きゅうせいちゅうじえん
急性中耳炎
耳の奥の中耳という場所に感染が起こる病気で、子どもに多い
24人の医師がチェック 278回の改訂 最終更新: 2026.04.03

耳が痛いのは中耳炎なの?中耳炎とは?

耳が痛い時に急性中耳炎になったかもと思った経験はあるかもしれません。ここでは急性中耳炎はどんな病気なのか、原因・症状・治療などを説明します。

1. 急性中耳炎とは?

小さい子供は、風邪を引いて鼻水がでると、繰り返し急性中耳炎になる印象を持っている人が多いと思います。急性中耳炎では身体があたたまると痛みが悪化するため、布団に入って身体が温まり、耳の痛みを感じた子供が夜中に泣きながら起きて来ることもあります。そのような時は、どう対処していいのか悩むと思います。このような時に、耳の中で何が起きているのかについて、ここでは説明します。

急性中耳炎とは鼓膜の奥の中耳と呼ばれる空間に、ウイルス細菌が感染して炎症を起こした状態です。『小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版』では「急性に発症した中耳の感染症で、耳痛(じつう)、発熱、耳漏(じろう)を伴うことがある」と定義されています。

この中で耳漏という言葉には馴染みがないと思いますのでもう少し詳しく説明します。
耳漏とはわかりやすく言うと、耳だれのことです。急性中耳炎では炎症によって鼓膜の奥にたまったが多くなると、鼓膜が少し破れて膿が外側に出てくることがあります。その出てきた膿を耳漏と呼びます。急性中耳炎で耳漏が見られた場合は、鼓膜に穴があいていることがほとんどですが、多くの人ではこの穴は自然に閉鎖します。

耳が痛い時は何科に行けば良いの?

耳が痛い時や、子供が耳の痛みを訴えた場合は何科に行けばいいか悩むかもしれません。

子供や赤ちゃんの場合は小児科か、耳鼻咽喉科を受診して下さい。ただし、耳垢(耳あか)があると鼓膜がみえないので、小児科では診断が難しいことがあります。耳垢は耳鼻咽喉科にある道具でとるため、小児科で診断がつかない場合には耳鼻咽喉科が紹介されます。大人の場合は、耳鼻咽喉科を受診して下さい。

夜間に耳が痛くなった場合は、診療を行っている医療機関が少なくて困ることが多いです。そのような時には、大人では鎮痛薬で痛みがおさまってくるようであれば、翌日の受診でも構いません。痛みが強い人は夜間に診療している耳鼻咽喉科や救急科を受診して下さい。赤ちゃんや子供では、元気があれば、子供に使うことができる手持ちの鎮痛薬を使用して、夜は様子をみても問題ありません。一方、元気がなく、ぐったりしているようであれば、夜間に診療を行っている小児科や耳鼻咽喉科、救急科を受診してください。

急性中耳炎では耳のどこが原因なの?

耳の構造のイラスト。中耳は外耳と鼓膜で隔てられ、耳管で咽頭とつながっている。

耳は次のように大きく3つに分けることができます。

  • 外耳(がいじ):耳の穴から鼓膜までの空間
  • 中耳(ちゅうじ):鼓膜の奥の空間
  • 内耳(ないじ):中耳の奥の聞こえの細胞などがいる空間

耳を外からみると、耳の穴の一番奥に鼓膜があります。その奥の空間を中耳といいます。この中耳という空間は、鼻の奥と細い管(耳管:じかん)でつながっています。かぜをひくと鼻水の中のウイルスや細菌が、耳管を通って鼻から中耳内に入りこんで感染し、急性中耳炎を起こします。

子供が大人より急性中耳炎になりやすい理由は、子供の耳管が、大人とくらべて太く、短く、傾きの角度も平らなため、鼻水の菌が中耳内に入りやすいためです。子供が中耳炎を繰り返しやすいのも、耳管の構造が原因です。

2. 急性中耳炎の原因は?

急性中耳炎は中耳にウイルスもしくは細菌が入って感染が起きる病気です。中耳に感染を起こす経路は次の3つが考えられています。

  • 耳管を通って感染
  • 血液に乗った細菌が感染
  • 鼓膜の外から感染(鼓膜に穴があいている場合)

このうち、ほとんどの急性中耳炎は耳管を通って感染します。鼻水の中にいるウイルスや細菌が、鼻の奥の耳管の入り口から、中耳内に入って炎症を起こします。そのため、ほとんどの人が、鼻水が増える風邪に引き続いて急性中耳炎になります。中にはまれですが、目立った鼻水がなくても急性中耳炎を起こすこともあります。

急性中耳炎は繰り返す?

