2015.05.10 | ニュース

COPDの治療薬を組み合わせで比較

サルメテロール、フルチカゾンとグリコピロニウムの組み合わせが有効
from Thorax
COPDの治療薬を組み合わせで比較の写真
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喫煙などによって肺の組織がダメージを受け、呼吸機能が低下する慢性閉塞性肺疾患 (COPD) の治療には、運動療法などのほか、さまざまな薬剤が使われます。それらの組み合わせをオーストラリアなどの研究班が比較検討し、「これまでの治療法で使われていた薬のうち1種類を別の薬で置き換えても効果がある」という結果を出しました。

◆3種類の治療法をランダムに割り当て

研究班は、中等度から重度のCOPD患者773人を3つのグループにランダムに割り当てました。すべてのグループにサルメテロールとフルチカゾンという2種類の薬を使う一般的な治療 (SAL/FP) を行い、それに加えてグループごとに

  1. グリコピロニウムを投与する
  2. チオトロピウムを投与する
  3. 偽薬を投与する

という治療方法を決めました。

それぞれの治療効果は、12週間治療したあと、呼吸機能検査の1秒量 (FEV1) の値で評価することにしました。

グリコピロニウムとチオトロピウムはどちらも長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬と呼ばれる種類の薬です。SAL/FPにチオトロピウムを加える治療法の効果はすでに知られていましたが、この研究ではSAL/FPにグリコピロニウムを加える治療法がSAL/FPにチオトロピウムを加えた場合に劣っていないかどうか、またSAL/FPだけの治療と比べてより有効かどうかを検討することとしました。

グリコピロニウムを割り当てたグループと、チオトロピウムを割り当てたグループの間で、12週間の治療後の1秒量の差が一定の範囲(最小二乗平均の差で60mL以内)にあれば、グリコピロニウムが「劣っていない」とすることに決めました。

 

◆グリコピロニウムに効果あり

研究終了まで割り当てた治療を続けられた参加者は全体の84.9%でした。グリコピロニウムを割り当てたグループで、12週間の治療後の1秒量は、偽薬を割り当てたグループと比べて統計的に有意に改善していました。チオトロピウムを割り当てたグループと比べると差はわずか(最小二乗平均の差で-7mL)で、「劣っていない」と判断されました。

偽薬を割り当てたグループと比べて、質問票で評価したCOPDの重症度スコアは改善し、緊急の投薬が行われた回数は少なくなっていました。深刻な副作用の頻度は3つのグループで同程度でした。

研究班は、グリコピロニウムとSAL/FPの組み合わせに「チオトロピウムとSAL/FPの組み合わせと比較できる範囲で効果があった」、また「SAL/FP単独よりもよい結果を示した」とまとめています。

 

COPDの治療は複雑になりつつありますが、このような比較を積み重ねることで、より洗練された治療が目指されています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Glycopyrronium once-daily significantly improves lung function and health status when combined with salmeterol/fluticasone in patients with COPD: the GLISTEN study-a randomised controlled trial.

Thorax. 2015 Apr 3

[PMID: 25841237 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。