だいちょうぽりーぷ
大腸ポリープ
大腸の内側に、粘膜の一部が盛り上がったこぶ(ポリープ)ができた状態
6人の医師がチェック 131回の改訂 最終更新: 2022.05.16

大腸ポリープとはどんな病気?症状・原因・検査・治療など

大腸ポリープは大腸にできたキノコのようなできものです。良性のことが多いので、放置しても問題ないことが多いのですが、一部はがん化することがわかっているので治療が必要です。ここでは大腸ポリープの症状・原因・検査・治療などについて説明します。

1. 大腸ポリープとは?

大腸ポリープは大腸にポリープができる病気のことです。一体どんな病気なのでしょうか。

大腸とポリープについて説明します。

大腸とはどんな働きをしているのか?

私たちが食べた物は、まず胃で消化されてその後小腸に運ばれます。食べ物は小腸でさらに消化・吸収されて大腸まで運ばれます。大腸とは、このように消化・吸収された食べた物の残りかすから主に水分を吸収し、便をつくるところです。便は大腸を通過して身体の外に出ます。

ポリープ(polyp)とは?

ポリープは粘膜の部分にできる「いぼ」のような形をしたできものです。大腸の他にも喉(のど)、鼻、胃、子宮など身体のさまざまな場所にポリープはできます。一部の大腸ポリープは大腸がんに変化することが知られているので、治療が必要です。

大腸ポリープの種類

大腸ポリープにはいくつか種類があり、次のように分類されます。この分類については細かく覚える必要はありません。大腸ポリープにはいくつか種類があるということを理解してもらえれば十分です。

【大腸ポリープの種類】

  • 腫瘍性ポリープ
    • 悪性腫瘍(がん)
    • 良性腫瘍(腺腫)
  • 非腫瘍性ポリープ
    • 炎症性ポリープ
    • 過形成性ポリープ
    • 過誤腫性ポリープ
    • その他

このなかで最も多いのは良性腫瘍である腺腫とよばれるタイプのポリープで、すべてのポリープのうちの約2/3を占めるとされます。そのため大腸ポリープはこの腺腫を指す言葉として使われることもあります。

腫瘍性ポリープは腺腫と大腸がんの2つに分けることができます。見た目で明らかに大腸がんとわかる場合には正確にはポリープとはよびません。大腸がんか腺腫か見た目だけではわからない場合はポリープを切除して詳しく調べます。

非腫瘍性ポリープは大腸に起きた炎症などが原因でできます。腫瘍性ポリープは治療が必要ですが、非腫瘍性ポリープは治療が必要ではありません。非腫瘍性ポリープかどうかは内視鏡検査で見分けられることが多いと考えられていますが、区別が難しい場合には切除して顕微鏡で調べることがありあす。

2. 大腸ポリープの症状

大腸ポリープはほとんどの場合無症状です。

しかし、ポリープが大きくなると便とこすれて出血して便に血が混ざったり(血便)、腸の流れを妨げて便秘などの症状が起きることもまれにあります。

症状については「大腸ポリープの症状」で詳しく説明しているので参考にしてください。

3. 大腸ポリープの原因:加齢・肥満・遺伝・大腸の病気

大腸ポリープの主な原因として次のようなものが知られています。

上に挙げたものは大腸ポリープの発生に関係していることが知られています。当てはまるものがあったとしても、必ずしも大腸ポリープになるわけではありません。しかし、原因をもたない人に比べると大腸ポリープになる可能性が高いのは事実です。

このなかには加齢や遺伝、大腸の病気(クローン病潰瘍性大腸炎)など避けがたいものも含まれています。避けがたい原因を解決することは難しいので、定期的に検査を行い大腸ポリープを早期に発見することが対処法になります。人によって定期的な検査の方法や間隔は異なるので、お医者さんの話をよく聞いて相談することが大切です。

一方、肥満は自分の力によって解決することができます。BMI(Bosy Mass Index)などを用いて自分の適正な体重を知り、減量に取り組んでみてください。減量は簡単ではないこともありますが、食事療法や運動療法を生活に上手に取り入れてみるとよいでしょう。