子供は大人に比べて耳管(耳の中の通り道)が太くて短く、角度が緩やかなため、鼻汁からのウイルスや細菌が中耳内に入りやすく、急性中耳炎になりやすい耳の構造をしています。このため急性中耳炎を繰り返してしまうことがあります。成長するにしたがって耳管の構造が変化して急性中耳炎を起こしににくなります。

3. 急性中耳炎の症状は?

急性中耳炎の主な症状は、耳の痛み、発熱、耳漏(じろう)などです。

馴染みのない耳漏という言葉について説明します。耳漏は耳だれのことで、中耳内に溜まった膿が穴が開いた鼓膜から出てくることです。また、急性中耳炎が悪化して内耳に炎症が及んだ場合は、めまいや耳鳴りがでることもあります。

赤ちゃんや子供の場合の急性中耳炎には注意が必要です。なぜならば、赤ちゃんや子供は症状を十分に伝えることが難しいので、周りの人がしぐさや様子の変化から身体に異変が起きていことを感じなければなりません。急性中耳炎であれば不機嫌や泣き止まない、食欲がない、元気がないといったものから、耳の周囲を手で触ったり、粘っこい鼻水が出ることがあります。

4. 急性中耳炎の治療

軽症の場合はウイルス感染のことが多く、自然治癒に期待ができるため、抗生物質抗菌薬)を使用せずに経過観察とします。
経過観察中に改善がない場合や重症な場合は、鼓膜に小さな穴をあける鼓膜切開や抗菌薬治療を検討します。抗菌薬治療では、ペニシリン系抗菌薬のアモキシシリン(商品名:サワシリン®、ワイドシリン®など)や、アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム(商品名:クラバモックス®など)などが用いられます。

急性中耳炎の治療について詳しい情報は「急性中耳炎の治し方」や「急性中耳炎の薬」も参考にしてください。

5. 急性中耳炎以外の中耳炎

中耳炎というと、急性中耳炎を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、中耳炎にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や治療法が異なります。医療機関で中耳炎といわれたときは、どの種類の中耳炎なのかを確認しておくと良いです。主な中耳炎には次のものがあります。

以下では慢性中耳炎、航空性中耳炎、滲出性中耳炎について簡単に説明します。

慢性中耳炎

慢性中耳炎は、鼓膜に穴があいたままになり、耳漏(耳だれ)を繰り返す病気です。急性中耳炎が治りきらずに起こることがあるほか、治療で鼓膜換気チューブを長期間入れていたあとに、鼓膜の穴が残って生じることもあります。

鼓膜に穴があると、中耳に細菌などが入りやすくなり、耳漏を繰り返しやすくなります。また、鼓膜に穴があいていることで音が伝わりにくくなり、難聴の原因にもなります。炎症を繰り返すと、耳小骨(じしょうこつ)という音を伝える骨の動きが悪くなり、さらに難聴が進むこともあります。

根本的な治療として、手術で鼓膜の穴をふさぎます。鼓膜の穴の大きさや聞こえの低下の程度などをもとに決まります。耳だれを繰り返す場合や聞こえの低下が気になる場合には、耳鼻咽喉科で相談してください。

航空性中耳炎

飛行機の着陸時に耳が痛くなったり、そのあとに耳が詰まった感じが数日続いたりした経験がある人もいるかもしれません。こうした気圧の変化によって起こる中耳のトラブルが、航空性中耳炎です。

航空性中耳炎は、中耳の気圧を調節している耳管の働きが悪くなり、中耳の圧をうまく調整できなくなることで起こります。特に着陸時は、機内の気圧が上がる一方で、中耳には空気が入りにくいため、鼓膜が強く引っ張られて耳の痛みや聞こえにくさが起こりやすくなります。

耳管の働きが正常であれば、つばを飲み込んだり、あくびをしたりすることで耳管が開き、中耳の圧が整って症状は改善します。ただし、耳管が細かったり、鼻の炎症で通りが悪くなっていたりすると、症状が長引くことがあります。中耳に液体がたまったり、まれに耳鳴りやめまいを伴ったりすることもあります。

航空性中耳炎に注意が必要なのは、風邪で鼻水が多いとき、アレルギー性鼻炎慢性副鼻腔炎があるとき、鼻中隔湾曲症があるときなどです。飛行機に乗るたびに耳の痛みが出る場合には、事前に耳鼻咽喉科で相談しておくと良いです。

予防には、着陸前からつばを飲み込む動作を増やして耳管を開きやすくすることが有効です。機内で眠っていると、つばを飲み込む回数が減って症状が出やすくなるため、飛行機が降下を始めたらできるだけ眠らず、あめをなめたり、飲み物を飲んだりして対策するのが有効です。

滲出性中耳炎

急性中耳炎の痛みや熱が治ったあとに、「まだ治りきっていないので、もう少し通院してください」と言われたり、急性中耳炎が治ったはずなのに聞こえが悪いと感じたりしたこ人がいるかもしれません。その状態は、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)の可能性があります。

