きょけつせいだいちょうえん
虚血性大腸炎
大腸への血のめぐりが悪くなり必要な酸素や栄養が届かなくなるため、大腸が炎症を起こしたり大腸が壊死したりしてしまう病気
8人の医師がチェック 76回の改訂 最終更新: 2018.04.25

虚血性大腸炎の治療:保存的治療や手術など

虚血性大腸炎は大腸への血流が悪くなり腸に炎症が起こる病気です。炎症が起きている腸に便が通過すると悪い場所を刺激してしまい症状が悪化する恐れがあります。虚血性大腸炎では腸を休めることなどが治療の中心になります。

1. 虚血性大腸炎の分類と治療の関係

虚血性大腸炎は大腸への血流が悪くなることが原因で起こる病気です。状態には幅がありそれぞれの状態で適した治療は異なります。まず虚血性大腸炎の分類について説明します。

虚血性大腸炎は3つの種類に分類することができます。

  • 一過性型:粘膜、粘膜下層までに炎症がとどまる 
  • 狭窄型:粘膜下層にまで炎症が及びその後線維化が起きて腸管が狭くなる 
  • 壊死型:腸管壊死が起きて腸に穴が空いたりする

難しい言葉が並んだので解説します。

虚血性大腸炎の重症度は炎症がどこまで深く大腸の壁に及んでいるかで決まります。大腸は筒状の形をした臓器で、大腸の壁はバウムクーヘンのようになっています。内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜(しょうまく)という名前がついています。

炎症が深い層に及べば及ぶほど深刻な状態になります。上に示した通りどこまでの層に炎症が及んだかで虚血性大腸炎は3つに分類することができます。

壊死型(えしがた)は一過性型と狭窄型(きょうさくがた)に比べて極めて重い状態で、緊急手術による治療が必要です。一方、一過性型と狭窄型は保存的治療(絶食と点滴)で回復が見込めます。

重症度や治療法が異なるので、狭い意味で虚血性大腸炎という言葉を用いるときには一過性型と狭窄型の2つだけを指すことがあります。3つを虚血性大腸炎として扱う意見もあります。この解説ページでは壊死型も虚血性大腸炎の中の一つとして解説します。

参照:朝倉内科学

2. 保存的治療(腸管安静)

虚血性大腸炎は大腸に炎症が起きています。炎症が起きている場所はなるべく刺激しないことが回復に重要です。腸を休めることが治療になります。保存的治療、つまり手術をしない治療は絶食と点滴が主体になります。

絶食

虚血性大腸炎になるとしばらく食事を中止します。食事を止める目的は腸の安静を保つことです。食事を摂取すると腸が動いて炎症が起きている部分に負担をかけてしまいます。炎症が落ち着くまでは食事を中止します。

点滴による治療:輸液治療

輸液治療は点滴によって水分を体に送り込むことです。

虚血性大腸炎になると絶食することが治療になります。絶食をすると体の水分は足りなくなります。体の水分が足りなくなる状態が脱水です。脱水が進むと血圧が低下したり脈が早くなったりします。さらに重症な状態になると腎臓の機能が低下したり全身に影響が出始める危険な状態に陥ります。脱水をさけるために十分な点滴をして全身に水分を供給します。

全身に十分な水分の量が足りているかは尿量などを目安にします。

胃管(NGチューブ)

虚血性大腸炎では大腸の炎症のために腸の中の流れが悪くなることがあります。腸の中の流れが著しく悪くなると腸閉塞の状態になることがあります。虚血性大腸炎が原因で腸閉塞の状態になった場合には胃管を用いて治療します。

胃管は細長いチューブです。鼻から入れて胃まで挿入し、胃液などを体の外に出します。鼻から胃に管を挿入するので経鼻胃管(けいびいかん)ということもあります。また胃管のことをNGチューブ(nasogastric tube)という施設もあります。

胃液が流れていく量がへると腸の負担は軽減して炎症が良くなったり浮腫が改善しやすくなります。

3. 手術が必要なのはどんなときか?

虚血性大腸炎で手術が必要になることは多くはありません。多くの場合は保存的治療(絶食と点滴治療など)で回復が見込めます。では手術が必要なのはどんなときでしょうか?

手術の適応と内容

虚血性大腸炎で手術が行われるのは以下の場合です。

  • 腸が壊死したとき
  • 虚血性大腸炎が原因で腸の中が狭くなったとき

虚血性大腸炎は多くの場合は保存的な治療で元に近い状態に戻ります。しかし激しい炎症が起こり腸が壊死してしまうこともあります。壊死は細胞が死んでしまい腐ることです。

腸が壊死すると腸に穴があいて腸の中身がお腹の中にもれでます。腸の内容物がお腹の中にもれ出ると腹膜炎という重い合併症が起こり命に危険が及びます。腹膜炎が起こると緊急手術を行い壊死した腸を取り除いて腸と腸をつなぎ直します。腸の状態をみて人工肛門をつくり状態が落ち着いた後に腸と腸とつなぎ直すこともあります。

虚血性大腸炎が起こると炎症の影響が後遺症として残り腸の中が狭くなることがあります。狭くなることを狭窄といいます。狭窄した部分が広い範囲であったり狭窄が強い場合には便が通過しづらくなり便秘や便が細くなる原因になります。狭窄がかなり強い場合には腸閉塞の原因になります。

腸閉塞がたびたび起こるような状況が続くようであれば手術をして狭窄している部分の腸を切り取り腸と腸をつなぎ合わせて腸の中の流れを良くするようにします。

4. 虚血性大腸炎の治療中の経過は?再発する?

入院期間は症状により幅があります。保存的治療で改善したときと手術が必要なほど重いときではその分入院期間も異なります。ここでは虚血性大腸炎の多くの場合に当てはまるように、保存的治療で改善が可能であったことを想定して説明します。

食事を再開する目安

腹痛などの症状が落ち着いていることやレントゲン検査などでよくなっていることを確認して水分や食事を再開します。時間の経過とともに少しずつ調子も元に近づいていくので焦って食事をとる必要はありません。

入院期間や経過

保存的治療で治る虚血性大腸炎は1-2週間の入院期間で回復することが多いです。入院後1週間程度で検査などを行い状態を確かめることが多いでしょう。

症状やCT検査などの結果によっては大腸がんなど他の病気と見分ける必要があります。状態が良ければ入院中に下部内視鏡検査大腸カメラ)などで調べることが提案されるかもしれません。

治療後に気をつけること

一部の場合を除いて虚血性大腸炎はほとんどが保存的治療(絶食と点滴治療)で病気になる前の状態にもどります。しかし中には後遺症として腸の中が狭くなることがあり、便秘や便が細くなる原因になったりもします。

便秘は腸に負担がかかり虚血性大腸炎を再発する可能性を高めると考えられます。便秘が長く続いたり便が細いときには医師に相談してみてください。便を柔らかくする薬を使ったり食事指導を受けることで便秘の症状がよくなることもあります。

再発について

虚血性大腸炎を発症してから5年以内に再発する人は10%程度だという報告があります。再発を予防するに生活習慣の見直しなどが大切です。虚血性大腸炎の再発予防のための工夫は「虚血性大腸炎を再発させないために」で解説しているので合わせて参考にしてください。

参照:Am J Gastroenterol.2015;110:18-44Clin Gasteroetnterol Hepatol.2009;7:1075-80