血糖値を982まで上げた「グルカゴノーマ」による皮膚の症状とは?
血糖値は膵臓が作るホルモンによってコントロールされています。グルカゴノーマは、ホルモンを異常に多く分泌する腫瘍です。グルカゴノーマにより血糖値が極端に高くなったうえ、皮膚にも症状が現れた人の例が報告されました。
グルカゴノーマによる皮疹が現れた65歳男性
アメリカの研究者が、グルカゴノーマによる典型的な皮膚症状が現れた人の写真を医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。
グルカゴノーマは膵臓にできるまれな病気です。周りの臓器に広がったり
グルカゴノーマの大きな特徴は、グルカゴンという
報告された人は65歳男性です。もともと2型糖尿病の診断がありましたが、急に血糖値が悪化したことで受診しました。最近2か月から3か月で体重が7kgから8kgほど減っていました。また、食べるとすぐに満腹になる、脇腹が痛むという症状もありました。さらに数週間前から皮膚が赤くなる症状(
CTで発見、手術で皮膚症状も改善
検査では血糖値が982mg/dlと極端に高くなっていました。
血糖値は食前か食後かなどで変わりますが、タイミングに関係なく200mg/dlを超えれば「糖尿病型」と判定されます。982mg/dlという極端な数値は、治療中の糖尿病が悪化してもめったに現れません。大量の糖分により
グルカゴンを測定したところ異常に多くなっていることがわかりました。
この時点で、グルカゴノーマの疑いは非常に強いと言えます。グルカゴノーマによる高血糖は、手術でグルカゴノーマを取り除くと改善を期待できます。
膵臓の手術が行われ、腫瘤が取り除かれました。組織を顕微鏡で観察(病理検査)した結果、グルカゴノーマの診断に合致する特徴が確認できました。
ほかの臓器に転移などは見つかりませんでした。
手術から5日以内に足の紅斑は消えはじめ、グルカゴンは正常値まで下がりました。
皮膚の症状で腫瘍が見つかる?
グルカゴノーマの典型的な皮膚症状が現れた人の例を紹介しました。この人の症状の写真は「参考文献」のリンク先で見られます。
グルカゴノーマによる
皮膚の症状が内臓の病気を見つけるきっかけになる場合があります。壊死性遊走性紅斑のほかにも、胃がんなどで現れるレザー・トレラ徴候(Leser-Trélat徴候)などは、必ず出るわけではありませんが、見つかった場合は診断の手がかりになります。
皮膚症状を見分ける専門家は皮膚科医です。心当たりがないのに皮膚に症状が現れ、数日経ってもよくなる傾向がないときは、まず皮膚科で相談してください。
執筆者
Glucagonoma-Associated Rash.
N Engl J Med. 2017 Mar 9.
[PMID: 28273025] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1603135※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。