滲出性中耳炎は、発熱や痛みなどの強い炎症症状はないものの、鼓膜の奥の中耳に液体がたまっている状態です。子どもによくみられ、急性中耳炎のあとに続いて起こることも少なくありません。

滲出性中耳炎が起こるメカニズム

滲出性中耳炎は、中耳の圧が低くなることで起こります。鼓膜の奥にある中耳は、耳管という細い管で鼻の奥とつながっており、この耳管を通じて空気が出入りすることで圧が調整されています。

何らかの原因で耳管の働きが悪くなると、中耳に空気が入りにくくなります。中耳の空気は少しずつ吸収されていくため、空気が補われないと中耳の圧は低くなっていきます。この状態が続くと、中耳の粘膜から液体がしみ出してたまり、滲出性中耳炎になってしまいます。

滲出性中耳炎を起こす原因

滲出性中耳炎は、耳管の働きが悪くなることで起こります。原因としては、次のようなものがあります。

  • 耳管や中耳の粘膜が腫れる場合
  • 耳管が塞がれる場合
    • 大きなアデノイド
    • 鼻の奥にできた腫瘍良性もしくは悪性)

子どもでは、急性中耳炎に続いて起こることが多く、そのほかにアデノイド肥大、アレルギー性鼻炎慢性副鼻腔炎などが関係することもあります。

■急性中耳炎から滲出性中耳炎に移行してしまう流れ

滲出性中耳炎の原因として多い急性中耳炎から移行する流れを下で解説します。

  1. 急性中耳炎によって中耳の粘膜が腫れる
  2. 粘膜が腫れることにより耳管が細くなって空気が中耳に流れ込みにくくなる
  3. 中耳の圧が低くなる
  4. 圧の低下が影響して液体が滲み出てくる

初回の急性中耳炎のあとにも起こることがありますが、急性中耳炎を繰り返すと、滲出性中耳炎にもなりやすくなります。

滲出性中耳炎の症状

主な症状は、難聴、耳の詰まった感じ、耳の違和感などです。難聴は軽いことも多く、子どもでは本人に自覚がないことも少なくありません。大人でも、ゆっくり進行した場合には気づきにくいことがあります。

中耳には本来空気がありますが、そこに液体がたまると音が伝わりにくくなるため、聞こえが悪くなります。耳に水が入ったような感じとして自覚されることもあり、頭を動かしたときに水が動くような感覚を覚える人もいます。聞き返しが増える、テレビの音を大きくする、呼びかけへの反応が悪いといった変化がある場合には、滲出性中耳炎の可能性も考えて、すみやかな受診を検討してください。

■子供と大人の滲出性中耳炎は違い

子どもの滲出性中耳炎は、急性中耳炎のあとに起こることが多く、自然に改善することも少なくありません。一方、大人では、加齢による耳管機能の低下のほか、鼻の奥の病気が背景にあることがあります。そのため、大人では原因も含めて詳しく調べることが大切です。

滲出性中耳炎の治療

滲出性中耳炎の治療は、子どもと大人で少し異なります。

子どもは自然に改善することも多いため、まずは経過をみることがあります。ただし、長く続く場合や、難聴が強く日常生活に支障がある場合、鼓膜の変化が強い場合には、鼓膜換気チューブ留置やアデノイド切除術などが検討されます。

大人では、背景にある鼻の病気の治療や薬物治療を行いながら経過をみます。難聴などで日常生活への影響が大きい場合や、改善しない場合には、鼓膜切開や鼓膜換気チューブ留置を検討します。

◎鼓膜切開

鼓膜切開は、鼓膜に小さな穴をあけて中耳の液体を出す治療です。局所麻酔で行うことが多く、外来で対応できることもあります。

液体を出すことで症状の改善が期待できますが、鼓膜の穴は多くの場合自然に閉じるため、再び液体がたまることもあります。

◎鼓膜換気チューブ留置

鼓膜換気チューブ留置は、鼓膜に小さなチューブを入れて、あけた穴が閉じないようにする治療です。鼓膜切開だけでは再発しやすい場合に行われます。

大人では局所麻酔で外来で行えることが多く、子どもでも年齢や協力度によっては外来で可能です。小さな子どもでは、安全のため全身麻酔で行うことがあります。

チューブを入れている間は、耳だれや出血が起こることがあり、抜去後に鼓膜の穴が閉じず、慢性中耳炎になることもあります。プールの可否は病状によって判断が異なるため、担当のお医者さんと相談して決めます。

◎アデノイド切除術

アデノイドが大きいと、耳管の鼻側の出口をふさいで滲出性中耳炎の原因になることがあります。この場合は、全身麻酔でアデノイドを切除する手術が検討されます。鼓膜換気チューブ留置とあわせて行われることもあります。