2017.01.30 | ニュース

子どもの急病、検査をしないと不安ですか?CRP検査を全員にしても…

ベルギー3千人の子どもで比較

from BMC medicine

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血液検査で「CRPが高い」と言われたことはありますか?CRPはよく使われますが、診断には直結しにくい検査です。急病があった子どもの全員にCRP検査をしても、家庭医の判断で検査したときと結果に違いがなかったことが報告されました。

CRPは体内で作られている物質です。血液検査でCRPの量を測定できます。

CRPは体内で炎症が起こっているときに多く作られます。細菌やウイルスの感染が疑われるときなどで、よくCRPの検査が行われます。CRPの検査値が高ければ感染らしいと判断する材料になります。

CRPは信頼度の低い検査です。まったく健康でもCRPがもともと高い人もいます。また、実際には感染がある場合でも、病原体によってCRPが上がりにくいものもあります。CRPによって病原体を見分けることもできません。

 

ベルギーで子どもを対象に行われた研究の結果が医学誌『BMC Medicine』に報告されました。

ベルギーでは、家庭で誰かが病気になったとき、まず家庭医が診察します。家庭医の判断で必要とみなされた場合にだけ高度な病院に紹介されます。

この研究は、急病で家庭医の診察を受けた1歳から16歳の子どもを対象として、全員にCRP検査をするかどうかを比較しています。研究に参加した家庭医の施設ごとに、検査の方針を2グループに分けました。

  • 急病で診察を受けた子ども全員にCRP検査をするグループ
  • 急病で診察を受けた結果、危険度が高いと判定された子どもにだけCRP検査をするグループ

「危険度が高い」という判断の基準として、以下のいずれか1点以上がある場合としました。

  • 息切れ
  • 体温が40℃以上
  • 12か月から30か月の子どもで下痢がある
  • 診察した医師が異常ありと判断した

78施設が研究に参加し、2013年2月15日から2014年2月28日に診察された子どもについての結果が比較されました。

 

両方のグループであわせて3,147回の急病による診察がありました。

グループを比較すると次の結果がありました。

深刻な感染症によってただちに病院に紹介された子どもの数は、群間で有意な差がなかった(0.16% vs 0.14%、P=0.88)。

CRP検査を制限したグループのうち、深刻な感染症によって病院に紹介された子どもは0.14%にとどまり、全員にCRP検査をしたグループと統計的に差がありませんでした

CRP検査を制限したグループでは、入院が遅れた子どもは0.14%であり、全員にCRP検査をしたグループと統計的に差がありませんでした

この結果から、研究班は「CRPの検査は臨床的評価のうえ比較的高リスクの子どもにだけ制限されるべきである」と結論しています。

 

CRP検査を全員にしなくても主な指標に差がないという結果でした。症状などからCRP検査の必要はないと判断された場合、CRPを調べなかったために重い病気を見逃す心配はないと解釈できるでしょう。

CRPは病院や診療所で非常によく使われる検査です。採血をすれば診断が正しくなりそうに思えてしまいますが、CRPの信頼度は上で紹介したように参考程度です。

そもそも「CRPが高い」という基準が絶対ではありません。CRPの基準値は、日本では0.3mg/dl未満を正常とする施設が多いですが、海外では1.0mg/dl(10mg/l)が基準値とされる国も多いです。

まったく健康でもCRPが高めの人もいます。「CRPが高い」と言われても、ほかに重病らしい点がなければあまり心配は要りません。

大人でも子どもでも、診断にはまず目に見える症状や体の反応が大切です。検査を気にしすぎるよりも、まずは症状をよく観察し、医師に詳しく伝えることを大事にしてください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Should all acutely ill children in primary care be tested with point-of-care CRP: a cluster randomised trial.

BMC Med. 2016 Oct 6.

[PMID: 27716201]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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