前立腺がんの生存率:ステージごとや転移部位別(骨・リンパ節)での生存率(余命)の解説
他の
1. 前立腺がんのステージごとの生存率
がんの生存率は主にステージごとに集計されます。
『がんの統計'24』(がん研究振興財団)によると、前立腺がんのステージごとに治療開始から5年後まで生存している割合(5年生存率)は以下のとおりです。
ステージ | 5年生存率 |
ステージⅠ | 89.6% |
ステージⅡ | 91.1% |
ステージⅢ | 86.4% |
ステージⅣ |
51.1% |
ステージはがんの広がりによって4段階に大別されたものです。ステージの詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。
次に5年生存率が大きく下がるステージ4の生存率について詳しく説明します。
2. 前立腺がんのステージ4の生存率:リンパ節転移・骨転移
前立腺がんのステージIVは最も進行した状態です。前立腺がんと診断を受けた人全体のうち約15%を占めます。ステージIVの人々の5年生存率は51.1%でした。
前立腺がんのステージIVは以下のいずれかの条件にあてはまる人です。
【前立腺がんステージIVについて】
- 前立腺がんが精嚢以外の周りの臓器に浸潤している
前立腺 以外にがんが転移 しているリンパ節転移 遠隔転移
ここでは転移がある人に焦点を絞りリンパ節転移と骨転移の2つの場所に転移をした場合の生存率について説明します。
リンパ節転移がある人の生存率
リンパ節転移が見つかる場面は2種類に分けられます。
【リンパ節転移の種類】
CT 検査などでリンパ節転移を認めた場合- 手術時に摘出された
リンパ節 から転移が見つかる場合
2つは全く別の状態なので分けて解説します。
■画像検査でリンパ節転移が見つかった場合(遠隔転移)
前立腺がんの統計を取る上ではリンパ節に転移のある人はステージⅣに分類されますが、ステージⅣには、リンパ節転移に加えて肝臓転移がある人や骨転移がある人も含まれます。このように異なる状況を一括りにして生存率を調査しているため、リンパ節転移だけをしている人の5年生存率について正確な数値ははっきりしません。
個人差はありますが、リンパ節転移のみ人はステージⅣの中でも比較的余命は長い部類に入ると一般的には考えられているので、ステージⅣの5年生存率を上回ることが十分期待できます。
■手術時に摘出されたリンパ節から転移が見つかった場合
手術で摘出したリンパ節を調べた結果、画像検査でははっきりと分からない小さな転移が見つかることがあります。 海外からの報告によると、手術結果でリンパ節転移が見つかった人に、手術後から
ただし、この報告は2009年のものであり、現在、一般的に使われている薬(エンザルタミド、アビラテロン、カバジタキセルなど)が存在しなかった時代の治療結果です。
このため、現在では生存率がこの報告に比べて高くなっている可能性も十分ありえます。
参考:J Clin Oncol. 2009;27:100-105
骨転移がある人の生存率
骨転移がある人は、「転移が骨転移のみの場合」と「転移が骨以外にもある場合」の2つに別れます。
■転移が骨転移のみの場合
転移が骨のみの場合は、一般的にはステージⅣの中でも比較的余命は長い部類に入ることが多いと考えられているので、ステージⅣの生存率を上回ることが十分にあり得ます。
また、2016年からは骨のみに転移がある人に223Ra(ラジウム223)と呼ばれる治療薬が使えるようになりました(223Raについて詳しくは「前立腺がんの治療法は?」で説明しています)。患者さんの状態によりますが、臨床試験の結果では3ヶ月から5ヶ月の余命の延長が確認されています。
■転移が骨以外にもある場合
骨以外にも転移を認める場合は、ステージⅣの生存率とほぼ同じか、それを下回る可能性があります。正確な数字がわからないのは、骨転移だけの人やリンパ節転移だけの人など状態が違う人達をひとまとめにしてステージIVとして算出していることが原因です。
3. 前立腺がんの生存率は当たるのか?
前立腺がんの生存率について解説しました。
生存率はあくまでも統計上の話です。「5年生存率80%」と言われた人の中にも、5年以内に亡くなる人が20%いるということです。中には1年程度で亡くなってしまう人もいます。反対に10年以上生き延びる人も大勢います。「5年生存率80%」と言われたときに「4年ぐらいなら確実だろう」とか「10年以上は無理だろう」と考えるのではなく、あくまで目安程度としてください。
参考:
「がんの統計'24」
「前立腺がん診療ガイドライン」
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014