じんがん(じんさいぼうがん)
腎がん(腎細胞がん)
腎臓の実質にできるがん。手術や分子標的薬により治療する。
10人の医師がチェック 260回の改訂 最終更新: 2024.05.08

腎がん(腎細胞がん)の基礎知識

POINT 腎がん(腎細胞がん)とは

腎臓の実質にできる悪性腫瘍です。50歳代の男性に多い傾向があります。遺伝子の異常や、喫煙、肥満、透析などが発生に関係していると考えられています。腫瘍が大きくなると血尿や痛み、腹部の膨らみなどが現れます。症状をきっかけに見つかることもありますが、他の目的(健康診断や他の病気の精査など)で行った画像検査(超音波検査やCT検査など)で偶然みつかることもあります。多くの場合、造影CT検査で診断が確定します。有効な治療法には手術や、薬物療法(分子標的薬)、があります。腎がんの検査や治療は主に泌尿器科で行われます。

腎がん(腎細胞がん)について

  • 腎臓の実質(実の部分)から発生するがん
  • がん全体の2%を占める
  • 罹患者数30458人(2020年:腎細胞がん以外も含む)
  • 死亡者数4654人(2021年)
  • 腎がんの約80%は淡明細胞型腎がんという種類
  • 近年は超音波検査の普及で早期発見されるケースが多くなってきた(ステージ1が6割程度を占める)
  • 腎がんを発病する危険性が上がる条件
    • 男性(男性の罹患者数は女性の約2倍)
    • 加齢:高齢になるほど発生しやすくなる
    • 肥満
    • 喫煙
    • 高血圧
    • フォン・ヒッペル・リンドウ病(遺伝性の病気)
    • バード・ホッグ・デュベ病(遺伝性の病気)
    • 透析患者
  • 腎臓にできるがんには「腎盂がん」というものもあるが、「腎細胞がん」とは性質も治療法も異なる
  • 腎盂がん膀胱がんと同じ尿路上皮がんという種類に分類される
  • 腎がんは基本的には画像診断で診断される
    • 小さな腎がんは、良性腫瘍との区別が難しい時がある
    • 腎がんの診断で手術を行い、最終的な診断が良性腫瘍のこともある
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腎がん(腎細胞がん)の症状

  • 初期では症状がほとんどないので、検診や他の病気の検査で偶然みつかることもある
  • 進行腎がんの特徴的症状(すべてを認めることはほとんどない)
    • 血尿
    • 腹部のしこり(腫瘤)
    • 脇腹から腰にかけての痛み
  • 腎がんの中には発熱や体重減少などの全身症状を起こすものがある
症状の詳細

腎がん(腎細胞がん)の検査・診断

  • 画像検査
    • 診断のために極めて重要であり、超音波検査CT検査が特に重要
  • 腹部超音波検査
    • 腎臓の病変を捉えることに有効
    • 健康診断で行われ発見されることも少なくない
    • 腹部超音波検査で腎がんの確定診断を行うことは稀
  • CT検査
    • 腎がんの診断で最も重要
    • 特にダイナミック造影CT検査という撮影方法が行われる
    • ダイナミック造影CT検査で淡明細胞型腎がんは特徴的な所見を呈する
    • 転移が多いためは胸部のCT検査も行われる
  • MRI検査
    • 腎臓の機能が低下して造影CT検査が行えない場合に行われることがある
    • 小さな腎がん良性腫瘍と区別が難しいときの区別
  • 骨シンチグラフィー検査
    • 進行している場合や骨転移が疑わしいときに行われる
    • 必ず行われる検査ではない
  • PET-CT検査
    • 転移や再発の有無を診断するのに有効とする意見がある
    • 必ず行われる検査ではない
  • 血液検査
    • 全身状態を調べることが目的腎がん腫瘍マーカーはない
    • 経過を予測する検査項目としてヘモグロビンLDH、カルシウム、CRPがある
  • 生検
    • 下記の理由から腎がんに対しては生検は限られた場合を除いて行われない
      • がんが周りに広がってしまう可能性(播種)
      • 腎がんは血流が豊富なので出血の危険性がある
    • 生検を考慮する場合
      • 他のがんが腎臓に転移をしていることが疑われるとき
      • 良性腫瘍と区別がつかないとき
  • ステージの決定
    • 腎がんのステージは1-4に分類される
    • ステージの決定には3つを用いる
      • 腎臓でのがんの状況
      • リンパ節転移の有無、状態
      • 離れた場所への転移の有無
  • 腎がんの転移先
    • 肺、骨、肝臓などが主な転移先
検査・診断の詳細

