脳梗塞の症状について②:脳幹梗塞、小脳梗塞、延髄外側症候群(ワレンベルグ症候群)の症状
脳の大部分は大脳が占めています。他には、脳の中心に近い位置に「
目次
1. 脳幹・小脳とは?
脳幹(のうかん)は脳の一部です。中脳、橋(きょう)、延髄という部分をまとめて脳幹と呼びます。脳幹は覚醒や呼吸のように、生命維持に重要な働きを担っています。
小脳も脳の一部で、脳幹に隣り合った位置にあります。小脳は手足を滑らかに動かす機能や、身体のバランス機能などを担っています。
2. 小脳梗塞の症状について
小脳梗塞では次のような症状があらわれます。
【小脳梗塞の症状】
- バランスが取れない(平衡障害)
- 立てない(起立障害)
- 座った姿勢(座位)を維持できない
- めまいがする
- 歩くときにふらつく、転ぶ
- まっすぐ歩いているつもりなのに、片方に寄ってしまう
- 嘔吐、吐き気がある
麻痺 はない(力は入る)のに、手足を上手く使うことができない(失調 )- ろれつが回らない、しゃべりにくい(
構音障害 ) 意識障害 - ぼんやりしている
- 会話の応答がおかしい
- 目をつぶって倒れたまま反応がない
小脳梗塞の特徴的な症状に「失調」があります。失調とは、麻痺がなく、それぞれの筋肉に力が入るのにもかかわらず、手足が上手く使えないことです。
例えば「机の上に置いてあるペットボトルに手を伸ばす」という動作を思い浮かべてください。健康な人は、ペットボトルまで直線的に手を伸ばします。一方、小脳梗塞の人では、ペットボトルに手を伸ばそうとしても手が遊んでしまい、うまくペットボトルまでたどり着くことができません。これが失調です。
3. 脳幹(中脳梗塞・橋梗塞・延髄梗塞)の症状について
脳幹に起こった脳梗塞を脳幹
それぞれで、症状が異なります。
- 中脳梗塞の症状
- 手足や顔がしびれる、感覚がおかしい
- 手足や顔の麻痺(力が入らない)
- 眼球の動きが悪い、動かない
- 意識障害
- ぼんやりしている
- 会話の応答がおかしい
- 目をつぶって倒れたまま反応がない
- 橋梗塞の症状
- 手足や顔の麻痺(力が入らない)
- 麻痺はない(力は入る)のに、手足を上手く使うことができない(失調)
- バランス障害(平衡障害)
- 手足や顔がしびれる、感覚がおかしい
- 眼球の動きが悪い、動かない
- 音が聞こえにくい(難聴)
- 意識障害
- ぼんやりしている
- 会話の応答がおかしい
- 目をつぶって倒れたまま反応がない
- 延髄梗塞の症状
- 舌が動かない
- 手足や顔がしびれる、感覚がおかしい
- めまい
- 物が二重に見える(
複視 ) - 飲み込みができない(嚥下障害)
- しゃべりにくい
- 片方の
まぶた が下がる - 手足や顔の麻痺(力が入らない)
- 麻痺はない(力は入る)のに、手足を上手く使うことができない(失調)
- 呼吸停止、心臓の停止
- 意識障害
- ぼんやりしている
- 会話の応答がおかしい
- 目をつぶって倒れたまま反応がない
また、脳幹の中でも橋は小脳と密に連結しているため、小脳梗塞に特徴的な「失調」は橋梗塞でもあらわれます。
脳幹は脳の中でも生命の中枢を担う部分です。脳幹梗塞が起こるとすぐにも命に関わります。疑わしい症状があれば迅速に受診し、できるだけ早く治療することが大切です。
4. 脳幹梗塞・小脳梗塞の後遺症と回復の見込み(予後)
脳幹梗塞や小脳梗塞であらわれやすい後遺症には以下のものがあります。
- 特徴的な後遺症
- 運動麻痺
- 感覚麻痺
- 嚥下障害(飲み込みが難しくなる)
排尿障害 (尿がうまく出せない)- 視覚障害
- 脳梗塞一般にある後遺症
- 高次脳機能障害
- 精神障害
それぞれの症状について詳しくは「脳梗塞の後遺症」のページで説明しているので、参考にしてください。
5. 延髄外側症候群について
ここまで、脳幹と小脳の脳梗塞について説明してきましたが、最後に、特殊な脳梗塞について説明します。
脳幹の中でも、延髄の外側の部分が脳梗塞で障害された状態を延髄外側症候群(ワレンベルグ症候群)と呼び、ラテロパルジョンと呼ばれる特徴的な症状があらわれます。
【延髄外側症候群の主な症状】
- 頭痛
- めまい
- 吐き気
- ふらつき
- 味覚障害
- ラテロパルジョン
ラテロパルジョン(lateropulsion)とは、片側に身体が倒れていってしまう症状です。