花粉症の検査:問診、視診、原因となる花粉の種類を調べる
外に出ると鼻水や鼻づまりが悪化したり、目がかゆくなったりしたら、花粉症の心配する人がいるかもしれません。また、どの診療科を受診したら良いか迷ってしまう人もいると思います。このページでは、受診に適した診療科や花粉症の診断の方法について詳しく説明します。
目次
1. 花粉症の相談をしたい時は何科を受診すれば良いか
花粉症かもしれないと思った人は、症状が強く出ている部位の専門科に受診すると良いです。例えば、鼻詰まりや鼻水がつらい人は耳鼻科を受診するといった具合です。
【症状別の受診科】
- 鼻づまりや
鼻汁 、鼻のかゆみが強い:耳鼻科 - 目のかゆみや目やにがある:眼科
- 皮膚のかゆみや赤みが強い:皮膚科
- だるさ(
倦怠感 )や微熱などの全身の症状が強い:内科 - 子どもに症状がある場合:小児科
症状がいくつもあってどこに行けばいいか迷う場合や、近くにある診療科が限られている場合には、上のいずれかの診療科を受診すれば診察してくれるので心配はいりません。
花粉症の検査は大きな病院でなくとも、近くの医院などでも受けることができます。詳しい検査を受けたい人は、受診する前に検査を行っているか問い合わせてみてください。
2. 花粉症の診断基準
花粉症の診断に検査は必須ではありません。しかし、検査を行うと、原因となっている花粉症の種類を知ることができ、より効果的な対処につながることがあります。
花粉症の検査には2種類あります。花粉症であるという診断の検査と、どの種類の花粉が原因なのかを調べる検査です。
花粉症の診断はアレルギー性鼻炎の診断基準が使われる
花粉症はアレルギー性鼻炎に含まれます。アレルギー性鼻炎のうち原因が花粉のものを花粉症と言います。アレルギー性鼻炎は鼻の過敏症状がある病気で、
<診断基準>
- 鼻の過敏症状がある:くしゃみ、水様性鼻漏(水のようなサラサラした鼻水)、鼻づまり
- 以下の条件のうち2つ以上が陽性
- 皮内反応または、
スクラッチテスト または、血清中抗原特異的 IgEが陽性 - 鼻汁中好酸球が陽性
- 抗原誘発反応が陽性(ただし、誘発反応の抗原は現在はブタクサとハウスダストのみしかない)
- 皮内反応または、
- ただし、上記1つのみが陽性の場合は、鼻の過敏症状の典型症状があり、アレルギー検査(鼻汁好酸球数、血中好酸球数、血中総IgE)が中等度以上なら診断しても良い
厳密な診断が必要な場合には、上記の診断基準に従って検査を行います。しかし、実際には、上記全ての検査を行うことはあまりなく、
3. 問診:季節性の有無と症状
鼻や目のアレルギー症状が一年中見られるのか、一定の季節のみに見られるのかによって、通年性アレルギーなのか、花粉症(季節性アレルギー)なのかを判断することができます。
一般的には、ダニやハウスダストのアレルギーでは一年中症状があります。花粉症は
スギ花粉が飛散する時期は、ちょうど
区別するポイントとしては、花粉症では鼻症状に目のかゆみや目やになどの目の症状を伴うことです。鼻水は花粉症では水のようなサラサラした鼻水のことが多く、かぜ症候群では、症状が悪化すると粘っこい鼻水になることがあります。
とはいえ、正確に判断することは難しいので、はっきりしない場合には医療機関で相談することをお勧めします。
花粉症の検査②:鼻や目の粘膜の視診
症状のある部位を診察することで、症状と一致した粘膜の変化から診断することが可能です。
鼻の症状がある場合は鼻の中を観察します。鼻鏡という道具を用いて、鼻の穴を広げて観察します。一般的に花粉症の場合は、鼻粘膜が赤く腫れているのが観察できます。
目の症状がある場合は目の診察をします。眼球や
4. 鼻汁や結膜の好酸球検査
花粉症の症状のある鼻や目に、アレルギーに関与する好酸球がいるかどうかを調べる検査です。
花粉症の症状がある時期に鼻水や目やにの中に好酸球がいる場合は、アレルギーによる症状と診断ができます。注意点としては、花粉が飛散していない時期には好酸球は出ないこと(陰性)が多く、1回の検査で陰性でもその後陽性となることがあるので、症状があれば検査を何回か受けることも必要になります。
5. 何のアレルギーか調べる検査
アレルギーであることがわかった場合は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を調べることがあります。花粉症の場合は、アレルゲンを調べることで、どの時期に注意すれば良いか判断できるので便利です。
アレルゲンを調べる方法に、皮膚テストと血清特異的IgE
これらの検査の注意点は、検査で陽性でも必ずしもアレルギーを
また、検査の
皮膚テスト(皮内テスト、スクラッチテスト、プリックテスト)
皮膚テストは前腕(肘より先)で行います。皮内注射でアレルゲンを注射する皮内テストと、アレルゲンをつけた部分に針先で傷をつけるスクラッチテストや

皮膚テストのメリットは、費用が安く、短時間で結果が分かることです。デメリットは、検査に痛みがあることと、検査前に少なくとも1週間はアレルギーの薬の使用をやめなければならないことです。薬を中止している1週間は、鼻水や鼻づまりなどのアレルギー症状を我慢しなければなりません。その他、検査による反応で皮膚にかゆみや腫れが起こり、後まで残ることがあります。
血清特異的IgE抗体検査
血清特異的IgE抗体検査は血液検査です。アレルギー症状がある場合は保険で検査を行うことができます。3割負担で5,000円ほどの検査です(2025年1月)。
検査するアレルゲンを自由に選ぶ方法では、一度に検査を行うことができるのは13項目までです。その他に、決まった33項目を調べることができるMASTⅢや、39項目を調べることができるViewアレルギーなどの検査方法もあります。いずれも検査結果がでるまでには数日間かかります。
最近では30分程度で検査結果がわかるアレルギー迅速検査もあります。指先から少量の血液を採取するのみで、検査できます。医療機関によって実施可能な検査が異なるので、事前に問い合わせてみてください。
6. 花粉症の重症度の基準:ひどい花粉症かどうか
鼻アレルギー診療ガイドラインでは、花粉症の症状に応じて重症度分類を行います。「くしゃみ発作や鼻水」と「鼻づまり(鼻閉)」のうち症状が強いほうで重症度が決められます。花粉症で一番ひどい時期は、最重症に該当する人が少なくありません。
- 最重症
- くしゃみ発作または鼻水をかむ回数:1日の平均21回以上
- 鼻づまりの程度:1日中完全につまっている
- 重症
- くしゃみ発作または鼻水をかむ回数:1日の平均11-20回
- 鼻づまりの程度:非常に強く,1日のうちかなりの時間が口呼吸である
- 中等症
- くしゃみ発作または鼻水をかむ回数:1日の平均6-10回
- 鼻づまりの程度:強く,1日のうちときどき口呼吸である
- 軽症
- くしゃみ発作または鼻水をかむ回数:1日の平均1-5回
- 鼻づまりの程度:口呼吸は全くないが、鼻がつまっている
参考文献:鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版
治療方針はこの重症度や、くしゃみ鼻水が多いタイプか、鼻づまりタイプかなども参考にして検討されます。