大腸ポリープの検査について:便潜血・下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)などはどんなことをするのか?
大腸ポリープはほとんどが無症状なので、健康診断の便検査などをきっかけに疑われることが多いです。大腸ポリープが疑われる場合の診察や検査について説明します。
目次
1. 問診:自覚症状や背景の確認
大腸ポリープが疑われる場合には以下のようなことを聞かれます。
- 気になる身体の症状はあるか(自覚症状はあるか)
- 排便に問題はあるか
- 便秘や下痢はないか
- 便が細くなっていないか
- 便が残ったような感じはあるか
- 便に血液が混じることはあるか
- 持病はあるか、過去にどんな病気になったことがあるか
- 定期的に受診をしている病気はあるか
- 入院したことはあるか
- 普段飲んでいる薬はあるか
- 血のつながった家族に大腸がんや大腸ポリープにかかった人はいるか
これらの質問はすべて、その後の検査や治療の方針を決めるのに必要な情報です。このなかで特に重要なものをもう少し詳しく説明します。
自覚症状はあるか
大腸ポリープはほとんど症状が出ないため、健康診断の便検査(便潜血検査)などをきっかけに発見されることが多いです。ポリープが大きくなると、便に血が混じったり便秘になったりといった症状が現れます。
気になる症状がある場合にはもれなくお医者さんに伝えるようにしてください。「この症状は病気と関係ないのかな」と気にされる人がいますが、どんな細かなことでも遠慮なく伝えておきましょう。
普段飲んでいる薬はあるか
「
「お薬手帳」を活用するともれなく上手に情報を伝えることができます。お薬手帳には「薬の名前」だけでなく「薬の量」や「いつから飲んでいるか」などが詳しく書かれています。見せるだけで、服用している薬の詳細をを医療者に伝えることができます。
血のつながった家族に大腸がんや大腸ポリープにかかった人はいるか
ほとんどの大腸ポリープは遺伝とは関係がないと考えられています。しかし、家族性大腸腺腫症のように遺伝性に大腸ポリープを発生させる病気もあります。家族性大腸腺腫症はまれな病気ではありますが、大腸ポリープが多発し大腸がんを引き起こします。
大腸ポリープが遺伝性のものである場合には検査や治療法が変わってきます。そのため血のつながった家族に大腸ポリープや大腸がんになった人がいる場合は、お医者さんに伝えるようにしてください。
2. 身体診察
問診に続いて行われる身体診察では、身体の状態についてくまなく観察されます。
大腸ポリープが疑われる場合には次のような診察が行われます。
- 視診:身体の見た目をくまなく観察する診察
聴診 :聴診器を使って身体の中にある臓器の音を聞く診察- 触診:身体に触れて行う診察
- 打診:身体を優しく叩いてその感触から体内の状態を調べる診察
- 直腸診:肛門から人指し指を入れて直腸に病気があるかを調べる診察
このなかで特に重要なのは直腸診です。
直腸診はお医者さんが手袋をした指を肛門から入れて、病気があるかどうか触って調べる検査です。直腸診を受けるとき、もしも痛みがある場合には遠慮なくお医者さんに伝えてください。ゼリーをつけることで痛みを小さくすることができます。
3. 便潜血検査:便の中に血が混じっているかどうか調べる検査
便潜血検査は便の中に血液が混じっているかどうかを調べる検査です。便潜血検査では見た目では分からないようなわずかな出血もみつけることができます。ポリープや
便潜血検査が陽性の人では、さらに詳しく調べるために
4. 注腸造影検査:腸の形を詳しく見るためのレントゲン検査
肛門から造影剤(バリウムなど)を流し入れ、体の向きを変えながら大腸の
ただ大腸の中に便が残っているとうまく観察ができません。そのため検査前には食事を中止して下剤を飲み、大腸を空っぽにする必要があります。
5. 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
下部消化管内視鏡検査(
大腸の中に便が残っていると、便に隠れて
6. 病理検査:取り出したポリープを顕微鏡で見る検査
「下部消化管内視鏡検査」や「内視鏡治療」、「手術」で取り出したポリープは、病理検査で詳しく調べられます。病理検査では顕微鏡を使ってポリープを観察し、「がんが含まれているか」どうかを調べます。ポリープが悪性(がん)であった場合、「病気の部分をすべて取り切れたか」や「病気の進行度はどうか」も調べられます。がんが残っていると病理検査で判断されたら、追加で内視鏡治療または手術が行われます。
病理検査の結果は極めて重要です。自分のポリープがどのような性質だったか注意して聞いてください。
7. 大腸ポリープの人が検査を受ける間隔
大腸ポリープが見つかった後は治療の有無に関わらず、定期的に検査を受けていくことになります。ポリープの再発や増大を見つけることが目的です。大腸ポリープの定期検査は、主に便潜血検査または下部消化管内視鏡検査です。
便潜血検査の場合
「大腸ポリープ
下部消化管内視鏡検査の場合
下部消化管内視鏡検査は大腸ポリープを見つける検査として優れています。一方で、身体の負担にもなるので検査の間隔は短すぎないことが望まれます。
大腸ポリープの人にとって適切な検査の間隔はまだはっきりとわかっていません。このため、検査の間隔はポリープの状態を鑑みて決めていく必要があります。お医者さんの話をよく聞いて十分に相談して検査の間隔を決めてください。検査で異常がない状態がしばらく続いた場合には、検査の間隔を長くすることもできます。
参考文献
・日本消化器病学会/編, 大腸ポリープ診療ガイドライン, 南江堂, 2020
・FA Macrae, Overview of Colon polyps, UpToDate