2017.04.14 | ニュース

血糖値を982まで上げた「グルカゴノーマ」による皮膚の症状とは?

糖尿病が急に悪化した65歳男性の症例報告

from The New England journal of medicine

血糖値を982まで上げた「グルカゴノーマ」による皮膚の症状とは?の写真

血糖値は膵臓が作るホルモンによってコントロールされています。グルカゴノーマは、ホルモンを異常に多く分泌する腫瘍です。グルカゴノーマにより血糖値が極端に高くなったうえ、皮膚にも症状が現れた人の例が報告されました。

アメリカの研究者が、グルカゴノーマによる典型的な皮膚症状が現れた人の写真を医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。

グルカゴノーマは膵臓にできるまれな病気です。周りの臓器に広がったり転移がん細胞がリンパ液や血流にのって、リンパ節や他の臓器にまで広がること。転移がある場合は進行がんに分類されることが多いしたりする悪性の場合と、その場にとどまっている良性病気の中でも、相対的に経過が悪くないもの。多くの場合、腫瘍をつくる病気に対して、悪性腫瘍と対比させるために使われる用語の場合の両方がありえます。悪性の場合でも、普通の膵臓がん(浸潤性膵管がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがある)とは性質が違います。

グルカゴノーマの大きな特徴は、グルカゴンというホルモン体内で作られて、血流にのって体の特定の部位を刺激する物質。内分泌物質とも呼ばれるを大量に分泌することです。グルカゴンは正常な膵臓でも作られています。グルカゴンは血糖血液中のブドウ糖のこと。人が活動するためのエネルギー源。血液中の濃度を血糖値といい、糖尿病の診断に用いられる値を上げるホルモンです。空腹などのときにも必要な糖分を体に行き渡らせる役割があります。グルカゴノーマはグルカゴンを異常に大量に分泌することにより、血糖値を極端に高くしてしまいます

報告された人は65歳男性です。もともと2型糖尿病の診断がありましたが、急に血糖値が悪化したことで受診しました。最近2か月から3か月で体重が7kgから8kgほど減っていました。また、食べるとすぐに満腹になる、脇腹が痛むという症状もありました。さらに数週間前から皮膚が赤くなる症状(紅斑皮膚にできる発疹を表す言葉の一種で、赤く、平坦な状態のものを指す)が現れていました。紅斑は腕、性器、おしりから現れて両足にも広がっていました。

 

検査では血糖値が982mg/dlと極端に高くなっていました。

血糖値は食前か食後かなどで変わりますが、タイミングに関係なく200mg/dlを超えれば「糖尿病型」と判定されます。982mg/dlという極端な数値は、治療中の糖尿病が悪化してもめったに現れません。大量の糖分により高血糖血糖値が高い状態。いくつ以上が高血糖という基準はないが、糖尿病にかかっている人は血糖値が高くなりがちである高浸透圧昏睡や糖尿病性ケトアシドーシスという致命的な状態を引き起こす恐れもあるレベルです。

グルカゴンを測定したところ異常に多くなっていることがわかりました。CTX線(放射線)を用いて、体の内部を画像化して調べる検査膵臓に大きさ9cmの腫瘤(かたまり)が見つかりました

この時点で、グルカゴノーマの疑いは非常に強いと言えます。グルカゴノーマによる高血糖は、手術でグルカゴノーマを取り除くと改善を期待できます。

膵臓の手術が行われ、腫瘤が取り除かれました。組織を顕微鏡で観察(病理検査)した結果、グルカゴノーマの診断に合致する特徴が確認できました。

ほかの臓器に転移などは見つかりませんでした。

手術から5日以内に足の紅斑は消えはじめ、グルカゴンは正常値まで下がりましたインスリン膵臓から出る、血糖値を下げる方向に働くホルモン。インスリンの欠乏や作用不足が糖尿病の原因となる注射を処方されて退院となりました。1年後まで再発はありませんでした。

 

グルカゴノーマの典型的な皮膚症状が現れた人の例を紹介しました。この人の症状の写真は「参考文献」のリンク先で見られます。

グルカゴノーマによる壊死ある部位の細胞が死んでしまうこと。多くの場合、血管が詰まったり、つぶれたりして、血液が流れなくなってしまうことが原因となる性遊走性紅斑(えしせいゆうそうせいこうはん)と呼ばれる皮膚症状が知られています。壊死性遊走性紅斑が出るしくみは正確にはわかっていませんが、グルカゴンの作用などが関係していると考えられます。壊死性遊走性紅斑を現す病気はグルカゴノーマのほかにもあります。極端な高血糖をともなう場合はグルカゴノーマが疑わしいと言えます。

皮膚の症状が内臓の病気を見つけるきっかけになる場合があります。壊死性遊走性紅斑のほかにも、胃がんなどで現れるレザー・トレラ徴候(Leser-Trélat徴候)などは、必ず出るわけではありませんが、見つかった場合は診断の手がかりになります。

皮膚症状を見分ける専門家は皮膚科医です。心当たりがないのに皮膚に症状が現れ、数日経ってもよくなる傾向がないときは、まず皮膚科で相談してください。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Glucagonoma-Associated Rash.

N Engl J Med. 2017 Mar 9.

[PMID: 28273025] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1603135

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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