[医師監修・作成]虚血性大腸炎の検査:CT検査や内視鏡検査など | MEDLEY(メドレー)
きょけつせいだいちょうえん
虚血性大腸炎
大腸への血のめぐりが悪くなり必要な酸素や栄養が届かなくなるため、大腸が炎症を起こしたり大腸が壊死したりしてしまう病気
8人の医師がチェック 81回の改訂 最終更新: 2022.03.04

虚血性大腸炎の検査:CT検査や内視鏡検査など

虚血性大腸炎は診察やいくつかの検査を用いて診断します。虚血性大腸炎は腹痛・血便・下痢が特徴的な症状ですが似た症状が現れる病気は他にもあります。他の病気と見分ける目的で検査が行われることもあります。

1. 虚血性大腸炎の診察:問診・身体診察

虚血性大腸炎は腹痛や血便、下痢などがよく現れる症状です。しかし腹痛などは誰しもが経験する症状でありその様子から虚血性大腸炎かを完全に見分けることは難しいです。このための診察や検査を用いながら虚血性大腸炎の診断を行います。

参考文献
・矢﨑義雄/編, 朝倉内科学, 朝倉書店, 2019
・福井次矢, 黒川 清/日本語監修, ハリソン内科学 第5版, MEDSi, 2017ハリソン内科学

問診

問診は症状からどのような病気の可能性があるかを絞り込むためにとても大事です。虚血性大腸炎でよく現れる腹痛・下痢・血便についての問診を解説します。医師がどのような意図で問診をしているかの参考にしてもらえればと思います。

【腹痛に関する問診の例】

腹痛の原因はいくつもあり、病気がなくても腹痛が起こることがあります。一口に腹痛と言っても少しずつ様子は異なります。腹痛に関する問診の例は以下のものです。

  • いつから腹痛が起きましたか? 
  • お腹のどの辺りが痛みますか? 
  • 痛みは鋭い痛みですか?鈍い痛みですか? 
  • 痛みに変化はありますか?痛みが強くなったり弱くなったりしますか?

虚血性大腸炎は突然、腹痛があらわれることが特徴の一つです。また腹痛の場所で多いのは左の下腹部です。痛みが緩やかにあらわれたりみぞおちの辺りが痛む場合は他の原因の比重を重くして考えたりします。

腹痛には様々な種類がありますが、痛みの特徴は言葉で表現することが難しいこともあります。上の問診例などを参考にして医師に伝えてみてください。

【血便に関する問診の例】

血便は便の中に血が混ざったもののことです。似たような言葉に下血があります。下血は血液により黒色やタール様になった便のことをさします。ややこしい話ですが臨床現場では血便は下血に含まれるという考えもあり血便のことを下血ということもあります。

  • 血便が出た時間はいつですか?
  • 血便の色はどのような色でしたか? 
  • 血便の量はどれくらいですか? 
  • 以前にも血便はありましたか?
  • 血便と同時にでた便は硬かったですか?それとも下痢気味でしたか?

血便の原因になる病気は虚血性大腸炎の他にも大腸がん大腸ポリープクローン病など様々な病気が考えられます。

病気によっても少しずつ血便に特徴があるので血便の状態を医師に伝えてください。

【下痢に関する問診の例】

形をなさない液状〜泥状の便を下痢といいます。

  • 下痢の回数や間隔はどれくらいですか?
  • 下痢は水のような下痢ですか?粘り気のある様子ですか?
  • 下痢の色について教えてくれますか?
  • 食事の内容を教えてくれますか? 
  • 吐き気や吐いたりすることはありましたか? 

虚血性大腸炎の下痢は水の様な下痢(水様性下痢)が特徴的です。発症直後は便の回数が増えますが長く続くことはありません。

【その他】

虚血性大腸炎は他の症状が現れることもあります。いつもと違う様子や症状などがあれば伝えてください。それ以外にも過去にかかった病気や治療中の病気、内服している薬などがあれば伝えてください。

  • その他にも症状があれば教えてください。
    • 症状を伝えるときには「いつからか」、「どの程度か」、「症状はひどくなっているか」など具体的な特徴がわかるほうが手がかりになりやすいです。
  • 今までにかかったことのある病気も分かる範囲で具体的に教えてください。 
    • 手術や入院歴がある場合にはその内容をわかる範囲で伝えてください。症状の原因への手がかりになることがあります。
    • 例)子宮頸癌に対する放射線治療をしたことがある、最近大腸ポリープ切除を行ったなど
  • 今内服している薬を教えてください。
    • 持病の治療で飲んでいる薬が腹痛の原因になることもあります。薬はできれば名前がわかるほうが望ましいです。お薬手帳などを利用してみるとよいと思います。
    • 例)抗生物質の内服、鎮痛剤の内服など

ここに示したものはあくまでも例です。気になる点などは遠慮なく医師に伝えてください。一見関係なさそうなものでも重要な手がかりになるかもしれません。

身体診察

腹痛や血便がある場合の身体診察は腹部を中心に行います。

  • 視診
    • 腹部の状態を観察します。腹部が極端に膨らんでいないかや手術の傷の有無、血管の怒張がないかなどを確認します。
  • 聴診
    • 聴診器を用いて腸が動く音(腸蠕動音)を聞きます。虚血性大腸炎はその程度によって腸蠕動音が変化します。
  • 打診
    • 指で軽く腹部を叩き痛む場所やその音を観察します。腸にガスが多くたまっていると太鼓を叩いたような音(鼓音)がすることがあります。
  • 触診
    • お腹を触る診察です。痛む場所やお腹の硬さ、塊の有無を観察しています。腹部が板のように硬くなるのは腹膜炎という病気が疑われ重い状態である可能性があります。

