2015.08.06 | ニュース

アスピリンで悪性中皮腫を治療できる?

人間の悪性中皮腫の細胞を移植したマウスの生存期間を改善
from Cell death & disease
アスピリンで悪性中皮腫を治療できる?の写真
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アスベストが原因になると言われる悪性中皮腫は、手術ができない場合も多いとされます。アスピリンは炎症を抑えることを介してがんを抑えるという説があり、悪性中皮腫を移植したマウスに与えたところ、生存期間の延長が見られました。

◆アスピリンでマウスの生存期間が延長

アスピリン(アセチルサリチル酸)は古くから知られている解熱消炎鎮痛薬で、今でも市販薬として広く使われています。効果は広く認められていますが、胃潰瘍などの副作用もあると言われています。

研究班は、マウスに人間の悪性中皮腫の細胞を移植してがんを成長させ、アスピリンを与える実験を行いました。すると、アスピリンを与えなかったマウスに比べて、アスピリンを与えたマウスではがんの成長が遅く、生存期間が長くなりました。アスピリンを与えなかったマウスでは生存期間の中央値(順位で中央にあたる値)は76日でしたが、アスピリンを50mg/kg与えたマウスでは91日でした。

 

◆BoxAでも生存期間が延長、さらに効果的?

さらに、アスピリンによって起こる細胞の変化を観察した実験で、悪性中皮腫の細胞が作っているHMGB1という物質の働きを抑えることが効果に関係していると見られました。

アスピリンと同様にHMGB1の働きを抑える、BoxAという物質を使い、悪性中皮腫を移植したマウスを治療する実験を行ったところ、BoxAを与えたマウスでがんの成長が遅く、生存期間が長くなっていました。BoxAを与えなかったマウスで生存期間の中央値は76.5日であり、BoxAを与えたマウスでは142日でした。

研究班は「この結果は、よく報告されているにもかかわらずほとんど理解されていない、我々がHMGB1阻害によって進歩を示したアスピリンの抗腫瘍発生作用について、理論的根拠を与える。さらに、BoxAの使用はアセチルサリチル酸の既知の胃腸に対する副作用を回避しつつHMGB1をより効果的に標的とすることを許すように見える」と述べています。

 

悪性中皮腫は治療が難しく、特に手術ができなかった場合の治療法は限られます。マウスの実験の結果が人間にも当てはまるとは限りませんが、ここで示唆されたHMGB1やBoxAの働きが、病態解明と新しい治療法の開発のためのヒントになるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Aspirin delays mesothelioma growth by inhibiting HMGB1-mediated tumor progression.

Cell Death Dis. 2015 Jun 11

 

[PMID: 26068794]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。