大腸がんは予防できるか?アスピリンを10年以上飲んだ人での発生率

大腸がんができやすくなる原因に、薬が関係するかもしれないという説があります。中でも、発熱を収めるなどの効果があり広く使われているアスピリンについて議論がなされています。これまでの研究状況のまとめが報告されました。
◆アスピリンは大腸がんを予防するか?
アスピリンは発熱・
ここで紹介する報告は、アスピリンが大腸がんの発生または大腸がんによる死亡を防ぐかどうかについて、これまでにどんな研究がなされてきたかをまとめたものです。
研究班は過去の研究のデータベースから、関係する報告を探して集めました。まとめの対象として、大腸がんが特にできやすい要素を持っている人ではなく、平均的な40歳以上の人について調べた研究を集めました。
適した内容の20件の研究が見つかり、その中のデータを統合して、アスピリンの効果がまとめられました。
◆大腸がんの発生、死亡が少ない
統合したデータから次の結果が得られました。
心血管疾患 の一次予防および二次予防の試験において、20年間の直腸結腸がん による死亡率はアスピリン治療に割り当てられた個人において低下していた(相対リスク0.67、95%信頼区間0.52-0.86、4件の試験、n=14,033)。アスピリンは使用開始後10年から19年において直腸結腸がんの発生率を減少しはじめるようだった(相対リスク0.60、95%信頼区間0.47-0.76、3件の試験、n=47,464)。
アスピリンを10年以上飲み続けていた人では大腸がんの発生が少ないと見られました。また、研究期間の20年のうちで、大腸がんによる死亡はアスピリンを飲んでいた人で少ないと見られました。
アスピリンは古くから使われている薬で、さまざまな効果の反面、出血しやすくなる、胃潰瘍などの副作用やアスピリン喘息を起こす場合もあります。大腸がんの予防については議論が進みつつあり、現状としてここでまとめられたデータもありますが、今後研究者の意見が一致してくれば、古くからある薬の新しい側面として治療にも活かされるようになるかもしれません。
執筆者
Aspirin for the Prevention of Cancer Incidence and Mortality: Systematic Evidence Reviews for the U.S. Preventive Services Task Force.
Ann Intern Med. 2016 Apr 12. [Epub ahead of print]
[PMID: 27064482]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。