打診や触診では医師が触れたりしたときの感じを尋ねられることがあると思います。「こんなこといってもいいのかな?」など遠慮気味になる人もいますが、少しでも感じるところがあれば伝えるほうがいいと思います。医師も診察から方向性を探ろうとしているので少しでも多くの情報があるほうが有り難いと思うからです。

2. 虚血性大腸炎の血液検査

虚血性大腸炎は軽症なことが多く適切な治療により症状が良くなります。しかし中には注意が必要な場合もあり、重症度を見分けるために血液検査を参考として用いることがあります。

血球検査

血球検査は血液細胞(赤血球白血球血小板など)の個数を数えたりその形を観察する検査です。血球検査には多くの項目がありますが、虚血性大腸炎では以下の項目に注目します。

  • 白血球の数 
  • ヘモグロビンの値

白血球の値が高かったりする際には強い炎症が起こっている可能性を考えます。ヘモグロビンは赤血球の中に存在するタンパク質です。ヘモグロビンは体の中の赤血球の量の目安にします。虚血性大腸炎は血便がよく現れます。虚血性大腸炎を原因とする血便は、輸血などを必要としない程度のことが多いです。しかしどの程度出血しているかの見当をつけたり輸血の必要性を判断するには血球検査を用いて判断することが多いです。

生化学検査

虚血性大腸炎は大腸の血流が悪くなることを原因とする病気です。血液の流れが悪くなると血液中で増加する物質があり、虚血性大腸炎の診断や重症度を判断する目安にすることがあります。

血流が悪くなった影響で大腸に障害が起きるとLDHやCK(クレアチンキナーゼ)などの物質が血液中に増えます。その他では脱水の評価に用いるBUN(尿素窒素)やクレアチニンなどにも注目します。

ここで示した検査項目は他の原因でも基準範囲を外れた数値になることがあります。血液検査は診断の参考にこそなりますが診断の決め手とはならないこともあります。

凝固検査

怪我などをしたときに血が固まることを血液凝固(ぎょうこ)といいます。凝固はいくつかの物質が働き合って成立します。虚血性大腸炎は、血液がかたまり小さな血栓ができて血管に詰まることも原因の一部として推測されています。虚血性大腸炎の人の中には、凝固検査で基準値を外れた値が出る人がいます。虚血性大腸炎では必ずしも凝固検査で異常値が出るわけではありません。しかし似た症状が現れる病気との区別などで有用なことがあります。

3. 虚血性大腸炎の画像検査・内視鏡検査

虚血性大腸炎はCT検査などに代表される画像検査や内視鏡検査を用いて診断します。それぞれの検査には特徴があり適した場面で用います。

参考文献
Am J Gastroenterol. 2015;110:18-44

レントゲン検査

レントゲン検査は放射線のX線を用いた検査です。健康診断などで検査を受けた経験があるかもしれません。レントゲン検査を用いて腹部を調べると腸にガスや液体がたまっているかなどを観察することができます。

注腸造影

注腸造影は肛門から造影剤という薬剤を注入して腸の形やしわを観察する検査です。虚血性大腸炎が起きていると大腸が浮腫(ふしゅ)を起こして大腸の中が狭くなっている様子(母指圧痕像:thumb-printing sign)などを観察することができます。浮腫とは「むくみ」と同じで、組織が腫れあがっている状態を指します。大腸の壁が内側に向かって腫れあがることで中が狭くなります。

腹部超音波検査

超音波検査エコー検査とも呼ばれる検査方法です。超音波を体に当てると、超音波の跳ね返りから体の中の様子を画像で観察できます。超音波検査は液体のたまりなどを観察するのに向いています。

腹部超音波検査では炎症で厚くなった腸の壁などの様子を観察することができたり他の病気の有無の検索に役立ちます。CT検査や注腸造影などと組み合わせて診断に用います。

超音波検査は放射線を使わないので放射線による影響がありません。

CT検査(造影CT検査)

CT検査は放射線を使った画像検査です。レントゲン検査よりも多くの放射線を使います。CT検査では体を断面ごとに撮影することができます。虚血性大腸炎を診断するにあたってCT検査はとても重要です。CT検査はレントゲン検査より多くの情報を得ることができます。

CT検査の方法の一つに造影剤を使用する造影CT検査があります。造影CT検査は造影剤を注射で体の中に入れてCT検査をします。造影剤は血管の形をくっきり写し出します。また血流が多い臓器は造影剤により白く色づきます。虚血性大腸炎は血流が悪くなっているので腸の色づきが乏しくなったり炎症による浮腫で腸の壁が厚くなっている様子を観察できます。また造影CT検査は虚血性大腸炎と他の重い病気とを区別することにも有効で、緊急での対応が必要な血管の病気や腸の病気と見分けるのに役立ちます。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)

下部消化管内視鏡検査はいわゆる大腸カメラのことで虚血性大腸炎の診断にも用いられます。虚血性大腸炎の発症から48時間以内に下部消化管内視鏡検査を行うことを勧める意見もあります。しかし、診察と他の検査(CT検査など)で診断ができるなど必要が少ないと思われた場合や、検査自体が危険だと思われた場合にはただちに行わないこともあります。

虚血性大腸炎を起こしている腸は脆くなっていることがあります。腸が脆くなった状態は通常の検査よりも腸に穴が空くなどの合併症の可能性が心配されます。したがって下部消化管内視鏡検査には慎重さが求められます。

とはいえ虚血性大腸炎と似た症状が現れる病気はいくつもあります。大腸がんなど他の病気などと確実に見分けるには下部消化管内視鏡検査を用います。お腹の痛み方やCT検査を手がかりに腸の状態が検査をするのに妥当かを判断し、症状や腸の状態が落ち着いたと考えられるタイミングを考慮して検査を行います。