腎がん(腎細胞がん)の治療法

  • 手術による治療の効果が高い
  • 腎がんの手術
    • 根治的腎摘除術
      • 腎臓を全て切除
      • 開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット手術
    • 腎部分切除
      • 小さながんでのみ行うことができる
      • がんの部分のみを取る
      • 開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット手術
    • 遠隔転移している場合の手術
      • 遠隔転移があっても腎臓を取り除くことで余命の延長効果が期待できる
      • 他のがんは基本的には遠隔転移がある場合は手術をしない
    • 転移している部分に対する手術
      • 肺転移などを中心に行われる
      • 少ないケースだが転移している場所を切除することで根治することがある 
  • 転移している腎がんに対しては分子標的薬やサイトカイン療法を用いてい治療を行う
  • 腎がんの薬物治療
    • 腎がんのタイプによって適した薬が選ばれる
    • 分子標的薬
      • ソラフェニブ(ネクサバール®)
      • スニチニブ(スーテント®)
      • アキシチニブ(インライタ®)
      • パゾパニブ(ヴォトリエント®)
      • テムシロリムス(トーリセル®)
      • エベロリムス(アフィニトール®)
      • ニボルマブ(オプジーボ®)
      • イピリムマブ(ヤーボイ®):ニボルマブとの併用
      • ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)
      • アベルマブ(バベンチオ®):アキシチニブとの併用
      • カボザンチニブ(カボメティクス®)
      • レンバチニブ(レンビマ®):ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)との併用
    • サイトカイン療法
      • インターフェロンα
      • インターロインキン-2
  • 放射線治療の効果は低く、腎がんを治す目的には向かない
  • 骨転移などで痛みを認める場合は、症状緩和のため放射線治療が行われる
  • 長期的な経過
    • 再発は2年以内が多いが、かなり時間がたっての再発もある
    • 病理検査の結果、再発リスクが高いと考えられる人には再発率を下げる目的で抗がん剤治療が行われる(術後補助化学療法
    • 治療後も再発していないか確認するために定期的に検査を行うことが重要
    • 再発の有無の確認にはCT検査で行うことが多い
    • 再発時には分子標的薬もしくはサイトカインによる治療を行う
    • 再発の状況によっては手術による転移巣の切除も検討される
治療法の詳細

腎がん(腎細胞がん)に関連する治療薬

分子標的薬(キナーゼ阻害薬)

  • がん細胞が増殖する際のシグナル伝達に必要なキナーゼ(酵素)を阻害し抗腫瘍作用をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • がん細胞が増殖するために必要なシグナルの伝達にはキナーゼ(酵素)の活性化が必要となる
    • 本剤はがん細胞の増殖で重要な因子となるキナーゼを阻害し抗腫瘍効果をあらわす
  • 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
分子標的薬(キナーゼ阻害薬)についてもっと詳しく

分子標的薬(mTOR阻害薬)

  • がん細胞の増殖や血管の新生などに必要な物質の働きを阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞の増殖や血管の新生に関わるmTORという物質があり、がん細胞においてこの物質が活性化するとがん細胞の増殖などがおこる
    • 本剤はmTORの活性化を阻害し、がん細胞の増殖などを抑えることにより抗腫瘍作用をあらわす
  • 本剤はがん細胞の増殖・転移などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
分子標的薬(mTOR阻害薬)についてもっと詳しく

分子標的薬(ニボルマブ〔ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体〕)

  • がん細胞を攻撃するリンパ球T細胞を回復・活性化させ、がん細胞に対する免疫反応を亢進させることで抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 通常であれば、がん細胞は体内で異物とされリンパ球のT細胞によって攻撃を受けるが、がん細胞が作るPD-1リガンドという物質はリンパ球の活性化を阻害する
    • 本剤はPD-1リガンドによるリンパ球の活性化阻害作用を阻害することで、T細胞のがん細胞へ攻撃する作用を高める
  • 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
分子標的薬(ニボルマブ〔ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体〕)についてもっと詳しく

腎がん(腎細胞がん)の経過と病院探しのポイント

腎がん(腎細胞がん)が心配な方

腎がんは進行すると血尿や腹部の膨らみ、痛みなどの症状が現れます。しかし小さな腎がんは症状がないために自分で気づくことは難しく、腎がんを早期に発見する検査の方法は確立されていないので今の所、早い段階で見つけるのは難しいです。
ただし、近年は超音波検査やCT検査が多くの医療機関で導入されているためか他の病気の目的で調べた検査をきっかけに腎がんが見つかるケースが増えています。腎がんに特徴的な症状が現れた場合や画像検査で腎臓の異常を指摘された場合は、泌尿器科を受診して調べてもらってください。腎がんの疑いがあって詳しく調べる場合、万が一腎がんであったときをみこして手術ができる病院を選ぶ方がよいです。

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腎がん(腎細胞がん)でお困りの方

腎がんの治療は手術・薬物治療と確立しており、規模の大きな病院では基本的にガイドラインに沿った治療が行われています。大学病院や専門病院、地域の中核を担う市中病院での治療に大きな差はないと考えられます。
しかしながら、非常に進行した腎がんは例外だと言えます。手術が非常に難しい場合があるからです。大静脈という体の中心にある太い血管の血流を一時的に止める必要があったり、人工心肺を用いなければならない場合もあります。そうして込み入った条件が存在している場合には、病院選びに慎重になる必要があります。とはいえ、一日も早く手術を受けた方がよいという現実にも目を向けなければならず、ずっと迷い続けるというわけにはいきません。
そこで、診断を受けた医療機関で対応が難しいと言われた人や他の意見も聞いてみたいという人は、セカンドオピニオンを利用してみてください。セカンドオピニオンとは他の医療機関に自身の検査結果の情報を共有し、第三者的な立場の医師から意見をもらうことです。セカンドオピニオンの結果を踏まえた上で意思決定すると、より確度の高い治療を受けられたり、自身が納得できる治療を受けられる可能性が高くなると考えられます。

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