきと考えられています。これは、治療を中断することで、もしクローン病が悪くなれば、赤ちゃんの成長という観点でも悪い影響があるからです。そのため、妊娠中は赤ちゃんに影響が少ないと想定される治療薬を選択しながら、クローン病の治療を行っていきます。
6. クローン病は遺伝するのか?
自分や家族がクローン病の場合、子どもにクローン病が遺伝するか心配な方もいらっしゃるかもしれません。実はクローン病と関連する遺伝子はいくつか報告されていますが、クローン病になるかを決定づけるほどのものではなく、
7. クローン病に整腸剤は効くのか?
近年、クローン病の発症に腸の中の
最近では腸内細菌に関連した治療として違う方法も試されています。具体的には善玉の腸内細菌のエサとなる物質を飲んだり(プレバイオティクス)、健康な人の便をクローン病の人の腸に入れる(糞便移植)ことです。今後、これらの治療法の効果が実証されれば、クローン病の一般的な治療として普及する時が来るかもしれません。しかし現時点では未知数です。
8. クローン病の日常生活での注意点
クローン病は完治することが難しく、病気との付き合いも長くなります。では、クローン病の人が日常生活を送る上で気をつけた方が良いことはあるのでしょうか。ここでは、クローン病の人の日常生活での注意点に関して説明します。
食事内容の注意点
クローン病は胃や腸などの食べ物が通過する場所に
具体的には、栄養素の中で脂肪分が炎症を誘発しやすいことが分かってるので、クローン病の症状が悪い状態の時には脂肪分があまり含まれていない食事(低脂肪食)をとることが望ましいとされています。ただし、実際にどういった食事があっているかは患者さんごとに異なる部分もありますので、具体的にどういう食事内容が望ましいかは担当の医師や栄養士とも相談してみてください。
服薬を守る
クローン病では新しい治療薬の登場もあり、多くの方で寛解に至ることができるようになりました。症状がない状態が続いていると「この薬は必要なのか」と疑問に思うこともあるかもしれません。しかし、薬を継続することで症状が抑えられていることも珍しくなく、症状がない時に薬が必要かどうかということはかなり専門的な内容です。実際には、これまでの病気の経過や各種検査結果から治療の継続が必要かどうかが判断されます。もし、治療に関して疑問に思うことがあれば、担当の医師とも相談してみてください。
体調不良を感じたら
クローン病は治療により症状が良くなっても、時間経過とともに悪くなることがあります。また、クローン病の治療ではいくつかの薬を同時に使うこともあり、副作用により体調の変化が起こることも珍しくありません。
重要な副作用が出た場合は、原因となった薬を中止する必要があります。しかし、