2017.09.25 | ニュース

血糖値を下げる注射ビデュリオンは3年で心筋梗塞や脳卒中を防げない?

14,752人・3年の研究で

from The New England Journal of Medicine

血糖値を下げる注射ビデュリオンは3年で心筋梗塞や脳卒中を防げない?の写真

エキセナチド(商品名ビデュリオン®)は、週に1回の注射で血糖値を下げる効果がある薬です。長期的に病気を防ぐ効果を追跡して調べた研究で、目標とした病気や死亡の人数が減っていなかったことが報告されました。

エキセナチドとは?

エキセナチドはGLP-1受容体作動薬に分類されます。注射して使う薬ですが、インスリン膵臓から出る、血糖値を下げる方向に働くホルモン。インスリンの欠乏や作用不足が糖尿病の原因となるではありません。インスリンの分泌を促すことで血糖血液中のブドウ糖のこと。人が活動するためのエネルギー源。血液中の濃度を血糖値といい、糖尿病の診断に用いられる値を下げる作用があります。日本では2型糖尿病の治療薬として、「ただし、食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤、ビグアナイド系薬剤及びチアゾリジン系薬剤(各薬剤単独療法又は併用療法を含む)による治療で十分な効果が得られない場合に限る。」という条件付きで効能・効果が承認され使用されています。

 

2型糖尿病に対するエキセナチドの効果

世界35か国の施設で行われた研究の結果が医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告されました。

この研究は、2型糖尿病の患者を対象として、エキセナチドで治療することで病気や死亡が防がれるかを調べています。

対象者はランダムに2グループに分けられ、エキセナチドの注射をするグループ、有効成分のない偽薬を注射するグループとされました。どちらのグループも、ほかの薬を使って血糖値を下げる治療は続けてよいとされました(GLP-1受容体作動薬は除く)。

治療効果の指標(主要評価項目)として、以下のいずれかが起こる人の数を数えました。

  • 心血管疾患心臓や全身の血管(主に動脈)に起こる病気の総称。ほとんどの場合は動脈硬化が原因となる、虚血性心疾患や脳卒中、末梢血管障害などを指すによる死亡
  • 心筋梗塞(死亡に至らなかった場合)
  • 脳卒中(死亡に至らなかった場合)

心血管疾患とは、心筋梗塞脳卒中など、血管の変化によって起こる病気の総称です。心不全による死亡や不整脈による急死などもこの指標に含むことと決めました。

 

3.2年の追跡で指標に差がない

対象者は研究参加時点で平均年齢が62歳でした。およそ37%の人が参加時点までに15年以上糖尿病が続いていました。以前にカテーテル治療カテーテルと呼ばれる細い管を、腕や脚の付け根の血管から挿入し、治療したい部位の近くまで血管内を進めて治療する方法を受けたことがあるなど、参加時点ですでに心血管疾患の経験があった人はおよそ73%でした。

糖尿病の検査値のHbA1c(7%未満から8%未満を治療目標とすることが多い)は平均8.0%でした。すでにインスリンを使っていた人はおよそ46%でした。

治療後の結果を解析した時点で、半数の人が研究参加から3.2年以上経過していました。

注射を打ちたくないなどの理由で中止することなくエキセナチドを使い続けた期間は半数の人で2.4年以上でした。偽薬を使い続けた期間は半数の人で2.3年以上でした。

HbA1cは、参加から6か月の時点ではエキセナチドのグループのほうが0.7ほど低くなっていましたが、その差はしだいに狭まりました。

 

主要評価項目の病気または死亡は、エキセナチドのグループで7,356人中839人、偽薬のグループで7,396人中905人に起こり、統計的に違いが確かめられませんでした。エキセナチドのグループのほうが若干少なく見えますが、偶然としても説明がつく範囲でした。

死因を問わず死亡数を比較するとエキセナチドで507人、偽薬で584人が死亡し、エキセナチドのほうが死亡数が少なくなりました。ただし心血管疾患による死亡に限るとエキセナチドで230人、偽薬で241人であり、偶然としても説明がつく範囲でした(表)。

 

エキセナチド(7,356人)

偽薬(7,396人)

死亡(合計)

507人

584人

心血管疾患による死亡

230人

241人

心血管疾患によらない死亡

167人

201人

どちらか区別できない死亡

110人

142人

薬の副作用やその他の原因による深刻な事態が発生した人のうち、エキセナチドまたは偽薬の注射が関連すると見られた人はエキセナチドのグループで56人(0.8%)、偽薬のグループで38人(0.5%)でした。

 

エキセナチドは効かない?それとも長生きに?

エキセナチドを使った治療による結果の報告を紹介しました。

主要評価項目には差が確かめられませんでした。つまり、エキセナチドを使うことで心筋梗塞脳卒中を防げると示すことができませんでした。しかし統計的に不確かでも若干の差があるようにも見えるため、より多くのデータが将来得られれば差が確認されることもありえます。

また死亡数についてはエキセナチドのグループが少なくなりました。ただし「糖尿病治療効果によって心筋梗塞脳卒中が減ったため」と単純には説明できないかもしれません。

糖尿病治療は長年続けてようやく結果が目に見えるものになります。病気や死亡を防ぐために血糖値を下げたほうがよいことははっきりしていますが、どの薬を使って・どの程度下げるといった点には最近も議論が続いています。この報告ひとつだけでエキセナチドの評価が決定されるわけではありません。

時代とともに薬の効果が検証されていく中で、この報告はひとつの要素として参照されるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Effects of Once-Weekly Exenatide on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.

N Engl J Med. 2017 Sep 14.

[PMID: 28910237] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1612917

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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