はんげつばんそんしょう
半月板損傷
半月板(膝関節内にありクッションの役割がある)が損傷した状態
4人の医師がチェック 110回の改訂 最終更新: 2022.04.26

半月板損傷の治療について:手術のメリット・デメリットや保存療法、リハビリテーションのやり方について

「半月板損傷」という言葉はスポーツ選手の怪我のニュースとして耳にすることが多いかもしれません。そして、手術のニュースもセットで報道されることが多いように思います。そのため、半月板損傷の治療では手術のイメージが強いかもしれませんが、実は手術をしないケースもあります。このページでは手術について深堀りするだけでなく他の治療についても触れていきます。

1. 半月板損傷症の治療にはどんなものがあるのか

半月板損傷の治療というと「手術」が頭に浮かぶかもしれませんが、それだけではありません。

【半月板損傷の治療】

  • 手術
    • 半月板切除術
    • 半月板縫合
  • 保存的治療
  • リハビリテーション

半月板損傷をした全員に手術が必要なわけではありません。手術をせずに回復を待つ方法(保存的治療)もあります。 半月板損傷の程度が重い人や、競技スポーツ者、保存的治療で症状が良くならない人には手術が検討されます。手術の方法には傷ついた半月板を取り除く方法と、半月板を縫い合わせる方法があり、それぞれで長所と短所があります(この後で説明します)。

保存的治療は手術をしない治療法を指し、安静や鎮痛剤の使用によって回復を待ちます。そして、手術と保存的治療のどちらを選んでも必要になるのが、リハビリテーションです。関節の動きを滑らかにしたり、筋力を強化して日常生活や競技にもどるために不可欠です。

2. 半月板損傷の手術:方法(切除術・縫合術)や手術後の経過について

次に、手術が必要な人やその方法、術後の経過などについて個別に説明します。手術を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

手術したほうが望ましい人

全ての人に手術が必要なわけではありません。次の条件に該当するものがあると手術を積極的に検討します。

【半月板損傷で手術を積極的に検討する人】

  • 半月板損傷の程度が重い人
  • スポーツ選手
  • ロッキング症状がある人
  • 保存的治療を行ったものの症状が改善しない人

損傷の程度が軽い場合には保存的治療で回復が見込めますが、重い場合には手術をして半月板の一部を取り除いたり、半月板を縫い合わせる必要があります。また、スポーツ選手では早期に競技への復帰を望む場合が多く、そうした事情を踏まえたうえで手術を選びます。手術には麻酔や身体にメスを入れるといったリスクがありますが、早期復帰のメリットのほうが上回る考えられるケースが多いです。もちろん、スポーツ選手でも損傷が軽度である場合には保存的治療で競技復帰が望める場合もあるので、自身の考えにあった治療法を選べるよう、メリットとデメリットをよく聞いてください。

症状も手術をするかどうかの判断材料になります。傷ついた半月板が膝の進展を妨げる「ロッキング」という症状がある場合には手術が必要ですし、保存的治療を行っても症状に改善が見られない場合にも手術が検討されます。

手術の方法

手術の方法には「半月板切除術」と「半月板縫合術」の2つがあります。いずれも関節鏡という内視鏡の一種を利用して手術が行われるので、小さな傷で手術を行えます。また、麻酔方法も全身麻酔と半身麻酔(覚醒した状態で下半身だけの麻酔)のどちらでも行えます。

■半月板切除術

半月板の傷ついた部分を取り除く方法です。手術時間が短く済み、復帰までの期間も短いとされています。

■半月板縫合術

傷ついた半月板を縫い合わせて、できるだけ半月板を温存する方法です。切除術に比べて手術時間は長くなることが多く、復帰までの期間も長いとされます。手術にもリハビリテーションにも時間が必要となる縫合術ですが、半月板を温存できるので、将来的には変形性膝関節症発症リスクを下げられると考えられています。長期的に見るとメリットが大きい縫合手術ですが、希望をしても受けられない場合があります。具体的には、損傷の程度が激しく縫い合わせるのが難しい場合や、治りにくい場所(半月板の辺縁部:縁のこと)が損傷している場合です。その際には、切除術を選ぶことになります。

手術後の経過

手術後はすぐにリハビリテーションが始まります。詳しくは後述する「半月板損傷のリハビリテーション」を参考にしてください。半月板縫合術のほうが競技復帰までの時間を必要とし、半月板切除術に比べて1ヶ月程度長くなることが多いです。

3. 半月板損傷の保存的治療:安静や鎮痛剤(痛み止め)、ヒアルロン酸の関節内注射など

手術をせずに身体の回復力によって改善を待つ治療法を保存的治療と言います。しかしながら、ただひたすら回復を待つというわけではありません。怪我した直後は膝を動かすと悪化する可能性があるので、膝を固定して松葉杖などを使って体重をかけないようにします。また、痛みを抑えるために鎮痛剤を使ったり、膝関節に注射をします。

地味で自助努力も必要な治療ですが、手術とは違って半月板を温存できるので、将来変形性膝関節症になりにくいというメリットがあります。基本的には入院する必要もありません。

4. 半月板損傷のリハビリテーション:内容・開始時期・期間

リハビリテーションはいわゆる「リハビリ」のことです。手術後は、膝関節の動きが制限されるので、その影響で膝の動きが固くなります。そこで、膝の動きを元の状態に近づける目的でリハビリテーションが行われます。また、膝の周囲の筋力を鍛えることで、膝の負担を軽減することができるので、保存的治療を選んだ人にも行われます。

リハビリテーション開始の時期と内容

手術後の膝には腫れや痛みがあり、傷の状態を見ながら開始時期やメニューが決められます。ただし、安静期間が長くなると筋力低下が進むので、早い時期にリハビリテーションを始めたほうが筋力の維持に有利です。そのため、松葉杖を使った歩行練習などは、通常手術の翌日から行われます。傷の痛みもあり、つらい時期ですが、頑張ってください。リハビリテーションのメニューは軽いものから少しずつ重いものへと強度が上がっていきます。最初は体重をかけずに歩いたり、患部に負担をかけないようにしながら筋力の向上をはかります。その後、補助なく歩いたり、自転車のような機械を使ったトレーニングに進んでいきます。なお、手術の方法によって、リハビリテーションのメニューや進行具合に違ってきます。半月板縫合術に比べて半月板切除術のほうがリハビリテーションの進行が早い傾向にあります。

リハビリテーションの期間

リハビリテーションの期間は手術の方法で異なります。スポーツ復帰までにかかる期間は、部分切除では4ヶ月程度、縫合術では5ヶ月程度と、縫合術のほうが1ヶ月ほど長くなることが多いです。また、リハビリテーションの期間には年齢やもともとの筋力などさまざまな要素によって決まるものなので、個人差があることも知っておいてください。

参考文献

Dennis A Cardone, Bret C Jacobs, Meniscal injury of the knee. UpToDate. 最終更新日2020.7.14