原因については「大腸ポリープの原因」で詳しく説明しているので参考にしてください。

4. 大腸ポリープの検査:下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)など

大腸ポリープが疑われた場合には次のような診察や検査を用いて調べられます。

  • 問診
  • 身体診察
  • 注腸造影検査
  • 下部消化管内視鏡検査大腸カメラ
  • 病理検査

これらの診察や検査を上手に組み合わせることにより、大腸ポリープの種類や他の病気の可能性が調べられます。また、検査結果に応じて治療の必要性が判断されます。

診察や検査のそれぞれの内容は「大腸ポリープの検査」で詳しく説明しているので参考にしてください。

5. 大腸ポリープの治療:内視鏡治療(ポリペクトミー・ESD・EMR)・手術など

大腸ポリープがある人は、必ず治療を受けなければならないというわけではありません。大腸がんを含んでいたり、その後大腸がんになる可能性が高い人には治療が勧められます。大腸ポリープの治療は内視鏡治療と手術の2つがあります。ほとんどの人は身体への負担が小さい内視鏡治療を行うことができますが、内視鏡治療が難しい人には手術が行われます。

大腸ポリープで治療が必要なのはどんな人か

大腸ポリープには腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープの2つがあります。治療が必要となるのは、腫瘍性ポリープのうちがんが疑われる人です。

腫瘍性ポリープのうちがんが疑われるのは、次の条件のいずれかに当てはまる人です。

  • 大腸ポリープの直径が6mm以上の人 
  • 大腸ポリープの形がクレーター型の人
  • 大腸ポリープの見た目ががんと似通っている人

この条件のいずれにも当てまはらない場合はポリープの中にがんが含まれている可能性が低いので、無治療で経過観察をしても問題がないと考えられています。

大腸ポリープの治療にはどのようなものがあるのか

大腸ポリープの治療は大きく分けて内視鏡治療と手術の2つがあります。さらにそのなかでもいくつかの方法に分けられます。

【大腸ポリープの治療】

  • 内視鏡治療
    • ポリペクトミー
    • EMR(内視鏡的粘膜切除術)
    • ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
  • 手術
    • 開腹手術
    • 腹腔鏡手術

ほとんどの人はお腹を切らなくてよい内視鏡治療ですますことができます。「ポリープが大きい人」、「ポリープの数が多い人」など内視鏡治療が難しいと考えられる人には手術が行われます。

内視鏡治療や手術は「大腸ポリープの治療」で詳しく説明しているので参考にしてください。

6. 大腸ポリープの人が知っておきたいこと

大腸ポリープが見つかると、大腸がんとの関係が気にかかるところだと思います。ここでは大腸ポリープの人が知っておくとよいことを3つ取り上げます。

大腸ポリープの大きさと悪性度の関係

大腸ポリープの大きさと悪性度には関係があると考えられています。

ポリープが6mm以上の大きさになると、がんが含まれている確率が上がることがわかっています。一方で、小さなポリープはがんを含む確率がかなり低いと報告されているので、治療せずに経過観察をします。

大腸ポリープは再発するのか

大腸ポリープは再発することがあります。このため、定期的に検査をすることが望ましいと考えられています。

ただし、どのような頻度でどんな検査をすると大腸ポリープの再発を最もよく見つけられるのかはわかっていません。一人ひとりのポリープの状態に合わせて検査の間隔や方法が決められるので、お医者さんとよく相談して定期検査を受けるようにしてください。

大腸ポリープは予防できるのか

大腸ポリープの原因の1つに肥満があります。

肥満を示す指数であるBMI(Body Mass Index)が高いほど、大腸ポリープをもっている人の割合が増えることが知られています。BMIは次の計算式で求められます。

  • 体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]

BMIの正常値は18.5以上25未満で、日本人では25を超えると肥満と診断されます。BMIが25を超えると大腸ポリープができる人の割合が増加する、という研究報告があります。このため、減量は大腸ポリープの予防に有利に働く可能性があります。

その他に大腸ポリープを予防する方法は残念ながらわかっていません。

大腸ポリープでもっとも注意が必要なのは、大腸がんへの変化です。大腸ポリープの有効な予防法は今のところないので、定期的に検査を受けて大腸ポリープを早期に発見することで、大腸がんによって生命を脅かされる危険性を小さくすることができます。

お医者さんに定期的な検査について相談して、なるべく早期に大腸ポリープを発見できるように取り組んでみてください。

参考文献
・日本消化器病学会/編, 大腸ポリープ診療ガイドライン, 南江堂, 2020
・FA Macrae, Overview of Colon polyps UpToDate